2011年度大学関係予算をめぐる現情勢について2010年12月6日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

2011年度大学関係予算をめぐる現情勢について

2010年12月6日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

【「特別枠」についての評価結果】

12月1日、「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」(第3回)は、議事概要とともに「特別枠」要望に関する優先順位付けなどを発表した。http://seisakucontest.kantei.go.jp/article/wp-content/uploads/2010/12/101201_3rd_hyokakaigi.pdf

文科省の要望については、“「特別枠」の趣旨に照らして問題が大きい。従って、(中略)全般的に大幅な要望の圧縮と、要求の削減による新たな財源捻出が必要”との総評がなされた上で、大学関係の事業番号1905「強い人材育成」(運営費交付金等)はB、1904「総合的な学び支援」(授業料減免等)と1906「若手研究人材育成(科研費を含む)」はCとなっている。それぞれの事業についてのコメントをみると、

・事業番号1905:教育・研究の基盤経費に一定の配慮が必要。ただし、その経費を相当に絞り込むとともに、要求・要望の削減による財源捻出が条件。行政刷新会議の指摘を踏まえた対応が必要

・事業番号1904「総合的な学び支援」(授業料減免等):既存受給者への貸与に必要な分は措置する必要。ただし、これを措置するには、要求・要望の削減による財源捻出が条件

・事業番号1906「若手研究人材育成(科研費を含む)」:継続課題、既存受給者には一定の配慮が必要。ただし、要求・要望の削減による財源捻出が条件

となっている。

評価結果は上記のように極めて厳しいものであり、このままでは大学関係予算の大幅削減必至の状況とみるべきである。

【文科省の卑屈な意見書】

文科省は、6月に政府が閣議決定した新成長戦略に国際社会に通用する人材の育成が盛り込まれていることを重視し、来年度予算の概算要求において「元気な日本復活特別枠」を用いて大学予算の増額を図る方針を採ってきた。これに対して、大学の現場からは「特別枠-政策コンテスト」路線活用の危険性が指摘され、正規の手法による概算要求策定の必要性が訴えられていた(例えば本事務局10月3日付声明参照
http://www.shutoken-net.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=1447&Itemid=105)。

評価結果はそうした危険性が現実のものとなっていることを示している。しかもこうした評価自身が政府の政策主導で行われていることは、評価結果がAとされたものの中に日米地位協定の枠を越える法的根拠のない事業番号2501「在日米軍駐留経費負担」(いわゆる“思いやり予算”)1860億円(1年間の科学研究費補助金総額に匹敵)が含まれていることからみても明らかである。

しかるに文科省は、12月3日の第4回評価会議に提出した意見書
http://seisakucontest.kantei.go.jp/article/wp-content/uploads/2010/12/101203_4th_hyokakaigi.pdf
の中で“「特別枠」要望の10 本の事業のうち6 事業が「B 」評価とされ、有り難く受け止めたい。”として、「その経費を相当に絞り込むとともに、要求・要望の削減による財源捻出が条件」とされた事業番号1905(運営費交付金等)のB評価にあろうことか感謝の意を表している。他省庁の中でB評価を受けながら謝辞を述べているところなどどこにもない。文科省の卑屈な意見書に驚かされるのは我々だけではあるまい。ちなみに、そもそも謝辞が記入されているのは、文科省以外では超法規的事業に対してA評価を受けた防衛省の意見書のみであることを指摘しておこう。

【「特別枠-政策コンテスト」路線拒否、予算の組み替えによる事態の打開を】

いまなお大学関係者・団体の中には、民主党政権の「新成長戦略」を支持し、それを実現するものとして大学予算の充実を求めるという方針を採ろうしているところがある。だがその「新成長戦略」によって大学予算の大幅削減が強行されようとしているのが現実なのである。「新成長戦略」を進めるための「特別枠-政策コンテスト」路線を拒否し、長期的見地から大学予算増額の必要性を訴え、予算の全面的組み替えを要求することこそ事態を打開できると考える。

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