『読売新聞』2012年1月19日付
秋入学移行、成否を分けるポイントは就職問題
東京大が、全学部の入学時期を秋に移そうと動き出したことについて、文部科学省内にも、「東大が一石を投じるインパクトは大きく、大歓迎」と評価する声が多い。
東大が動けば、経済界にも大学の国際化が切実であることを認識してもらえるからだ。
秋入学導入を左右する最大の要因は、秋に卒業する学生が就職できるかどうかだ。中間報告は、秋入学が4月に新卒を一括して採用する慣行を変革する契機になると訴えるが、慣行が変わらなかった場合、東大卒業生の就職が困難になることも予想される。
東洋大は1994年度から工学部(当時)で10月入学制度を導入した。同年度は定員計60人に対して、250人の志願者を集めた。だが、卒業が秋にずれ、翌年4月まで就職を待つことになり、自ら卒業を翌年3月に延ばす学生が続出。志願者も減り、05年度で廃止した。竹村牧男学長は「新卒一括採用慣行は強固だった。日本社会全体の意識が柔軟にならないと、秋入学は成功しない」と話す。
5年後の導入を目指す浜田学長の構想では、政府や企業などとの協議を通じて環境づくりにまず2年程度を充てる。さらに、受験生に3年前には入試の変更点を周知する慣例に従い、3年間は周知期間を置くことになる。文科省は08年、大学の学長に入学の時期を決める権限を与えている。東大は今後、教授会などの意見を聞くが、最終的な決定権は浜田学長にある。