岡山大工学部、大胆に学科再編『読売新聞』2011年1月21日付

『読売新聞』2011年1月21日付

岡山大工学部、大胆に学科再編

 岡山大工学部は2011年度、約半世紀前の学部誕生以来初めてとなる大胆な学科再編を行う。

 学科数を7から4に統合し、学生が2年の途中で希望に応じて9コースに分かれるようにするのが柱。入学後の選択肢を広げることで、志望時点でコースを絞り込めない人の受験を促す。一方で、優秀な人材を獲得するため、入試成績上位者には入学当初からコースの選択権を与える。取り組みの背景には、受験生の工学部離れの傾向があるといい、同部は「幅広い層に受験してもらい、学部を活気づけたい」としている。(西蔭義明)

 岡山大工学部は、高度経済成長真っただ中の1960年、地元産業界の要請などを受け、機械工学と工業化学の2学科で発足した。その後、コンピューターやバイオテクノロジーなど新産業が生まれる度に新たな学科を創設。10年4月には物質応用化学、電気電子工学、生物機能工学などを加えた7学科となった。しかし、学科が増える一方で、受験生が高校卒業時点で専門分野を絞れずに敬遠する傾向が強まり、少子化も相まって受験者数は減少。1993年に3・6倍だった倍率は、10年度には2・8倍にまで落ち込んでいた。

 そこで、受験者獲得の決め手として工学部再編に踏み切った。現在の7学科を、〈1〉鉄などの材料やロボットを扱う「機械システム系」〈2〉パソコンの回路などを学ぶ「電気通信系」〈3〉プログラミングを研究する「情報系」〈4〉バイオテクノロジーなどの「化学生命系」の4学科に再編。学生は2年の後期から各学科2~3コースの専門分野に分かれる。この傾向は、他の国立大学にも広がっており、室蘭工業大(北海道室蘭市)は09年4月に6学科から4学科に再編、長崎大は今春、7学科から1学科に統合する。

 岡山大のユニークな点は、専門分野を絞り込めない受験生に配慮する一方で、早くから分野を絞っている受験生も想定したこと。従来は、入学後の成績で専門コースに振り分ける大学が一般的だが、入試成績の上位10~20%にはコースを優先的に決定できる権利を与え、優秀な学生の獲得を目指す。

 一方、産業界が求める人材を育成できるよう、授業も改革する。コンピューターが自動車や電化製品にも組み込まれるなど専門以外の幅広い視野が求められる現状に即して、自動車やコンピューターなど一つの製品の仕組みを網羅的に学ばせる共通科目を用意する。

 谷口秀夫工学部長は「工学は単なるものづくりではなく、工夫することが重要。日本の産業界を活性化させるためにも、優秀な学生を多く獲得し、他分野と交流しながら活躍できる人材に育てたい」と話している。

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