http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/1343298.htm
大学教育部会(第26回) 議事録
1.日時
平成25年11月7日(木曜日)17時~19時
2.場所
文部科学省13階13F1~3会議室
3.議題
1.認証評価の在り方について
2.大学設置基準の在り方について
3.その他
4.出席者
委員
(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)浦野光人,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)奥野武俊,川嶋太津夫,小畑秀文,島田尚信,濱名篤,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,鈴木典比古,長束倫夫,長谷山彰,山田礼子の各専門委員
文部科学省
布村高等教育局長,大槻総括審議官,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,牛尾専門教育課長,今泉大学設置室長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐,児玉専門教育課課長補佐,秋山高等教育政策室室長補佐 他
オブザーバー
浅田尚紀兵庫県立大学総合教育機構副機構長・学長補佐
浅野茂大学評価・学位授与機構研究開発部准教授
5.議事録
(1)認証評価の在り方について,浅田尚紀兵庫県立大学総合教育機構副機構長・学長補佐及び浅野茂大学評価・学位授与機構研究開発部准教授から資料2及び3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。
【佐々木部会長】 本部会の今期の大きな課題の一つが教育の質保証,あるいはその質の向上に関わる取組と,そのプロセスや成果の評価ということにあると考えております。本日は前回に引き続いて,認証評価制度あるいはその他の評価の在り方について御議論を頂きます。併せて,大学設置基準に関わる案件も複数ございまして,少し慌ただしい会議になるかもしれませんが,審議に御協力を頂きたいと思います。
まず,認証評価の在り方について,審議に入りたいと思います。前回,認証評価制度全体の改善について御議論を頂いたところでありますが,その際,奥野委員から,公立大学協会で取り組まれている評価に関する取組についての御紹介がありました。早速,公立大学協会にお願いして,本日,その取組の概要をお話しいただくことにいたしました。
また,認証評価を機能させるためには,大学を支援する団体等の役割が重要であるという複数の委員からの御発言もありました。そこで,この部会としても,制度の問題だけではなくて,評価をめぐる様々な現場での取組,改善や,大学の改革への支援のための関係団体の取組を御紹介いただきながら議論を進めてまいりたい。こういう観点で,本日は,お二方のプレゼンテーターをお招きいたしました。お一人目は兵庫県立大学総合教育機構副機構長であり,学長特別補佐である浅田尚紀先生です。浅田先生からは,先ほど御紹介しました公立大学協会で進めてきた大学改革,教育改革の取組に関わる評価制度の御議論を御紹介いただきます。お二方目は浅野茂先生です。現在,大学評価・学位授与機構の研究開発部准教授でいらっしゃいますが,浅野先生は大学評価コンソーシアムという組織の副代表幹事も兼ねられております。本日は,大学評価コンソーシアム副代表幹事というお立場から,このコンソーシアムの取組について御紹介を頂きたいと思います。十分な時間が取れずに大変恐縮なのですが,それぞれお話を頂き,その後,意見交換をいたしたいと思います。
それでは,浅田先生から,どうぞよろしくお願いいたします。
【浅田学長補佐】 ただいま御紹介いただきました兵庫県立大学の浅田と申します。きょうは貴重な時間を頂き,ありがとうございます。
私は今,御紹介いただきましたように,公立大学協会の公立大学政策・評価研究センター長の立場として,公立大学から見た認証評価を中心にお話ししたいと思います。
それから,もう一つ,私自身,広島市立大学の学長を昨年まで務めていまして,公立大学の法人化というのを体験しましたので,それに関しても,経験した立場からも少しコメントを入れたいと思います。
それでは,早速ですが,資料の2ページを御覧ください。最初に,国公私立大学の評価制度ということで,表にまとめました。公立大学はちょうど中段にございますが,法人化している大学と法人化していない大学が共存しております。法人化したのは61法人65大学となっています。法人化していない公立大学は18大学あります。その真ん中のところが認証評価ということで,これは国公私立共通に学校教育法で定められた認証評価を受けることになっています。実際に受審した大学数と認証機関をそこに記していますが,大学評価・学位授与機構41大学,大学基準協会49大学ということです。この数字は,平成16年からスタートしてそれから24年までの受審数の合計ですので,第二サイクルも入ってきています。
それから,もう一つ,一番右ですが,法人評価に関して言いますと,国立大学は国立大学法人法ということで全部が法人になっていますが,公立大学は,地方独立行政法人法で法人化した大学が法人評価を受ける。そういうやや変則的な状況にあるというのをまずお知りください。
3ページに行きますと,平成22年になりますが,当時,民主党の政権で事業仕分というのが行われました。大学評価・学位授与機構が認証評価から撤退するのではないかというような話が流れまして,公立大学協会としては,機構に認証評価を継続してほしい。これは先ほどの表にありましたように,約半数が機構で受審しております。この基準協会と機構という二つの認証機関というものが公立大学にとって必要であるという認識です。
学位授与機構の国立大学を中心に設計された評価の在り方を改めてほしいということと,公立大学や私立大学の特徴や課題に詳しい経験者,研究者を増やしてほしい,こういうような要望を出しました。その年の公立大学協会の総会における主な意見として,認証評価機関を公立大学協会が設立することも必要ではないかという大学評価・学位授与機構の荻上先生の意見。大学基準協会の工藤部長からは,設置形態別で認証評価をというのは客観性・公正性の問題があるのではないかという意見。当時の公立大学協会会長の矢田先生からは,現状の評価というのが公立大学にとって客観的・公平的と判断することはできない,公立大学としての経験を積む必要がある。こういう問題意識で議論を進めていました。
次に,認証評価と法人評価ということについて調査をした結果ですが,認証評価に関しては,公立大学にふさわしい評価基準や公立大学を理解する評価委員が必要ではないか。公立大学の評価に関する情報共有システムや共通の研修の取組が必要である。自由な討論で評価者・被評価者が双方向で学べる評価となるべき,このような意見がありました。
もう一つ,公立大学にとって切実な問題が法人評価です。これは,教育・研究は年度評価では客観的・外形的な進行把握に限定のはずですが,実際に始まった法人評価では質や内容に事細かく言及されているという状況が報告され,なかなか大変だということです。そういう観点から,認証評価と法人評価の一体的実施が必要というのは,この時点で,公立大学としては一つの議論になっていたわけです。
次の4ページを見ていただきますと,24年度ですが,認証評価に関して集中的に議論をしようということで,こちらの奥野委員が会長だった当時ですが,公立大学の質保証に関する特別委員会を設置いたしました。認証評価についての機関設置,評価機関設立も含めて検討しようという,大変思い切った議論を進めていきました。その背景として,やはり特有の課題がございました。第一サイクルでは,公立大学の実情が理解されないままの評価が散見されたこと。それから,学位授与機構の評価手数料が大幅に値上げされたということです。それから,大学評価・学位授与機構が認証評価から撤退するのではないかという懸念がありました。法人評価の実施方法が設立団体によって相当異なる。こういう課題を抱えた中で,認証評価について集中的に議論を進めようということです。
特別委員会の活動,下の段ですが,文部科学省,あるいは認証評価機関,高等教育研究者等にヒアリングしながら様々な議論を重ねてまいりました。情報収集し,また意見交換をするということで,フォーラムというのを4回実施し,我々の認識,勉強も含めてですけれど,深めてまいりました。
その結果,次の5ページになりますが,大学側と認証評価機関側のすれ違いということが明らかになってきました。5ページの表にございますように,左側は公立大学側のアンケート調査による認識です。実施調査に来られる評価委員との議論,これは有意義な意見交換ができるのですけれど,それが評価結果,ペーパーとなって出てくるに至る経緯がどうもつながっていないのではないか。これに対して認証評価機関側は,どのように評価するかをめぐって非常に深い議論をしているということを言われるのですが,やはりそこはブラックボックスになっているわけです。
それから,公立大学特有の課題についていろいろ説明するのですが,来られる方が国立大学や私立大学の委員の方だと,なかなかそこのところは分からないし,また持ち帰られて整理される段階でも,公立大学について理解された方が十分入っていられないこともあってか,難しいということですが,そのところは,認証機関としては普遍的な実績ある評価委員がしているということでお答えいただいています。
それから,これはよく出ていることですが,報告書作成の負荷が非常に高いということが第一サイクルでは意見が出ました。それに対しては,今,簡素化の方向で検討され,実際に項目が少なくなったりしてきています。
評価結果は,点検・評価報告書の要約が大半で,指摘事項がわずかしかない。これは,実際に私が経験しましたが,数百ページの分厚い報告書を書くのですが,返ってくるのは数ページから10ページ程度のもので,改善に関するコメント等もわずかなものというのは非常に残念な思いでした。これに関しては,認証機関側も丁寧には見ているということを言われます。
それから,評価手数料の問題があって,これも大学にとっては非常に負荷の高いことです。
それから,もう一つ,一番下に書いておりますが,これは公立大学特有の問題ですけれど,地方独立行政法人法79条に「公立大学法人の評価を行うに当たっては,認証評価機関の教育及び研究の状況についての評価を踏まえることとする。」という一文が入っています。これが法人評価と認証評価をつなぐ唯一のものなのですが,この「踏まえる」ということが言葉として曖昧でして,しかも,この解釈は評価委員の判断に委ねられるということになります。
次の6ページですが,これは,皆さんよく御存じの文部科学省の大学改革実行プランですが,ここに出ていますように,「質の保証」,「質の向上」という言葉,それから評価の効率化,この辺りを注目して見ていただきますと,それぞれの施策というのがそこに出ております。
次の7ページですけれど,議論していく中で問題になってくるのが「質の向上」という言葉と「質の保証」という言葉,この二つを認証評価は内在しております。これは,法律の上でも学校教育法で「向上」という言葉がうたわれていますし,「進展」という言葉がうたわれています。一方で,質の保証の部分では大学設置基準に適合しているということもうたわれているので,この二つを本質的に持っております。それに対して大学改革実行プランではいろいろな施策を打たれる方向を出されているのですが,その中にはやはり両方が入っていると,私は考えています。大学の特色化,強化のことでは,多様な大学,大学の強みを伸ばすという話が出ています。一方で,保証の話に関わるものとしては,社会への説明責任という意味で,学修成果のことであるとか,ポートレートの話が出てきて,やはりこれが二つ,常に絡み合っているというのがもともと持っている課題であると感じています。
8ページですが,先ほど大学改革実行プランの中にも「認証評価と国立大学法人評価の一体的実施」という言葉がありました。「国公立」という言葉で皆さんが国立,公立を見られたときに,似たように印象を持たれているかもしれませんが,これは決定的に違うというのをこの図で御説明します。左側が国立大学の評価です。文部科学省の中に国立大学法人評価委員会というのがあり,それが全国立大学法人を評価する。要するに一つの委員会です。一方で,大学評価・学位授与機構が認証評価をする。そういう流れの中で,基本的にはある種統一された共通の評価基盤を持っているというのがこの国立大学の評価です。
一方で,公立大学,右を見ていただきますと,自治体ごとに評価委員会が作られます。これはばらばらです。そこに横のつながりはありません。また,認証評価も学位授与機構であったり,大学基準協会で受けたりします。ということで,基本的には,認証評価も法人評価も別々ですし,法人評価そのものも別々であるということです。その下に書いていますように,公立大学の法人評価委員会は自治体ごとに設置されますので,評価に関する共通の指針や基準はありません。法人評価委員は,自治体の長が指名しますので,必ずしも大学の教育・研究や運営に精通しているとは限らない方が入っておられます。この辺りは,国立大学とは決定的に違う状況に,今,公立大学は置かれているということを御理解ください。
こういう状況を受けて,24年度に公立大学協会が取組を行いました。基本的には公立大学の特性をきちんと出していく,報告書を簡素化する,それから,大学評価コミュニティーを作ろうと,こういう大きな考えの下で進めてまいりました。
10ページは,評価フォーマットというものを提案して,これを実際に使っていっております。いわゆる分厚い報告書ではなくて,一覧性のあるもので,関連性も分かりやすいものということで,こういうフォーマットで評価を行っていこう。つまり,作業負荷も下げようということです。
それから,その次の11ページですが,今年度の事業計画として,真ん中の欄のところにあります機能充実のため検討として,公立大学政策・評価研究センターを設置するということをうたっております。それに基づいて12ページでございます。今年度,センターを設置いたしました。これは,今までの検討に基づいて新たな認証機関の設立を念頭に置いて検討を行ってきたのですが,その検討の結果を踏まえて,続くプロセスとしてセンターを設置する。目標としては,大学評価ワークショップというのを実施しよう。それを外部評価としての大学ピアレビューのモデルを作ろうということです。
それから,問題になっております法人評価の情報収集も行います。
大学評価ワークショップ,あるいはピアレビューというものにたどり着いた根拠としてですが,大学基準協会の大学評価ハンドブックから引用したものが13ページです。今,内部質保証ということが言われていますが,この内部質保証をどう実体のあるものにするかということについては,外部評価を利用するということがこのハンドブックに書かれております。そういう意味では,我々が外部評価という形で実施することをうまく機能させるようにしたいということです。
それから,ピアレビューが重要である。これらの観点を受けまして,14ページでございますが,大学評価ワークショップを実施することを計画し,先日,第1回目を行いました。これは,公立大学の会員校の要請に応じて,対話を中心とした双方向的な評価を実施する。ピアレビューを外部評価の一つとして利用する。これを通じて大学評価や内部質保証を担う人材育成をしていきたい。つまり,人を育てない限り,評価というものが根付いていかないという考え方です。
次の15ページに,その流れが書いてありますが,公立大学の方からセンターに対して,評価・支援の要望を受けて大学評価ワークショップという黄色い枠で囲んだ部分を実施します。これは大学側からのいろいろな資料であるとか,説明を受けて,我々からコメントを出したり,質問をしたり,意見交換をする。それを結果としてピアレビューにして返し,内部質保証システムの中に埋め込んでもらって,それを認証評価に活用していただく。また,法人評価にも活用していただくという流れを考えております。
16ページでございます。これがまとめのところですが,認証評価と法人評価の目的・関係・効果を明確にしてほしいというのが一つの大きな期待です。質の保証,質の向上の意味と内容がどうも一緒になっているような気がしますので,これも明確にしてほしい。それから,国と認証評価機関と法人評価委員会の責任と役割が,これも入り組んでいるような印象です。それから,認証評価を踏まえた法人評価というのが法律にうたってありますが,一方で,法人評価というのは毎年,年度評価をしますので,その積み重ねとしての認証評価という位置付けもあるのではないか。
こういうことを考えて,真ん中の表でございますが,質の向上,質の保証というのをもう少し分けて考えますと,質の最低保証というのが議論として出てくるのですが,これは国による助言,指導,警告,命令がないと動かないと思います。一方で,質の平均保証的なものに関しては,認証評価は十分機能すると私は思っています。これは,各大学の長所と弱点を発見し,質の向上に向けた支援ができるという意味です。
特色の強化ですけれど,これに関しては,公立大学に限るのかどうかは分かりませんけれど,法人評価というのがまさに大学の特色化のための中期目標・中期計画を作って,それを達成することを求めていますので,これは大学の特色化,強化につながります。そういう意味で言うと,この辺りの役割分担的なものを整理いただくと,大学側にとっては,どっちに向いて何を出していって,それが自分のところにどう還元されるかということがよく分かるようになると思います。
それから,その下に書いています大学評価人材の育成による大学評価コミュニティーを形成しないと,評価というものが根付いていかない。これは,我がセンターでもそのための連携研究員を集めて育てようとしています。
最後になりますが,実質的に機能する大学ポートレートを作ってほしいということです。我々はこれを非常に期待していたのですが,スタート時点の状況としては,なかなか残念な状況もあるようですので,そこは強化していただきたい。
公立大学の特性等を参考資料に付けております。もし質問等のところでありましたら説明いたします。
以上でございます。どうもありがとうございました。
【佐々木部会長】 浅田先生,ありがとうございました。後ほど意見交換をいたしたいと思いますので,その折に言い落としたことなど,補足をお願いいたします。
では,引き続き浅野先生から,大学評価コンソーシアムにおける取組を中心に御報告を頂きます。よろしくお願いします。
【浅野准教授】 ただいま御紹介にあずかりました大学評価・学位授与機構の浅野でございます。冒頭,部会長にも補足いただきましたように,本日は,大学評価コンソーシアムという組織からの報告という形で資料を準備させていただきました。1ページめくっていただきまして,報告内容といたしましては3点,準備させていただきました。一つ目は,冒頭に簡単に,大学評価コンソーシアムの概要ということを説明させていただきます。引き続きまして,実際に我々が評価に携わる現場の方々とどのような形で育成に係る取組を実施しているのかというところと,これまでの成果という形でまとめさせていただいております。そして,最後に,評価の現場から見た現状の制度,あるいは運用面での課題ということを簡単にまとめさせていただきました。
では,まずスライドの右下にございます2番のところを見ていただきますと,大学評価コンソーシアムの概要があります。組織の概要と,加盟機関及び会員数ということでまとめさせていただいております。一つ目の組織の概要に関しましては,実際に評価,あるいはIRに携わっておられます方々又は高等教育関係の方々が個人で加盟されている任意の団体です。会員の所属機関及び会員数については,右の図に内訳を記しておりますが,機関数でいきますと110機関,会員数ですと305名がこの11月1日現在に加盟いただいております。
内訳を少し補足させていただきますと,会員が所属されている機関別では,国立大学が56%,私立大学が27%,公立大学が7%,関係機関が9%,短期大学が1%という構成になっております。機関数で見ていきますと,国立と私立がそれぞれ42校となっており,機関数では変わらないのですが,国立に所属される方に多く加盟いただいている状況でございます。また,会員の職種というところを見ていきますと,職員の方が圧倒的に多く70%強,教員の方が22.6%,その他の方々が5.9%ということで,職員の方に関しましては,課長,あるいは係長クラスの方が中心になっています。また,教員の方々というのは,大学の評価室付にいらっしゃる教員の方,あるいは学部・研究科等で実際の評価委員をされている方々という構成になっております。
では,実際にどのような形で活動を開始したのかというのが次のスライド3になります。まず平成19年度でございますが,九州大学の大学評価情報室というところが世話人になってくださいまして,活動を開始いたしました。当初は評価にいかに対応するかということが主で,タイミング的に,法人評価,あるいは認証評価の対応というのが特に国立大学にとっては喫緊の課題になっておりましたので,それぞれにどのように対応していくのかというのを有志数名が集まって,けんけんがくがくと議論をしていくというところの会からスタートいたしました。
しかしながら,法人評価及び認証評価も第一サイクルが終わりまして,第二サイクルに入っていっておりますので,評価対応のみではなくて,評価の過程を通じて把握した課題等を改善につなげていくための評価というのを構築していく段階にあることをコンソーシアムとしては重視するようになってまいりました。そのため,設立当初の目的である相互交流の場というところの姿勢は維持しながら,参加者のニーズが多様になってまいりますので,そのような方々の御要望になるべく応えるべくいろいろな企画を通しまして,それぞれの所属機関での評価文化,あるいは大学間の連携というものを強化していくには,組織としての基盤を強化することが要されます。そこで,平成22年に有志の会から大学評価コンソーシアムという組織を正式に発足させ,現在に至っているところでございます。
一方,現状の大学評価におきまして,先ほどのグラフで見ていただきましたように,やはり事務職員の方が多く携わっていらっしゃるということもございまして,会費とか,参加費というのを徴収いたしますとなかなか御参加いただけないという実情もございます。そのため,現状は全く会費,あるいは参加費というのは頂かずに,大学評価コンソーシアムの幹事が中心となって会の運営及び企画立案に携わり,各種イベントに関心のある方に参加いただいている状況でございます。
次のスライド4にコンソーシアムの目標と計画というのを掲げております。まず,コンソーシアムとして非常に重視しておりますのは計画の(2)です。実践を基本として役立つ知識・スキルの共有,あるいは事例の分析・共有を行うというところで活動を展開しております。
実際にどのようなことをやってきたかというのが次のスライド5になります。2007年から,先ほどお話ししました大学評価担当者集会というのを九州大学でスタートいたしまして,その後,最近ですと,神戸大学でこの8月に開催させていただきましたが,実際の評価担当者,あるいはIRに関心のある方々,129名の方に御参加いただいたという状況でございます。
次のスライド6は,実際に直近のイベントでどのようなことを展開したのかという内容になります。大きく4本の柱を立てておりまして,まず,一つ目の第一分科会では「評価とIR」ということで,これは2010年から3年計画でやっておりますイベントでございます。データを集めて,それを分析し,それを活用していくというところで,2013年に関しましては3年目の集大成ということで,集めた情報であったり,その分析結果であったりをどのような形で意思決定,あるいは改善に結び付けていくことができるのかという内容で実施いたしました。
二つ目の柱である第二分科会では,2007年の活動開始当初から設定している分科会です。「初めて評価を担当される方へ」という名称で,初めて評価に携わられる方々に対して,評価とは何かという基本的な部分や,自己評価書を作成する際にどのような着眼点や発想法が必要かというのを身に付けていただけているような内容を準備させていただいております。
三つめの柱である第三分科会は,昨年から設定している分科会です。一定年数,評価に携わっておられる方は,計画そのものがしっかり策定できていないことによって,なかなか評価できないという問題を抱えておられます。そのため,評価しっかりできるような形で計画を作るにはどうしたらいいのかというところを議論する場として設定させていただいております。
最後の柱である第四分科会では,今年から新たに,本日ここにいらっしゃる山田委員の御協力を得まして,設定させていただいた分科会です。特に評価の現場におりますと,最近,学生調査というところのニーズが非常に多くなっておりますので,学生調査に関する入門編ということで準備をさせていただきました。
今回の報告に当たりましては,時間の制約もございますので,第一分科会の「評価とIR」という大きなテーマで実施している分科会の内容の紹介をさせていただきます。スライド7になります。我々といたしましては,先ほどお話ししました四つの分科会で共通して使っております教材として,「評価大学」という架空の大学のストーリーを準備させていただいております。この教材を基に,右の写真で見ていただけますような形でワークショップをベースにやっております。どうしても通常のセミナー型ですと,なかなか日頃,発言できない方々もいらっしゃいますし,実際の業務に携わっておられるお立場から,現場の知識をなるべく皆さん出し合っていただいて,皆さんで共有しようということで,ワークショップというスタイルをとっております。
次のスライド8にございます第一分科会の内容については,先ほどお話ししましたように,集めたデータを分析し,それを活用していくという最終フェーズとして設定しております。実際の作業は,先ほどのスライドで見ていただきました評価大学の概要というのを用いており,かなりリアリティーを持たせた内容になっていることと,認証評価,あるいは法人評価等で使われている様式をイメージいたしまして,なるべく現実に近いような内容,様式で皆さんに議論をしていただくということを意識しております。今回の第一分科会では,例えばある目標と計画について,その計画の進捗度を示す資料がありますが,その資料から右にございますような作業を四つ抜き出して,次の作業を実施していただきました。まず,どのような課題が見られるのか,あるいはその課題に対してどのような支援の対象者がいるのか。次に,意思決定への支援,あるいは内容というものを議論していただき,意思決定をしていただく際の課題や解決法というのを皆さんに考えていただきました。その成果については,少し字が小さくて恐縮ではございますが,右の下にございますようなポスターに皆さんにまとめていただいて,それを共有していただくという形をとっております。
大学評価担当者集会以外にも,次のスライド9にございます,個別の研究会,勉強会等を実施しております。直近ですと,この11月に二つ,京都で予定しております。一つはIRの関係のイベント,もう一つは,先ほど話しました評価に耐え得るような計画をどのようにすれば作れるのかというところをテーマとしたイベントとして予定しております。
以上がこれまでの活動の概要でございます。次に,これまでの取組の成果の説明に移らせていただきます。スライド10でございます。これまでの活動の成果に関しましては,まず一つ目に,大学評価コンソーシアムのホームページを通じて,全てのイベントの実施内容や資料を電子化して公開しております。スライドには,一例として,2011年度の大学評価担当者集会の実施概要をお示ししておりますが,このような形でやったというのを実施報告としてまとめております。
もう一つの成果として,評価業務のガイドラインがあります。先ほど話しました第一分科会がベースになっておりますが,データを集める,あるいはデータを分析する際,どのような留意点が必要かというのをガイドラインとして簡単にまとめさせていただいております。
次のスライド11が一つ目のデータ収集のガイドラインです。参考としてお示ししておりますが,これは三つの観点から構成されています。具体的には,データ収集の目的,データ定義を明確にする,執行部の理解を得て協力していただく,あるいは各部局との連携を強化して協力していただくというようなことが盛り込まれています。委員の皆様からすると非常に基本的なことかもしれませんが,実はこのグループワークでディスカッションをしていますと,日頃,皆さんが非常に苦労されているというのがこの辺りだというのが見えてきます。実際の現場におきましても,初めて評価に携わられる方々は,なかなかこの辺りが分からずに評価業務に対応していると,自分としてもどうしていいか分からない,あるいは組織の中で業務を展開していく上でも難しいということでございますので,それぞれの観点を少しずつ皆さんの意見を集約しながら,こういう留意点がある,あるいはこういう形で打破していくことはできないかというのを,実体験を交えて,ガイドラインという形でまとめております。
また,同じように,次のスライド12にありますデータ分析のガイドラインを作成しております。先ほど,お話ししましたデータ収集のガイドラインに関しましては,ここに挙げております三つの観点が基本になっておりますが,このスライドのデータ分析のガイドラインというのは23項目ございます。今回,3項目だけ抜き出しておりますが,やはり皆さん特に分析に当たりましては,大変苦労されていて,特に評価におきましても,データを根拠資料又はエビデンスとして求められるということもございますので,そのエビデンスとして,どのような形で分析すれば効果的かというのを非常に皆さん苦労されているというところがございます。
具体例を紹介させていただきますと,スライド12の二つ目にある「数量データは,経年変化を追って状況を把握しよう。」という観点があります。これは,評価に携わっておりますと,認証評価の場合は7年に一度,法人評価の計画の実施状況というのは単年度で評価しますが,その際の情報は部局や担当事務からの報告を通じて得ることになります。そのため,どうしても皆さん断片的あるいは単年度で物事を判断しがちですので,経年で見ないといけない場合,あるいは経年で見るときの注意点というのはこういうものがありますということでまとめさせていただいています。これは先ほどの繰り返しになりますが,実際のワークショップで皆さんから出てきた意見,あるいは提案というのをガイドラインという形でまとめさせていただいております。
以上のようなことを踏まえまして,今後の取組のベースにもなりますが,我々といたしましては,次のスライド13に示しておりますような形で今後も,評価あるいはIRに関心のある方々の研修プログラムの開発を目指しています。その際,研修対象者の経験年数やそれまでの業務の経験等に合わせた内容にしていくことが求められ,我々といたしましては,スライドに示しておりますルーブリックを通じて,実務担当者に求められる能力とレベルの定義を試行しております。こういったものを通じて,実務担当者の方の能力やレベルがどのような状態にあるのかというのをある程度皆さんと明らかにしながら,それに合ったコンテンツを計画していこうと考えております。
現在,策定中ですので,あくまでも参考例としてお示ししておりますが,これまでの成果を踏まえ,このようなものを策定することによって,例えばこの年度はこういうレベルの対象者に対して,このような内容を提供できるのではないかというのを,このルーブリックを使うことによって,より効果的に実施できるのではないかと考えております。
以上,これまでの成果と取組ということでお話しさせていただきましたが,最後に,3点目といたしまして,現場から見た評価制度,あるいは運用面での課題ということで,3点まとめさせていただきました。
まず一つ目に,スライド14に評価人材を取り巻く環境として,三つ挙げさせていただいております。第一に,まず評価現場の現状ということで,先ほどお話しいたしましたように,認証評価というのが一巡いたしましたので,評価報告書そのものの作成業務というのはある程度,大学の中で対応できるようになってきているかなと感じます。ただ,一方で,単なる評価書の作成業務というところから脱却していく必要があるであろうと考えておりますが,そこには到達できていないと思います。
第二に,評価担当者の現状というのがあります。コンソーシアムでは,評価を単なる評価で終わらせないということを非常に重視し,組織的,あるいは継続的に評価,あるいはIR業務を推進していく上で,その改善をどのような形で促進するかというところを意識しております。しかしながら,国公私立問わず,こういった役割を担える人材というところの要請が日本の大学全体で喫緊の課題になっていると考えております。具体的に申し上げますと,日本の大学では実際の評価や行う業務というのは,先ほど話しました任期付きの教員,あるいは二,三年で異動される事務系の職員の方々が一定程度担っておられます。このような状況を踏まえますと,先ほど話しました評価,あるいはIRの実務に対するスキルセットが蓄積されても,それを継続的な業務として展開できない側面が出てまいります。
第三に,上記の問題を踏まえ,転任先や異動後に例えば評価業務以外の部署に就かれた方々におきましても,やはりデータであったり,客観的なエビデンスであったりを通じて判断するというようなところのマインドセットというのを皆さんに共有していただくことが重要なのではないかと考えております。したがいまして,我々コンソーシアムといたしましても,評価に携わっておられる方だけを対象にしているわけではなくて,過去に評価に携わっておられた方で,現在は評価以外のところに関わっておられる方々にも参加いただけるような内容でイベントを組んでおります。
こういったことを踏まえまして,スライド15に評価人材育成のポイントをまとめさせていただきました。委員の先生方にとっては既知のことで,非常に僣越(せんえつ)ではございますが,概念的にIRというのは評価よりも大きな概念ではありますが,非常に多義的な概念でもございます。一方,現場にいますと,評価活動そのものがIRの中に位置付けることができ,評価を基点に意思決定支援,あるいは改善というものを確立できるのではないかと考えております。より具体的には図を参照いただければと思います。現在,開発中ではございますが,評価の実態,あるいは日本のIRの業務を捉える上で,4象限からなる枠組みを検討しております。まず,X軸を左右で「学外への説明責任」と「学内の改善」に,Y軸は上下で「通常業務」と「非定形業務」に分けています。日本の多くの大学における評価は,左上の第二象限の部分に位置付けられるかと思います。通常業務として学外への説明責任を目的として実施される業務という形になります。しかしながら,先ほど話しましたように,評価を評価で終わらせないということになりますと,評価の過程で把握した課題や問題点を改善に向けて動かしていくことが必要になってきます。それを右上にある第一象限の年度計画,あるいは中期計画策定を通じて展開することができるのではないかと考えております。さらに,第三象限にある教育に係る学生調査であったり,研究に関するデータであったりというのをひも付けながら,改善業務へと落とし込んでいくというところが重要かなと考えております。
最後のスライド16には,これまでお話しさせていただきましたことを踏まえ,評価制度そのものを改善促進型の制度にしていくことが必要ではないかということをまとめさせていただきました。現状,評価の現場のみならず評価制度も,どちらかというとアカウンタビリティーに重きが置かれております。また,第ニサイクルの認証評価におきましては,学習成果,内部質保証というような観点が盛り込まれておりますが,その基準を満たしていればいい,あるいは計画を達成できていればいいというようなところを中心に評価するスキームとなっています。そのため,学習のプロセスであったり改善の充実度であったりということがなかなか評価されにくい実情がございます。そのため,先ほどお話しましたスライド15にありますような形で,評価を基点に様々な改善活動というところに展開できている部分も評価できるような仕組みが必要ではないかと考えております。そうすることで,うまくいっていなくても,そのプロセスをしっかり分析し,改善していくという改善志向型の評価というものが大学でも定着できるのではないかと考えております。
以上,大学評価コンソーシアムにおける取組の概要をお話しさせていただきました。なお,コンソーシアムの活動の一部(特に研修プログラムのコンテンツ開発)に関しましては,最後のスライドにまとめておりますような科学研究費補助金の一部を活用させていただいて実施させていただいておりますので,ここに明記させていただきました。 報告は以上でございます。
【浦野委員】 どうもありがとうございました。浅野先生の大学評価コンソーシアムの活動は,正直言って,大学もいよいよ動き始めたという印象を受けました。特に15ページの図です。これは,民間企業がこういう形でのまさに内部監査といいますか,PDCAを回しているわけでして,例えば民間企業の場合にはJ-SOXに始まる内部統制の問題,それから,会社法で言う会計監査の問題とか,社内での業務監査とかといろいろあります。このようなことを全部,内部の人間で処理しているわけで,もちろん会計事務所に会計監査を頼んだりということはありますけれども。そうなると,その目的は単に社外へのアカウンタビリティーだけではなくて,当然業務を改善していくということです。そして,いろいろな意味での生産性を上げていくということになりますので,まさにこの15ページの図は,大学もこういう視点で是非取り組んでいただきたいと思いますし,そういう芽が出てきていることは非常に心強いと思いました。
そういう中で,職員の方々のマインドセットというのは本当に大事だと,私は思っておりまして,スキルだけにとどまっていますとそれ以上の進歩はありませんので,是非マインドのところも今後やっていっていただければと思って,大変心強く思いました。
それから,浅田先生の公立大学の問題で一つ思うのは,公立大学のミッションの明確化と言ったときに,一つは,公立大学というのは自治体との絡みの中で,大学によると定款上はっきり自治体のどこに貢献できるというようなことを書いている例もあって,そこのところが法人評価というところで非常に,特色の強化ということが書いてありますけれども,極論を言いますと,大学の教育とか,研究とかということと別次元で地域への貢献ということが求められる。そこをどう評価していくということだと思うのですけれども,大学一般の質保証といいますか,評価ということから見たときに,例えば我々経済界から見たときに,こういう評価,認証というものを大学レポートの形でうまく利用できていけば非常にいいわけなのですけれども,その視点で考えたときに,地域の中での貢献うんぬんというのは余り一般的ではないです。
私は,そういう意味で,この部分というのは少し切り離した議論が必要だと思っていまして,確かに国立大学,私立大学と違うところもあるのは十分認識はするのですけれども,私立,国立,公立問わず,共通認識が必要と思われる部分については是非同じ軸を作っていただいて,我々ステークホルダーが大学を見ていくときに共通の尺度で見えるものだけは是非意識をしていただければなと思います。そこを無視しているわけではないと思いますけれども,先ほどの話で公立大学の特色ということについて大変強調されましたので,一方で,そうではなくて,共通の部分もあるということを再度言わせていただければならないと思いました。
【山田委員】 浅野先生にお伺いしたいと思います。実は大学IRコンソーシアムという任意団体をそちらにおられます奥野委員の御所属の大阪府立大学が運営校の一校として関わっていただいて,濱名委員の関西国際大学も加盟校として参加していただいております。その中で,浅野先生の大学評価コンソーシアムは評価という視点から,私どもはどちらかというと教学IRという視点から,内部質保証システムを教学IRで保証していこうというような観点からお互いに連携できないかということで行っております。
その中で,どちらもIRに関連する人材育成というのが非常に大切だということでは一致していて,その辺りを人材育成していかなければならないと思っておりますけれども,既に何回か,このコンソーシアムでずっとワークショップなどをされてきて,参加された方々がその後,任期付き教員であるとか,あるいはそういう特定の職種という形での雇用の方は分かりませんけれども,どういうキャリアパスで,あるいはどういう部門にその後,行っていらっしゃるかというようなデータをお持ちでしょうか。
実はそういうIR人材の広がりといいますか,それが非常に日本では弱いものですから,育成しても,育成しても実際にはそういう職が根付かないという問題があるかと思うので,その辺りも教えていただければと思います。
【浅野准教授】 御質問ありがとうございます。御指摘いただきました点に関しましては,我々も一致しておりまして,なかなか職務として,専門職として大学の中で認知されにくいという状況があり,会員の皆様も一致しておっしゃいます。
キャリアパスに関しましては,実際のデータは取っておりませんが,皆様に御登録いただく際に,所属が換わられましたら,所属を変更していただくということをお願いしております。そのデータを見ておりますと,大体3年に一度,職員の方は異動等で所属が換わっておられます。最近の傾向としては,評価業務や企画総務系にいらっしゃった方の異動先として,学務や部局の総務に行かれる場合が多いように見えます。これは,おそらく先ほど山田委員がおっしゃいましたように,教学面での対応が多くの大学,特に私学においては重要な課題になっておりますので,ある程度評価で知見を得られた方々が今度は学務あるいは部局の総務に移られて実際の教学の部分を強化していくというところで展開されていると考えられます。あくまでも個人的な印象ですが,今のところ把握できている状況でございます。
【浅田学長補佐】 御意見を頂き,ありがとうございます。今回は,公立大学を皆さんに知っていただきたいということで,その点を強調した言い方をしましたのでやや誤解を招いたかもしれません。公立大学といいましても,大学ですので教育・研究が基本ですし,その延長としての地域貢献や社会貢献があると思っています。ただ,言われますように,自治体が作った大学ですので,常に地域に対してどのような貢献をしている,どう還元しているというのは問われますし,議会でも話題になったりしますので,それは常に意識していると思います。
地域貢献に関しては,最近は国立大学もCOCと言ったりする時代ですので,公立大学に特化したものではなくなってきたと思うのですけれど,教育基本法や学校教育法にも社会貢献が大学の役割としてうたわれていますので,先生がおっしゃるように,そういうものが共通の軸として入ってきて,比重が大学によって違うというものがうまく取り入れられたような評価というものがあるだろうと思います。ただ,どうしても公立大学は,数が少ないといいますか,学生数が少ないということもあって,なかなか世間一般の意識に定着しないので,今回はこういう形で申し上げました。決して公立大学に別のことをしてほしいと言っているわけではございません。
【濱名委員】 非常に関心を持って聞かせていただきました。浅野先生にお尋ねしますが,私も,資料3で言うと14ページに出てくる評価担当者の人材育成の問題は非常に大きな課題だと思います。専門職が必要である,喫緊の課題であると書いていらっしゃるのですけど,どうすればいいとお考えなのかということです。
私がアメリカへ行ったときに見ていると,IR型の評価担当者もそうなのですけど,中央教育審議会高大接続特別部会でテストの話になっても,テスト理論の専門家もほとんど日本にはいない。育成しようと思うと,アメリカで聞くと大体心理学とか,統計学の基礎があれば,ドクターレベル3年で一人前に,3年目のインターシップで育成できるというような話を聞くのです。しかし日本からはほとんど行っていない。
そういうことを考えていくと,コンソーシアムが補完措置にはなっても,これだけでは解決できないのではないかということです。到底こういう状態で評価の専門家の育成としては,国として不十分ではないか。日本学術振興会などいろいろな機関があるので,そういう機関の資金で人を派遣して,オーバードクターなどがたくさんいらっしゃるので,そういうところで専門的な育成をしていかないと間に合わないのではないかと思います。専門職にするというのは結構ですけれど,アメリカも実は見ていると,IRerになっている人はどちらかというと,社会的に見て大学の正規トラックに乗りにくい属性のPh.D.取得者が多いです。ですから,そういうことを考えていくと専門職というのも,現状としては,教授とか准教授とか,そういう肩書がなければ人材が確保できない状況で,そういう点では処遇の問題等とも併せて考えていかないと難しいと思うのですけれども,その辺りについて,お考えがあればお聞かせいただきたいです。
【川嶋委員】 これは浅田先生にお聞きするのがよろしいのか,奥野委員にお聞きするのか分かりませんけれども,公立大学の実態,あるいは立ち位置が非常に多様だということはよく分かりました。その点で先ほど評価ということについて,特に法人評価については,設置者によって大きく考え方も違っているということですけれども,それに加えて,例えば評価だけではなくて,そもそも目標とか,計画策定の方式とか,あるいは運営費交付金の配分の仕方などは,全て調べたわけではないのですが,国立大学に準じた運営費交付金の配分の仕方をしている設置者もあれば,聞くところによると地方交付税の配分の仕方に準じて,つまり実績主義で,過去3年に掛かった経費を基準として次の期の運営交付金を配分する例もあるようです。つまり,これは大学が経営努力によって節約すればするほど自治体から来る運営費交付金が減るという仕組みです。このように,自治体,設置者によって大学に対する評価や運営費交付金の配分の仕方が多様であるということを鑑みたときに,大学としては公立大協会という一つのまとまりがあるわけですが,設置者の側は横のつながりといいますか,公立大学設置者としての協会までいかなくても,何らかの情報交換をしているとか,そういう組織なり取組というのはあるのでしょうか。
そういうものがなければ,公立大学協会としても,そういうものを作るように働きかけていかないと,今の非常にお困りの状況というのはなかなか改善されないのではないかと思います。
以上です。
【浅野准教授】 御質問,ありがとうございます。まさしく御指摘のとおりで,コンソーシアム単体では,どうすることもできない問題だと考えています。濱名委員の御指摘のように,現場にいて難しく思いますのは,評価業務,あるいはIR業務というのは完全に事務職でもできない,あるいは教員職でもできないという側面があり,ちょうど中間にある業務だと思います。教育の現場や実情がある程度理解でき,なおかつ事務的なところも分かるという非常に難しいスキルの要される職種であると考えております。
少し説明不足があったようですので,補足させていただきます。我々は,どちらかというと皆さんにスキルセットを獲得していただくのと併せて,そのスキルセットは単なる評価業務のためだけではなくて,異動された後に,先ほど山田委員の御質問にお答えいたしましたように,学務系や他の異動先で生かしていただくことを重視しております。このように次の職種でもいいので,少しずつ評価マインドが波及していくと,いわゆる本当に一人の専門職がいなくても,学内で少しずつそういう意識が広がっていけば大学の状況も少しずつ変わるのではないかと捉えております。非常に時間のかかることではありますが,当面,我々が草の根的にできることはこの辺にあるのではということで取り組んでおります。
濱名委員も御存じだと思いますけれども,IR研究の大家と言われているテレンジーニ先生によると,IRにおいては三つの要素が重要だと言われています。まず,評価に対する技術的な知識であるテクニカル・インテリジェンス,一定の経験の後に要される政治的な要素等への理解であるイシュー・インテリジェンス,そしてさらにステップアップしていくことで,必要となる政策動向等への知識であるコンテクスチュアル・インテリジェンスです。この全ての側面に対して,一挙に対応することは不可能ですので,本日のスライド13で御紹介させていただきましたルーブリックを用いて,いわゆる駆け出しの頃から,本当にある程度確立した状態にいらっしゃる方がどのようなレベルにいらっしゃるのかを明らかにしていくことによって,より適切なコンテンツを準備できるのではないかという形で取り組んでおります。
【奥野委員】 少しだけ補足でお話しします。設立団体,設置者の方の横のつながり,実はそういう組織はあるのですが,今は,ほとんど機能しておりません。我々公立大学協会としては,そこを何とかするような努力を今,始めているところです。そこは苦しみの一つですので,先生がおっしゃるとおり,我々がやらないといけない。
【浅田学長補佐】 今,奥野委員がおっしゃったとおりで,公立大学協会というのは,公立大学の集まりとして情報共有とか,国に対して働き掛けようとするのですけれど,実は自治体に対して直接の働き掛けの機能を持たないのです。自治体は,総務省系統でいろいろな縛りを受けているところなので,我々からは情報提供することによって法人評価のところが改善できないかということで,何とか今,働き掛けを集中的にやろうとしている。そういう努力過程ということです。
【谷口副部会長】 公立大学と国立とかは大分違うということは,認識をさせていただきました。国立大学の場合には,例えば浅野先生の資料の15ページのもの,最初に評価が入ったときには,目標を掲げて,それを達成するということに一生懸命になりましたけど,現在では,何のために評価をやるかというと,改善するためにというのが基本的には大分定着してきていると思います。
それで,このPDCAサイクルのようなものを回していくという,ここの15ページに書いてあるようなものを基本的には,少なくとも執行部とか評価に関係しているところではこれでやろうという形にはなっているかと思います。評価に関する作業は,通常は,教員と職員とが一緒になって動かしているという形になります。ただ,事務の異動はおっしゃったとおりでありますので,基本的に誰がやってもできることが必要です。評価に関わる部門にデータをきちんと置けば誰でも評価作業ができるという形にも一方ではしていく。事務職員は1年ということはないですけど,四,五年で代わられるということは当然ありますから,そういうことへの準備も一方ではさせていただきながら評価作業を回しているというのが現状だろうと思います。評価作業の重要性を一人一人の先生方にどれだけ浸透させるかというところが私どもも一つの課題であり,何度も何度も説明していくしか基本的にはないと思いますが,そこが一番のネックになっているのだろうと思います。
でも,評価の重要性を浸透させるに当たっても,評価は改善のために行うということを言っていかないと,脅かしだけになってしまいますから,単に目標が達成できていなければ駄目だと言うことだけになり,改善には結びつきません,それでは前に進みませんから,改善ということの認識をきちんとしていただくということが基本的に大事なことだという認識で,私どもは,この15ページにお示しいただいたような形で回るようにということが重要であるということで基本的にはやらせていただいています。うまくいっているかどうかという判断には様々な御意見があります。企業の方から見たら,これではまだまだという話は経営協議会とか,そういう委員会の中で出てくることは多々ありますけれども,基本的にはこのような姿勢でやらせていただいていると思っております。
【吉田委員】 お二方の発表,どうもありがとうございました。一つ,浅田先生にお伺いしたいのですが,私も実は某地方自治体の公立大学法人協会のメンバーをやっておりまして,そこでいつも問題というか,私が問題だと言っているのは,法人評価でありながら認証評価以上に細かくいろいろ見ているという状況がありまして,非常に精緻な評価報告書が作られているということです。
かつ,その項目も,今のお話でありましたように各自治体で決めておられまして,そのときに,「認証評価の方はどうなっているのですか。」と言うと,「分かりません。」というお返事を頂くのです。「項目はもっと簡素になりませんか。」と言うと,「いや,うちはこの方針でやりますから。」と,そういうような形で,もう一巡して,今,2巡目に入っているのですけれども,そういうような状況が続いております。
こちらの政策・評価研究センターの方はむしろ認証評価の方を中心に扱っていらっしゃるということですけれども,私は,問題は法人評価の方に問題があるのではないかと思います。ここにありました各自全くばらばらでやっている法人評価の結果を受けて,認証評価という話になりますと,もともとこういうのが全くばらばらであると,幾ら認証評価の方を扱ってもなかなか関連性が見えてこないという状況になるのではないかと思いますが,法人評価の方に関しては,今後どのような形で関わっていかれるのかお教えいただけませんでしょうか。
【鈴木委員】 浅田先生のプレゼンテーションの資料についてお伺いしたいのですが,先生の資料の15枚目と16枚目を見ますと,15枚目の方は内部質保証システムというのが真ん中にありまして,両端に認証評価機関,それから,公立大学政策評価・研究センター,法人評価委員会というのがあって,そこで内部質保証に関するやり取りを行っていくというのがこの15の趣旨と思いますが,16枚目を見ますと,質の向上,質の保証。質の保証がまずあって,その上に質の向上というのが載っているという左側の方ですが,そして,その真ん中に質の「最低」保証,質の「平均」保証,特色の強化とありまして,右側の方に,最低保証の方は,国による助言・指導・警告・命令というものがあって,真ん中に認証評価,そして,一番上に法人評価というのが出てきておりますけれども,確かにそういう構造で,このようにまとめられたのは非常に明確になったというような印象を強く持っているのですが,一つ,認証評価と法人評価の間にこういうはっきりとした差がなかなかできないのではないかということと,それから,15枚目のところにも大学ピアレビューというのが出てきまして,それが16枚目のところにピアレビュー,あるいは大学評価ワークショップというのが位置付けられていないのですが,私はこのワークショップとか,ピアレビューというのは非常に重要な試みだと思うのですけれども,位置付けられるのか。
それと,公立大学が認証評価機関を独自に設立するという動きがあるわけですけれども,その場合の認証評価機関というのは,この16枚目の真ん中の認証評価というところをやるというのが目的なのか。この辺をお伺いしたいと思います。
【浅田学長補佐】 ありがとうございます。先ほどの吉田委員の御発言はまさにそのとおりで,我々が悩んでいるところです。ただ,先ほども申し上げましたけれど,法人評価というのは自治体の権限の下でやっていまして,自治体が法人評価委員会を設置します。それに対して,我々は評価を受ける側ということですので,そこに直接的にメカニズムを変えるような力を我々は持たないのです。ですから,我々が今,考えていることは,各自治体が独自にそれぞれのやり方で,やっていることに対して,例えば他の自治体はこういうことをやっています,このような基準がありますということを情報提供することによって,標準化していくような動きにならないかと期待しています。我々ができるのはそこまでです。
自治体に対して働きかけても,自治体の担当者の方は交代していくので,最初に始めたやり方がずっと踏襲されていくようなところがあるのです。ですから,そういうことも含めて,法人評価には難しい問題がある。
それから,鈴木委員のお話ですが,我々の取組は,始まったところですので,十分なお答えができないかと思うのですけれども,16枚目というのは,期待と書いていますように,こうなったらいいという現在の制度に対して希望的なことを書いてあります。こうしますと言っているわけではないのです。15ページの方は,大学評価ワークショップというものをやって,ピアレビューというものを出したものを認証評価に渡す報告書に埋め込み,それから,それらを受けて,また法人評価の方に埋め込むことによって,実は大学及び公立大学政策・評価研究センターが共同して行っているような評価というものをきちんとメッセージとして伝えられる仕組みを埋め込もうというのがこの図に描いた意図でございます。大学は評価を受ける側ですので,外部評価として,そういういろいろなメッセージというものを併せて認証評価へのメッセージ,それから法人評価委員会へのメッセージという形にうまく流れてくれることを期待した図でございます。これに関しても動き出したところですので,先生に十分お答えできるだけのまだエビデンスを持っておりませんので,申し訳ございません。
【奥野委員】 補足です。法人評価については,吉田委員がおっしゃるように,会員の中で非常に問題になっています。難しいのは,確かに言えるルートがないのです。このセンターを作って,少し実力を出してワークショップもやって,こういうことができたら,法人評価のガイドブックというか,ガイドラインを作りますとか言って,総務省に一緒にやりましょうということを言えたらいいと,実はそう思っています。そこまで行けるかどうか分かりません。
それから,鈴木委員がおっしゃったように,私が実はこのセンターを作りましょうと始めたのではなく,皆さんとに,今のような問題を議論しましたら,いろいろな問題が出て,では新しいものを作りましょうということになりました。そのとき私は公立大学協会の会長だったのですけど,鈴木委員にも御意見をいただいて,落ち着くところがこのセンターになったということです。ここで実力を付けて,いろいろとワークショップなどもやっていきたい。今,センターの活動も始めたところですので,今後はそういうことです。
もう一つ,山田委員や,濱名委員や,本学が教学IRのところにありながら,IRの人材を育てるということと,私たちが公立大学協会で言ったところの人を育てるというのは少し視点が違います。つまり,浅田先生がおっしゃっているのは,簡単に言うと大学の評価室の人をきちんと育てる。法人評価と言ったら,はい,分かりましたと,データをすぐに出せるようなこういう若い人を育てる。できるだけ私としては,余り3年で交代せずに,してもいいけど,また将来的に戻って来るような若い人を考えております。
ところが,現実は,私としては心配がありまして,実際に来てくださる評価委員というのは,そういう若い人は来ません,名誉教授だったり,どこかの学長だったり,そういう人が来ます。公立大学の法人評価であれば,商工会議所の方とか来るわけです。その人は,PDCAをきちんと分かっているのかと思うところが何遍もあるわけです。この人たちを育てるというのは,私は,ピアレビューで実際に評価をする側とされる側と両方経験する人を育てなければいけません。地位があったり,そういう人たちです。公立大学協会で人を育てるというのはそこを狙っています。でも,浅野先生がおっしゃっているのは,各大学が自分のところを受け止める人を育てなければいけません。
【小畑委員】 浅田先生の資料で,2ページ目,認証評価と法人評価,それから,大学,国立,公立,私立とあって,私,初めて認識したのですが,当然のことながら,法人評価を受けているのは法人化されているところだけなのです。私立大学は法人評価に相当する評価というのは受けていない。
一方,16ページで,認証評価と法人評価が,その境界が曖昧だという話があって,それをクリアにすべきであるというお話があったかと思います。私,常々,大学にいたときに,この両者を一本化した方がいいのではないかと実は思っておりまして,それには何かいろいろ問題点があるようなのですが,公立大学の中でも,法人化されているところとしてないところとがあって,その両者が混在している中での議論の中で,評価を両立させていくべきだという主張で100%固まっているのでしょう。私はできたら一本化した方がいろいろな意味で労力が少なくなって,シンプルになると思っているのですけど,いかがでしょうか。
【奥野委員】 公立大学の場合は,法人化されてなくても実はほぼ同じ評価がほとんど行われていると考えた方がいいです。ですから,小畑委員がおっしゃるように,一本化というのは,法人化されていようが,されていまいが,そういう課題として捉えないといけないと思います。
【浅田学長補佐】 それと,我々は大学ですから,学校教育法と地方独立行政法人法という二つの法律に挟まれているので,これを一本化してもらうのは国でやってもらわないとできないです。
【奥野委員】 そうです。非常に難しいと思います。
【浅田学長補佐】 我々としては,法律に対してひたすら従っていくしかない。その中で何とか改善について現場から声を出して,それが何とか反映されるように努力しているという段階です。小畑委員が言われるように,なぜ二つもあるのかというのは我々も理解に苦しみます。
趣旨としては,二つが異なることは分かるのです。学校教育法は大学を評価して,地方独立行政法人法は法人を評価する。ただ,法人が大学を設置していて,大学の基本というのは教育・研究ですから,法人評価も同じところを深く見るのです。今の制度のままで行くならば,認証評価と法人評価の違いをはっきりしてほしいというのがあります。もし大胆に変えられるならば,大学というものをどうするかということを明確にし,評価が本当に意味のある,現場に還元されて,現場の人間がなるほどと思って,よし頑張ろうと思うような評価として機能するような制度を作っていただきたいと思います。
【浦野委員】 今のお話を聞いていて思うのは,地方自治体の制約というのは当然あるわけです。教育というのは,基本的に大学も含めて現体制の維持と考えると,地方自治体の場合は特にそれが強いわけです。まさにいろいろな公立大学でその当時の首長の考え方によって大きく物事が変わってきた事例を私は幾つか見ていますので,そういう意味で,やはり私は法人評価と大学の認証評価というものは別の方がいいと思っていまして,大学評価の方について言えば,私立も国立も含めて共通の尺度というのが色濃くあった方が私はいいと思っています。教育がやはり現体制の維持ということが基本的にあるということだけは考えておかなければいけないし,一方で大学の役割は,現体制を改革していくことということに意義があるわけですから,その辺は是非先生方にも少し考慮していただければと思います。
【長谷山委員】 私立大学の者という立場から発言をお許しいただきたいのですけれども,法人評価と認証評価の区別が余り明確でないというような御発言もありましたが,実は私は明確だと自分なりに理解していたのです。というのは,私立大学は認証評価一本しかありませんけれども,評価を受ける側として,どのように評価していただく内容を出していくかというと,これは経営と教学というものを明確に分けて中身を出していくというように,少なくとも私どもの大学では十分意識しております。要は教育・研究に責任を持つ教学と,それを支援する経営体と,これが車の両輪のようになって全体としての大学運営をしていくという形を反映しています。
したがって,法人評価というものを伺ったときに,少し前まで国立大学は,余り教学と経営の区分というのは明確ではなくて,非常に乱暴に言えば,教授会が教学も経営も背負っていたようなところがある。それを恐らくきちんと分離しようということで法人化されているわけですから,その中で教学部分の評価と法人,経営部門の評価というのがあってもおかしくないのではないかと思いながら伺っておりました。もう少し踏み込んで言えば,私立大学で認証評価を受ける場合に,その経営体,法人に関するものは,国立大学で言う法人評価的な観点でこちらもデータを出して評価していただいたということです。
それから,認証評価というものは,私は教学評価と読み替えて自分なりに理解しています。教学の方については評価の本体になるのは恐らくピュアレビューです。そうした発想を取り入れて,自己改革を大学に対して促すような評価を是非していただきたいということだけ申し上げさせていただきます。
【黒田副部会長】 公立大学の場合,この資料2の17,参考資料1に書いてあります公立大学の特性,多様性という,これはそのまま私立大学に当てはまります。私立大学もこのとおりなのです。設置,設立団体,多様性というのは全く一緒です。法人化の多様性,理事長,学長の別置・一体性,これも私立大学,同じです。職員の構成は少し違いますけども,運営形態としては全く公立と一緒なのですが,公立大学がなぜ今,必要かというのは,それぞれの地方自治体が求めて作っているわけです。ですから,地方自治体が議会に対して責任を取る必要上,法人評価,法人でなくても,大学の評価というのは恐らく認証評価よりも厳しい評価をしないと議会が通らない,予算も取れないという,それくらいの責任を持ってやっていると思います。ですから,その辺のことは公立大学も理解をしていただかなければ駄目だと思います。認証評価だけが全てではないです。なぜ公立大学がその地域に必要なのかという,そのことが一番の根本問題です。
公立大学を作るというのは今,盛んに,工業誘致が駄目だから,土地が空いているから作ろうなど言って作っている都道府県がありますけれども,それは本末転倒であって,その地域に公立大学としてやるべき仕事があるから作っているわけですから,それが公立大学のそれぞれのミッションになってくるわけです。それを踏まえた上で,大学ですから文部科学省の定める基準にきちんと合っているかどうかということと,どういう質の向上を行っているか,質の保証を行っているかということが問われる。それが認証評価の部門になるわけですから,そのことをきちんと分けていかないと,私は,公立大学は必要ないなんて言われる可能性が出てくると思うのです。それぞれの公立大学というのは,それぞれの地域で必要だということです。ですから,それを統一して一つのモデルを作るなどということはあり得ないことで,そう私は思っています。
【佐々木部会長】 それでは,最後にお二方から一言ずつ,よろしくお願いします。
【浅田学長補佐】 今,御指摘受けました件ですけれど,実はきょう,触れていない結構重要なことがあります。国立大学は,国が一貫した高等教育政策というのを持っています,文部科学省がありますので。残念ながら,自治体に高等教育政策を受け持つ部門というのはありません。小中高は教育委員会が受け持ちます。ところが,大学は,今言われたように,自治体が必要だから設置している。それは間違いないのですけれど,大学を長期的にどうしていくのか,自治体として責任を持って,どれだけの財政投入するのか,きちんと議論して,それが認識されて,継続されるという仕組みがないのです。自治体の首長は4年ごとに交代する可能性があります。全然違うことを言う人が出ることもあります。トップが代わると,方針が変わるという意味で言うと,公立大学の一貫した高等教育政策というのが保証されていないというのが現状としてあります。
そういう中ででも,我々は学生を抱えて継続性のある,発展性のある教育をしていかなければいけない,研究もしなければいけない。そういう中で一生懸命改革をしているというのが今の現状なのです。先ほどおっしゃいましたように,法人評価と認証評価が分かれているというのは,原則として,私は正しいと思いますが,そうしたら,法人評価委員会は財務を中心に見てくれたらいいのですけど,そうはなりません。自治体としては責任があるから教育研究を含めて全部見ることになる。ただ,そこに先ほど申し上げましたように,自治体の高等教育政策としての一貫した理念と蓄積がないものですから,例えば評価委員のメンバー構成も自治体ごとでばらばらです。これは認証評価に任せたらどうなのかということまで,評価委員の立場から細かく発言される。そういう中に今,公立大学は置かれています。だから,二つの評価制度の狭間の中で非常に厳しい状況にある。ただ,待っていても仕方ないので,公立大学協会としては活動を始めているという御報告をきょうさせていただきました。
【浅野准教授】 本日,大学評価コンソーシアムの草の根的な取組を御報告させていただきました。一方で,こういう活動を展開し,継続するということも大きな課題になっています。我々以外にも,例えば山田委員が展開されているIRコンソーシアムでも同様の状況にあると伺っております。先ほど,濱名委員にも御質問いただきましたように現状の日本の大学におきましては,専門職の育成が課題としてある一方,その育成を支援する組織が非常に限られていて,その活動を維持,存続させていくための仕組みも整備されていません。当委員会で御審議いただいております評価制度の見直しにおきましては,今後,大学における改善を促進していくことが論点の一つとなっていると理解しております。これを制度として打ち出すだけでは,なかなか実質化することができておりませんので,評価人材の育成と併せて人材を育成していくための支援組織を支援するための枠組みについても同様に重要だと考えております。今後,この部分についても,御議論いただければと考えております。
【佐々木部会長】 ありがとうございました。本日はお忙しい中,浅田先生,浅野先生,両先生にはお越しいただいて貴重な御発表を頂きました。御礼申し上げます。また機会があれば,御登場いただくというようなこともあり得ると思いますので,よろしくお願いいたします。
(2)大学設置基準の在り方について,文部科学省から資料4について説明があり,その後,意見交換が行われた。
【白井大学振興課課長補佐】 それでは,資料4に基づきまして御説明させていただきたいと存じます。
資料4でございますけれども,前回も同様の資料をお出ししておりますけれども,今回はこれまでの状況を踏まえまして,少し方向性の部分について踏み込んだ御意見を頂ければと考えてございます。大学のサテライト・キャンパス,あるいは別地キャンパスの問題につきましては,大学の設置認可の在り方に関する検討会におきましても大学設置基準の明確化ということで,これまで必ずしも明確でなかった規定,それを明らかにしていくということがこの部会で課せられたミッションの一つと位置付けられているところでございます。
資料4の1ページでございますけれども,現状でございます。キャンパスが二つ以上ある場合には別地キャンパスと言われるわけでございますけれども,現在,教員組織,あるいは校地・校舎等の施設・設備に関すること,それについては各キャンパスと合算したような運用,全体として一定の収容定員に応じた基準を満たしていればいいというような運用がされているという状況でございます。また,それとは別に,サテライト・キャンパスにおける授業の実施ということも認められてございますけれども,このサテライト・キャンパスについては,それほど細かい規定というのは置かれておらず,例えば施設・設備については,学生実習室,その他の施設等が適切に整備されていることというぐらいの規定という状況になってございます。
次の2ページでございます。こちらも前回お出しした資料でございますけれども,この別地キャンパス,サテライト・キャンパスについて,現状を簡単にまとめたものでございます。サテライトの多くについては本キャンパスから割合近い所に設置をされておりまして,簡易な施設で行われているケースが多い。例えば有名なところでは,埼玉大学が東京駅の駅前にサテライト・キャンパスを作って,そこでドクターの博士,修士の課程について教育をされていると存じております。
ただ,一方で,現在,本キャンパスから非常に遠く,なかなか一体的な運用が困難であるようなケースも見られるようでございます。右側の場合でございますけれども,そのような場合には,学生は例えば本キャンパスから郵送で図書等を取り寄せたりとかいう場合もございますし,あるいは教員が遠距離から出張ってきて授業を行ったりというケースもございますし,様々でございます。多いケースとしましては,地方の大学が例えば東京とか大阪とか大都市圏に進出,展開をする場合において用いられているようなケースということでございます。施設・設備も非常に多様でございまして,非常に簡易な施設で行っている場合もあれば,キャンパスに匹敵するような非常に立派なキャンパスで行っているケースというものもあるようでございます。
3ページにお進みを頂きたいと存じます。3ページは,本日,御議論を頂ければと思っているところでございますけれども,キャンパスに関する今後の方向性の案というものでございます。サテライト・キャンパス,別地キャンパス,それぞれについて課題があると考えております。サテライト・キャンパスに関しましては,先ほどのように,法令上必ずしも詳細な規定が設けられていないということがございます。そのため,利便性の高い場所で社会人などを対象に授業を行うということは,当然メリットではございますけれども,一方で,狭い施設で,十分施設・設備がないままに授業を行っているというようなことも指摘をされているところでございます。
また,現在,サテライト・キャンパスにおける学習だけで,本キャンパスの方に足を踏み入れることがなくても,学位を取得するということも現状では可能になってございます。
それから,必ずしも本キャンパスとの一体性,一体的な運用というものは想定できないようなケースで,非常に遠距離で全く独立的に運営をされているサテライト・キャンパスというものもございます。また,サテライト・キャンパスが必ずしも学則等で規定されていないために,学生や関係者にとってどういう所で授業を行っているのか把握することがなかなかできないというような御指摘もございます。
この今後の方向性でございますけれども,青い部分に書いてございます。大学の授業というのは,当然一定の教育環境が整えられたキャンパスで行うことが大原則でございます。キャンパス以外の場所で恒常的な授業を行うという場合には,基本的には,これは別地キャンパスという形できちんと施設・設備等を整備していただくということが基本であると考えております。
ただ,非常にキャンパスと近くて,キャンパスと一体的に運用されているような場合,例えば埼玉大学の大学院のような事例ですけれども,そのような場合には,引き続きサテライト・キャンパスにおいて授業を行うということは認めていく必要があるのかなとは思っております。ただ,一部問題の大学もありましたけれども,従来の要件が非常に緩やかなものでございましたので,例えば大学の利用状況,人数とか,あるいは授業の内容に応じた必要な施設・設備というものを整備するとか,そのような形の要件の厳格化というのはある程度していく必要があると考えてございます。
それから,キャンパスの一体的な運用が困難な場合,具体的には,非常に遠くて本キャンパスの利用が難しいような場合でございますけれども,そのような場合には,最初に申し上げましたように,基本的には別地キャンパスとして,そこで独立した施設・設備を備えていただくというのが原則であると考えております。ただ,社会人等を対象としたものにつきましては,特に社会人の学び直しでありますとか,利便性を考慮するキャンパス展開も必要であろうということから,そのような限られた場合については,引き続き本キャンパスから遠隔地にあるような場合についても,サテライト・キャンパスという形で認めていく必要があるのではないか。もちろんこの場合でも,一定の要件の厳格化というのは同様に行っていこうと思いますけれども,このように場合分けをして考えたらどうかということでございます。
それから,サテライト・キャンパスの開設状況が対外的にも分かるように,学則等における必要の記載事項というものが学校教育法の施行規則にございますけれども,こちらの方に,キャンパスの状況について規定していただくということについて加えてはどうかということでございます。
それから,別地キャンパスの関係でございます。最初の資料で申し上げましたように,現在,いわゆる合算の運用,キャンパス同士を合算して考えるという運用を行っているために,例えば地方や校外に広いキャンパスがあると,都心部はある意味狭くても,教育・研究活動が可能になっているという状況がございます。また制度上,別地キャンパス,サテライト・キャンパスを区別する方法はないという課題もございます。
今後の方向性ですけれど,従来行われてきた合算の運用を見直しまして,特に学生の学習環境に直結するような部分,例えば非常に狭い校舎で授業を行うとか,そのような場合については,合算の運用だけでは十分対応し切れない部分がございますので,校舎と専任教員については各キャンパスごとに収容定員に応じた適正な環境整備を求めていってはどうかということについて,御意見を頂戴できればと思っています。
また,別地キャンパスにつきましても,サテライト・キャンパス同様に,開設状況が対外的に分かるように学則の必要記載事項に位置付けてはどうかということでございます。
4ページは参考の条文を載せておるものでございます。
こちらからの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【濱名委員】 3点あります。私も別地キャンパス等々,いろいろな形で現地に行かせていただいているので,問題については実感を持って認識しているのですけれども,一つは,4ページ目の関係規定等の案を見たときに,「実務の経験を有する者等」,この「等」がくせ者なのです。規定していくときに,その趣旨が明確でないと,現実には別地キャンパス,サテライト・キャンパスのユーザーというのは社会人と,もう一つの大きなグループは,外国人留学生です。留学生の利便性のいい所に地方の大学が設置をしているというケースが一番多いわけです。その場合,どう見るのか。それを排除する必要があるかどうかというところも検討していかなければいけない。ところが,実際に出てきている例は余り芳しくない状況で留学生を受け入れている。留学生にとって,アルバイト等がしやすい利便性の高い所に立地される傾向がある。ですから,ここらについては,この規定でいいのかというところが1点です。
2点目は,校地面積,校舎面積等々については学生一人当たり10平米,正式にはどこに書いてあるのかは,見つからないのですけれども,それで環境に応じた形で,学生数に応じた形で別地キャンパスを考えるというのであるならば,教員が1名というのでいいのか。学生数に応じた,大規模に行う場合にはそれに対応したことが必要ではないのかというのが2点で,もう1点は,これはそれと矛盾する形になるのですけれども,この設置基準で余りハードを上げると,今,海外展開を日本の大学も考えていかなければいけないときに,ドメスティックな展開はこれで規制をしていけばいいと思うのですけれども,自分たちで自分たちの首を締める結果になる。海外展開の設置基準の例外措置は講じられているのだけれども,一大学も利用していないという現状を考えると,そこらについては,別途考えて措置を対応するのか。その辺については教えていただきたいと思います。
【白井大学振興課課長補佐】 ありがとうございます。濱名委員から3点,御指摘いただきました。
最初の1点目でございますけれども,4ページは,現在の規定を載せるものでございまして,現在,確かに実務経験を有する者等という書き振りはございます。その中には,濱名委員の御指摘のように,この「等」の中に非常に幅広く,留学生なども読み込まれているというのが現状であるということは認識しております。
この具体的な改正の内容については,今まさに検討中でございますけれども,基本的には,最初にサテライト・キャンパスを作りましたときの趣旨からしましても,本キャンパスに通学することは原則であるのだけれども,どうしてもやむを得ない事情等で本キャンパスに継続的な通学ができない人を対象にするというのがサテライト・キャンパスの本来の趣旨であったと思っていますので,その代表例が社会人ということになると思うのですが,そこの趣旨が明確になるような形の改正条項を現在,検討中でございます。
それから,2点目の教員の件。教員の別地キャンパスにおける配置の件ですけれども,確かに現行では教員一人以上を別地キャンパスに置かなければいけないということになっておりまして,逆に言えば,別地に立派なキャンパスがあっても,一人,専任教員がいれば足りるというのが現状の規定になってございます。
確かにここについては,おっしゃるとおり問題かと思っておりまして,ここもそこのキャンパスに一定の学生がいれば,当然その学生たちの面倒を見るべき先生たちも一定数の配置が必要になってくると思いますので,そこについては,学生数等に応じた教員の配置,この1名以上という現在の規定については見直しを考えていきたいと考えております。
それから,3点目の海外展開でございますけれども,現在,大学のグローバル化に関するワーキング・グループの方でジョイント・ディグリーでありますとか,海外のサテライト・キャンパス的なものの検討をしているところでございまして,まさにちょうど私もそちらも担当しておりますので非常に悩ましいところではございます。ただ,今回のこの改正については,基本的には,大きなハードルを課すというよりは,最低限ここは担保しておきたいという部分ですので,そこは,海外の方の制度設計はまだ現在,検討が並行で作業中でございますので,まだ表にはしてございませんけれども,海外においても最低限の質保証というのは当然必要になってくると思いますので,そこは何らかの形で整合性がとれるようにしたいと考えております。今の段階で具体的なお答えはするに至っておりませんけれども,整合性がとれるようにしていきたいと考えております。
【濱名委員】 方向性としては大体分かったのですけど,キャンパスごとの収容定員に応じた適正な環境整備ということは,要するに別地キャンパスの定員を設定するということですか。
【白井大学振興課課長補佐】 そうでございます。
【濱名委員】 そうすると,今,合算でやっている方式はもう認めない方向に持っていこうということですか。現在,私たちが見た具体的な例で言うと,収容定員とは違う書き方で,収容可能人員みたいな形の記述になっていて,ところが,それを運用の段階,入学定員とか,収容定員の場合,1.1倍とか定員超過を見ていると思うのですけれども,現状から言うと,それをまた自分たちで解釈して1.1倍まで収容できるとかという運用をしてしまって,10平米を割ってしまっているようなケースも現実にあるのです。そこらの定義は明確にしていただく必要があると思いますので,併せて御検討いただければと思います。
【川嶋委員】 1点は意見,1点は質問です。まず質問の方からお聞きします。設置基準第25条の4項というのは,どういう背景でいつ頃,設定されたかというのを確認したい。それで,我々,設置基準第25条の授業に関する条項を読んでいて,4項4と第1項の「授業の一部を校舎及び附属施設以外の場所で行うことはできる」との文章を普通に読むと,要するに教室内ではできないような体験を学外でやってもいいとしか読めないと思うのですが,なぜそれがサテライトで授業を行うということになったのか,その辺の経緯をお聞きしたいというのが1点です。
もう1点は,意見ですけれど,先ほどの方向性の案のところで,社会人等というところに関わるかもしれませんけれど,本校とサテライトの学生の比率は,本校よりもサテライトの方が学生が多いというのは常識的に考えて明らかにおかしいのであって,オンライン大学などはまた別の話なのですけれども,実際対面授業を主として提供するような大学にあって,本校となる校舎における学生よりもサテライト,あるいは別地キャンパスにおける学生数が多いというのは本末転倒,矛盾していると思います。そういう状況であるならば,学生数が多い所にきちんと施設・設備を造ってくださいという指導をすべきで,そういう点では,学生数の比率という観点も今後,入れる必要があるのではないか。
以上です。
【白井大学振興課課長補佐】 この第25条の4項という規定も,確かに非常に分かりにくい部分があるかと思います。この規定は平成15年に大学設置基準に追加された規定でございますけれども,それまでにもサテライト・キャンパスという名称は実際あったと思いますけれども,主に大学院を中心に大学のキャンパス以外の場所で授業を展開するということはあったかと思います。そのようなことを踏まえまして,大学設置基準の中でも実態を踏まえてきちんと認めていこうという背景から,ここに入れられた規定であると捉えております。その際に具体的な基準としましては別途,「文部科学大臣が別に定めるところにより,」とございますので,この下にございます告示で具体的な基準を定めたという背景かと存じます。
それから,本キャンパスよりもサテライトの方が人数が多いという人数比率の問題でございます。御指摘のことはよく分かりますが,大学設置基準全体の体系の中で学生比率を一つのメルクマールにすることが適切なのかどうかということは,少しこちらの方でも考えさせていただきたいと存じます。
【佐々木部会長】 本日頂いた御意見を持って帰って論点整理をした上で,再度ここで御議論いただくことになろうかと思いますが,どうしてもという御意見がございましたら伺います。
【谷口副部会長】 確認をしたいのですが,海外キャンパスは基本的にはサテライトとして考えるということでいいですか。別地ということでもないと思います。
【白井大学振興課課長補佐】 海外は,現在,大学設置基準50条というところで外国キャンパスという規定がございます。まず,その規定がいわゆる海外にも収容定員を設定して,その収容定員に合った専任教員,校地・校舎の配置ということが求められておりまして,実際,使い勝手がなかなか良くないということです。活用事例もないということがございますので,そこをどう実際に活用できるのか,活用していけるようにできるのかということで御議論いただこうと思っていますけれども,まだ具体的なものについてはござません。
【谷口副部会長】 もう少し時間がかかるということでしょうか。
【白井大学振興課課長補佐】 はい。これから検討していきます。
【谷口副部会長】 分かりました。
【佐々木部会長】 ありがとうございました。
それでは,時間の関係上,きょうは,この件についてはここまでにさせていただきます。
(3)インターネット大学に関する特例措置の全国展開について,文部科学省から資料5について説明があり,その後,意見交換が行われた。
【牛尾専門教育課長】 専門教育課でございます。よろしくお願いいたします。
資料5-1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。課題になっておりますのは,インターネット等だけを使って授業を行っている通信制大学についての制度的な対応です。
最初に,現行の通信制大学においてインターネットをはじめとするメディア授業がどう位置付けられているかということを書いてございますけれども,通常の通信制でございますと30単位以上,いわゆるスクーリングという形で面接授業が義務付けられております。この部分について,平成13年の通信教育設置基準の改正により,インターネット等による授業でも構わないという改正がされておりまして,そういう意味で,全ての卒業に必要な単位をインターネット等による授業で取ることができるということが平成13年に制度化されております。
それに関わる特例が特区において定められておりまして,その内容を次のところで御紹介しております。通常の通信制大学につきましては,スクーリング等を行うための校舎の必要面積が基準として定まっております。資料で申しますと3枚目のところに大学通信教育設置基準の抜粋が出ておりまして,御覧いただきますと,学部の種類ごとに収容定員ごとの必要面積が定められているところでございます。
特区の特例措置といたしましては,インターネットのみを利用して授業を行って卒業できるというような場合については,この面積基準を下回っても構わないというのが特区の内容として定められているところでございます。実際,これを活用しましてサイバー大学,ビジネス・ブレークスルー大学という二つの大学が設置され,教育活動を行ってきているという状況がございます。
御案内かと思いますが,特区制度につきましては,このような特例措置によります弊害があるかどうかということを評価いたしまして,弊害等ない場合には全国展開するというルールが定まっております。この特例措置につきましては,平成23年度に評価・調査委員会における評価が行われまして,その結果,特段の大きな弊害はないということで,平成24年4月の段階で構造改革特別区域推進本部決定という形で,教員と学生との対面性を補完し得る方策など,インターネット大学に関する課題について,専門的な見地から十分な検討を行った上で,全国展開を行うことということと,平成25年度中にこれを措置しなさいということが定められたというところでございます。このようなことを背景としまして,昨年の7月から,調査研究協力者会議におきまして具体的な議論を進めてきたということでございます。
このたび,その議論の結果がまとまりましたので,その概要を御紹介したいと思います。2枚目を御覧いただければと思います。大きく4点につきまして御提案を頂いております。
1点目のところは,施設基準をどうするかということでございます。協力者会議の議論といたしましては,もちろん教育・研究に必要な校舎を備えるということは大前提ではありますけれども,これまで特区で認められていたように,全てインターネットのみを利用して授業を行っているという場合については,通信教育設置基準に定められております面積基準を下回ってもよいということを規定してはどうかということでございます。
2点目でございますけれども,インターネットのみを利用して授業を行う場合,当然の前提といたしまして,面積が下回っていても教育・研究に支障がないということが必要となります。それについてどういう要件を課したらいいか,ということが(2)のところでございます。本件の場合につきましては,全てインターネットのみを利用した授業ということでございますので,通常の授業とは違った設計,あるいは配信等についての専門知識が必要になりますので,そういう知識を持っている人をきちんと配置するような体制整備をすること。学生の側にも,このような新しい形での授業について必ずしも十分でない方もいらっしゃるということで,技術面,教育面での学生に対するサポートもきちんとするということ。それから,このような大学について,主に念頭に置かれておりますのは社会人の方への授業機会の提供ということですけれども,現実には,少数ながらも社会人経験がない,直接高校から大学に入ってこられる方もいらっしゃいますので,そのような方への配慮をするべきであるということ。以上の3点が必要ではないかということがまとめられております。
3点目といたしまして,対面性の補完ということでございます。インターネットのみを利用した授業について,必ずしも同時双方向性を求められておりませんけれども,この協力者会議の議論の中では,特に重要な教育活動については,インターネットを使った形であっても同時双方向性を求めるべきではないかという御議論でございまして,特に卒業の可否に関わるような授業でありますとか,カリキュラム上重要な科目については,対面性,同時双方向性を取り入れた形の授業にするべきではないかということでございます。
それから,4点目でございますが,基本的には全てインターネットによる授業ということですけれども,やはり対面の有効性というのはあるということでございます。卒業要件の単位の外であれば,対面による指導,面接授業等を行っても差し支えないのではないかということがまとめられているところでございます。
その下の図は,このような取扱いの概略をイメージしたものでございますけれども,卒業要件について,全てインターネット等による場合には,一定の面積基準の緩和をする。そうではなくて,一部でもスクーリングが入っている場合には,本則として定められております面積基準はきちんとクリアしていただく形にする。このような形で整理をしていければ,というのが本協力者会議における結論でございます。本日,この場で御意見を頂いた上で,制度化に向けた検討を事務局としてさせていただいて,引き続き御議論いただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
それから資料5-2としまして,調査研究協力者会議の検討結果の本体を付けてございますので,適宜こちらも御参照いただければと思います。
説明は以上でございます。
【谷口副部会長】 基本的にはこの考えで私自身はいいと思います。インターネットを使ってというのは,これからどんどん増えてきますから,そういうものを促進するためにも,ある種の緩和というようなものが必要だろうと思います。ただし,おっしゃったように,面接授業とか,そういうのがあるなら,基本的に要件を満たすという基本的な考え方は,これでいいと思います。
【吉田委員】 この方向性の3番の対面性の補完の問題ですが,ここで言っている同時双方向というのは,顔を見て声を交わすという意味での同時双方向なのか,あるいは文字だけのやり取りでも同時双方向とみなしているのか,その辺りはどのようになっているのでしょうか。
【牛尾専門教育課長】 基本的には顔を見ながら,例えばスカイプのようなものを使っての授業形態をイメージしております。
【鈴木委員】 基本的な構造はこういうことだと理解いたしますが,こういうインターネットを使うやり方でない通常の教育においても,やはり心理的,あるいは精神的な学生へのケアが必要であるとか,あるいは中退問題とか,学業を達成できないということが大きな問題になっているわけですが,インターネットを使って双方向,あるいは同時双方向の授業であっても,フェイス・トゥー・フェイスができないという辺りが想定されるわけですので,こういう学生の生活といいますか,心のケア的なところは,この中には含まれない。それでよろしいでしょうか。
【牛尾専門教育課長】 その点については,必ずしも十分な議論はできていない面もございますけれども,ただ,実際にこれを使っております両大学におきましては,入学時のオリエンテーションとか,そのような部分では当然学生を集めて対面でやっておりますし,そういうケアはするということは大事だという認識はございますので,それを基準,あるいは何らかの指導の内容に入れるかどうかはよく検討したいと思います。
【佐々木部会長】 では,検討課題にしていただくようにお願いします。
【牛尾専門教育課長】 はい。
【濱名委員】 先ほどの議題との関連で言えば,教育・研究に必要な校舎というこの記述で十分かということについては検討していただきたいと思います。次なる質保証の問題にならないような形でもう少し記述が必要なのではないかと思います。それは,今,御指摘があった点と鈴木委員の御指摘とオーバーラップします。
【佐々木部会長】 本件については,また本部会に御報告を頂くことにいたします。
(4)大学のグローバル化に関する諸制度について,文部科学省から資料6について説明があった。
【白井大学振興課課長補佐】 それでは,資料6に基づきまして主にジョイント・ディグリーの件について御報告をさせていただきたいと思います。
資料6の1枚目がグローバルに関する諸制度をまとめたものでございます。現行としては,留学,単位互換,あるいはテンプル大学等に始まりますような外国大学日本校の指定校制度,さらに,先ほど谷口副部会長から御指摘いただきました海外キャンパス制度というものがございます。ただ,これだけでは十分でないということで,今,検討課題として上っておりますのがジョイント・ディグリー,それと海外キャンパスをより活性化できるような海外サテライト(仮称)という二つでございます。
次の2ページにお進みを頂ければと存じます。2ページは,ジョイント・ディグリーに関する議論の経緯をまとめたものでございます。ジョイント・ディグリー,ここでは国際的なジョイント・ディグリーでございますけれども,非常に古くして新しいような話題でございまして,特に欧州におけるボローニャプロセスの進展の中で欧州を中心に,国をまたがった大学同士が共同で連名の学位を出すというような取組が盛んになっているところでございます。特に近年,このジョイント・ディグリーについて,欧州の国を中心に,日本の大学に対しても一緒に連名でプログラムを組んで学位を授与しようというような取組,働き掛けが盛んになっているというようなことを踏まえまして,現在,この検討を進めているところでございます。
3ページからが現在,考えている制度設計の案でございます。このジョイント・ディグリーに関しましては,法制度が各国ごとに異なりますことから,なかなか国際的な決まったルールというのはまだない状況でございまして,我が国もある意味積極的にルールメイキングに携わっていく,加わっていくというようなスタンスをとっていきたいと思っています。ただ,このジョイント・ディグリー,なかなか普及が円滑に進まないという状況がございます。その理由としましては,法制度が異なる外国の大学の学位条件をどのように捉えるのかというところに尽きてくるかと思います。基本的には,日本の大学が質保証した大学であって,初めて日本国内で有効な学位授与をすることができるということになります。共同での学位授与ということになりましても,その場合に外国大学の質保証をどのように担保するのかということは非常に大きな論点となってくるところでございます。
そこで,今回はもちろん将来的に例えば条約,2国間,国家の条約等でその部分が担保できれば,また変わってくると思いますが,当面,なかなかそのような状況にないという中で,当面は外国大学による学位授与について,国内の学位授与から切り離して,我が国の日本の法制度における学位授与という形で扱っていきたいと,その前提の下に制度設計をしていきたいと考えてございます。
具体的には,大学設置基準を改正し,日本の大学が外国大学と連携して教育・研究を展開する国際連携教育課程,ジョイント・ディグリー課程というものを設置して,それを管理する組織としての国際連携教育学科というようなものを作っていく。同時に学位規則の改正をしまして,連名での学位授与ということを認めていけばどうかという考えでございます。
4ページは,少しそれを図示したものでございますけれども,例えば日本のA大学の法学部と外国のB大学の法学部とのジョイント・ディグリーという制度設計の例でございます。今回,この連携教育課程,ここでは国際連携教育学科,収容定員40名と書いてある部分がまさにジョイント・ディグリーの課程ということになりますけれども,これについては,基本的には設置基準の要件の中でやっていきたいと考えてございます。
何が言いたいかといいますと,基本的に校地・校舎基準等について,現在,国内の共同実施制度におきましては,新たに共同学科というものを設定した場合に,それを独立した組織として見て,校地・校舎であるとか,あるいは専任教員の要件について,また,独立した,更に追加的な配置というものが必要になってきますけれども,そのようには見ないで,あくまで現在の持っているリソースの中の一部を活用して外国大学と組み,連携をして行うものについて,これをジョイント・ディグリーの課程と見ていくという制度設計にしたいと思っております。
ですので,基本的に校地・校舎等についての追加的な要件というのは,ここでは求めないことにしたい。ただ,新しいプログラムを外国大学と組むということになりますと,当然外国大学とのやり取りであるとか,実際現地に行って調整をしたりと,様々なことが必要になってくるかと思いますので,一定の追加的な専任教員というものについては考えたいと思っております。
また,この外国大学との連携ということでございますので,ここでポイントとなるのは大学間協定であるかと思っています。外国大学との共同で課程を組む場合に,大学間協定において,例えば4ページの中段下の方にございますけれども,教育課程の編成,教育・研究指導,他に,カリキュラムが仮に途中でなくなった場合に学生をどうするのかとか,あるいは学生はそもそもどこに在籍しているのか,入学金とか授業料をどこに払えばいいのか,教職員はどこに所属するのか,学位の審査はどうするのかというもろもろのことについて,これを事前に決めておく必要があるかと思っています。ですので,これは設置認可の対象にしようと思っておりますけれども,設置認可において見るのは,通常のように校地・校舎であるとかいう部分ではなくて,むしろ大学間協定において,この必要な事項についてきちんと手続が踏まれているのかということを中心にした設置認可に変わっていくと考えてございます。
次の5ページでございますけれども,日本の大学に関する要件というのは,現在,省略をさせていただきまして,外国の大学に関する要件でございますけれども,外国の大学について,なかなかそれをきめ細かに日本の設置指針が評価をするということは,現実的に難しいかと考えています。ですので,当該国においてきちんとした質保証を受けておって,更に有効な学位授与という実績があるということについて確認をしていきたいと思っています。
また,連名の学位でありますので,その外国の大学において少し単位を取った,例えば3単位取ったとか,4単位取ったというだけで学位授与ということでは適切ではないと考えておりまして,一定の関与,例えば学士課程であれば31単位以上とか,1年間以上いたとか,それぐらいの関連性を求めていきたいと思っていますし,また,主要授業科目の一部についても,外国大学においても開設をしていただくということも求めていこうと思っております。
次の6ページにお進みいただきたいと思いますけれども,単位認定の特例というのを今回,大学設置基準の中に設けていければと思っております。ジョイント・ディグリーの場合,当然各大学,例えば日本のA大学,外国のB大学とあった場合に,A大学,B大学それぞれ純粋に独自に提供する授業科目もあると思いますけれども,実際に共同で一緒に設計をして行っていく科目というのも当然想定されると思っております。これについて,新たに共同開設科目という概念を設置したいと考えております。
今回,日本の大学が出す学位という位置付けの制度設計にしておりますので,基本的には,これまでの大学設置基準の考え方のとおり,過半数の単位については日本の大学で修得をしていただくということを求めていきたいと思っております。ただし,残る部分,残る60単位の部分で例えば31単位以上を修得した場合に,当該外国大学も名前を連ねることができるという形になろうかと思います。例えばキャンパスアジアなどでは,日本の大学2年,中国1年,韓国1年というような形で,学生が順次回るというようなプログラムもございますけれども,そのような場合に,例えば日本の大学で60単位,中国で30単位,韓国で30単位という形で修得をしていけば,まさに日中韓の三大学が連名で共同の学位を出すというようなことも可能になってくると考えております。ただ,その場合でも,微妙な部分,例えば日本の大学で何らかの理由で50単位しか取れなかったとか,あるいは外国の大学で25単位しか取れなかったというようなことも生じてくると思います。そのような場合にも,共同開設科目については日本の大学で修得した単位としても,あるいは外国の大学で修得した単位としても,いずれについてもカウントができるというような制度設計にしようと思っておりまして,そうすることによって,いわゆるバッファー的に調整弁として機能することも期待されるかと思っております。
こちらからの説明は以上でございます。
【佐々木部会長】 この問題は,御説明がありましたように,大学設置基準や学位規定の改正につながる案件です。ワーキング・グループにおいてその点も含めて今後検討が継続されると聞いておりますので,本部会では報告という形で説明を頂きました。なお,御質問,あるいは御意見がおありの場合には,文部科学省へ個別に伝達してくださるようにお願いいたします。
本日は浅田先生と浅野先生においでいただいて,大変良い議論ができたと思っております。改めて御礼を申し上げます。本日の審議はこれまでにさせていただきます。
(5)今後の日程について,事務局から発言があった。
── 了 ──
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