大手企業の新卒採用 「成績重視」のウソ 『日刊ゲンダイ』 2014年2月9日付

『日刊ゲンダイ』 2014年2月9日付

大手企業の新卒採用 「成績重視」のウソ

三菱商事や富士通などの大手企業が、新卒採用で大学の成績を重視すると報じられています。これまでは大学の成績評価を信頼していなかったからです。では、見方を変えたのかといえば、そんなことはないようです。IT企業の人事課長がこう言います。

「エントリーシートだけでは学生の本質は見抜けない。成績表を見てどの程度努力してきたのか、不得意なものは何かを見て、書類選考の参考にしている」

もちろん、成績は大学間で差があり、評価が甘い可能性もありますから、うのみにしているわけではありません。あくまで学力レベルのふるい分けに利用すると語るのは、商社の採用課長です。

「書類選考後に筆記試験を実施しているが、高卒程度の学力すらない学生も少なくない。会場の受け入れ人数に制限があり、英語など基礎科目の成績を見て、最低の学力レベルをクリアできそうな人を選ぶ」

成績表を早期離職の指標にしていると語るのは、小売業採用課長です。

「最低評価が多いとか、1年次より成績が下がっている場合は、長続きしないのではと思う。コンスタントに高い成績を維持している人は真面目という印象を抱く」

もちろん、理系学生の場合は文系以上に成績重視。精密機器メーカーの採用部長は「理系といっても以前に比べて数学、物理、化学の知識が弱い学生が多い。専門科目よりも重視している」と言います。結局、大学での成績、特に専門科目などについて評価が低い実態に変わりはないのです。

(溝上憲文=人事ジャーナリスト)

 

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