国立大学協会第18回通常総会への要望書 2010年3月2日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務

 

 

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国立大学協会第18回通常総会への要望書

2010年3月2日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

内閣府による市場化テスト導入の策動や、文部科学省による欺瞞的ともいえる国立大学法人化の検証、さらには「独立行政法人の抜本的な見直し」の動きなど、第2期中期目標期間を目前にして国立大学は流動的かつ危機的な状況に置かれている。3月3日に開催される国立大学協会第18回通常総会において、この重大な局面に対する国立大学全体としての姿勢を明らかにすることは、国立大学の将来に責任を負う組織として重要な責務であると言えよう。本事務局は、以下の二項目を本総会に対して要望する。

 

要望事項

1.大学への市場化テスト導入反対の意思表示を本総会において行うこと

2.「国立大学法人法(独立行政法人通則法)による法人化」自体の検証を行うこと

説明

1.大学への市場化テスト導入反対の意思表示を本総会において行うこと

2010年1月19日、内閣府官民競争入札等監理委員会(以下、監理委員会)事務局と内閣府公共サービス改革推進室は、それぞれの参事官の連名で各国立大学財務担当理事あてという異例の方法で「国立大学法人における公共サービスの改革状況に関する調査について」という依頼文書を送付し、国立大学への市場化テスト導入への策動を開始した。その根拠となっているものは、小泉構造改革の一環として2006年に行政改革推進法とともに制定された市場化テスト法(官民競争入札導入法)である。この市場化テスト法こそ公共サービス部門を解体して利潤追求対象に変え、同部門に従事している職員の解雇を可能とする悪法であった。しかるに新政権は市場化テスト法を国の機関、独立行政法人、そして国立大学へも適用させるために、6月までに改革対象事業の選定と公共サービス改革基本方針をとりまとめるとしている。市場化テスト導入は、以下のように国立大学の解体を推し進めるものである。
第1に、経費削減の名の下に支援・サービス領域が教育研究業務から切り離され、利潤追求対象とされることによって大学業務の一体性に楔が打ち込まれる。「テスト」を装ってはいるものの、一度切り離された領域の本体復帰はほとんど不可能であることに留意しなければならない。
第2に、ひとたび内閣府によって対象業務に指定されるならば、市場化テスト法の構造からして全国立大学へ一律適用の危険性がある。しかも市場化テストは監理委員会にコントロールされるので、各国立大学の業務へ国家が容易に介入できる道が開かれることになろう。
第3に、市場化テスト導入部門の職員は定員の枠内で他部門へ配転させられるか、解雇されることになる。これは大学職員の専門性を著しく蹂躙し、教育研究活動の推進に深刻な困難を生み出す。加えて、職員の雇用保証を奪うことは明白である。
このように危険な内実をもつ市場化テスト導入への急速な動きに対して、国立大学図書館協会は2月8日に臨時理事会を開催し、市場化テストに道を開く包括的・複数年度民間委託への批判的視点をはっきりと確認している。本総会が、大学業務を市場化テスト対象とさせないことを全国立大学の総意として確認し、そのことを社会に対して明確に意思表示しておくことが極めて重要であると考える。

2.「国立大学法人法(独立行政法人通則法)による法人化」自体の検証を行うこと

この間の中期目標策定の過程は、国立大学法人に実質的な中期目標の原案策定権を与えている国立大学法人法(第30条3)すら踏みにじるものであった。文部科学省が第2期中期目標期間を大学の「機能別分化」を促進する期間にすると位置付ける中、130頁に及ぶ原案の書き換えが行われたという事実は、第1期中期目標の原案の書き換えがわずか数ページであったことを思えば、国立大学法人の中期目標に対する文部科学省の権力的統制が質・量とも驚くべき強化・拡大を遂げたことを如実に示している。
新政権の下で行われた昨2009年の「事業仕分け」は、運営費交付金の削減のみならず、「国立大学のあり方を含めて見直しを行う」とした。12月25日には、「全ての独立行政法人の全ての事務・事業について、聖域無く厳格な見直し」「見直しの結果、独立行政法人の廃止、民営化、移管等を行う」ことが閣議決定された(「独立行政法人の抜本的な見直しについて」)。この方針を受けて、国立大学法人評価委員会はさっそく、「国立大学法人化の検証」に着手することを決めた(2010年1月20日、第32回総会)。しかしながら、この間、大学評価機関としての独立性を完全に喪失し、文部科学省の“分身”としての行動に終始する国立大学法人評価委員会にまっとうな検証作業を期待することはできない。せいぜい、「法人化により予算の使途や組織編成の自由度が高まったにもかかわらず、運営費交付金の削減など財政上の問題からそれらメリットを十分発揮できていない」といった作文を書く程度のことが関の山だと思われる。
われわれもまた、国立大学法人化の根本的な検証が必要だと考える。ただし、それは国立大学法人法(独立行政法人通則法の準用部を含む)の下で行われてきた政府の違法行為、国会附帯決議違反、国会答弁や評価委員会の決定を無視する不誠実な対応の数々を含めて、国立大学法人化自体の是非を問い直す作業が必要だと考える。この作業を行うことは国立大学が国民に対して果たすべき責任である。
本事務局は、本総会に対して、国立大学協会として、「国立大学法人法(独立行政法人通則法)による法人化」自体の検証を行うことを要望する。検証に際しては、特に以下の二点に留意することを併せて要望する。
1)憲法、および国立大学法人法制定過程における国会附帯決議および政府答弁、国立大学法人法、国立大学法人評価委員会の諸決定等に違反する行為がないかも含めて、実証的・総合的に行うこと
2)国立大学法人の一般教職員(非正規雇用者も含める)や学生等、大学構成員の意見も反映させること

以上

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