http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/035/gijiroku/1343300.htm
組織運営部会(第6回) 議事録
1.日時
平成25年11月19日(火曜日)15時~17時
2.場所
文部科学省3階3F1特別会議室
3.議題
1.大学のガバナンスの在り方について
2.その他
4.出席者
委員
(部会長)河田悌一部会長
(副部会長)北山禎介副部会長
(委員)帯野久美子,北城恪太郎の各委員
(臨時委員)奥野武俊,樫谷隆夫,金子元久の各臨時委員
(専門委員)石原多賀子,上山隆大,黒田壽二,小林雅之,田中愛治の各専門委員
文部科学省
板東文部科学審議官,布村高等教育局長,関文教施設企画部長,常盤高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,豊岡国立大学法人支援課長,森私学行政課長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐 他
5.議事録
(1)国立大学の改革について,文部科学省から資料1-1及び1-2について説明があり,その後,意見交換が行われた。
【河田部会長】 それでは,議題に入りたいと存じます。前回,前々回の本部会で,国立大学における改革について御議論が出ました。
そこで,本日は,まず国立大学の改革が現在どのように進展しているのかについて,事務局から御説明頂きたいと思います。
【豊岡国立大学法人支援課長】 国立大学法人支援課長でございます。今,部会長からございましたが,前回の審議におきまして国立大学の改革に関する御議論もございましたので,現在の国立大学改革の状況につきまして,お手元の資料1-1と資料1-2に沿って御説明申し上げたいと思います。
現在,政府の最重要課題といたしまして,教育の再生と経済の再生ということがございます。教育の再生は教育再生実行会議,経済の再生につきましては産業競争力会議を中心に議論が行われてきてございます。国立大学の改革は,教育の再生,経済の再生,その両面から重要性が指摘されてございまして,これまで様々な改革の方向性が打ち出されてきてございます。
こうした政府の国立大学改革の方向性を踏まえまして,本年6月に文部科学省においてお手元の資料1-1のとおり,今後の国立大学の機能強化に向けての考え方というものを取りまとめてございます。
1枚目にございますように,今後3年間,すなわち国立大学に置き換えますと第2期の中期目標期間の後半3か年ということになりますけれども,今後の3か年を国立大学の改革加速期間と位置付けた上で,数字で1から7まで項目を掲げさせていただいておりますとおり,まず,ミッションの再定義を通じて,各国立大学の有する強み,特色,社会的役割を明らかにする取組。ミッションの再定義と申しますのは,各国立大学の専門分野ごと,例えば医学とか工学とか教員養成とか,そういう専門分野ごとにそれぞれの大学の持つ強み,特色は何か,あるいは,その大学がその分野で果たすべき社会的な役割は何かということにつきまして,文部科学省と各大学長はじめ,大学側の方と意見交換を重ねながら,新たな社会の要請のもとで各大学,専門分野のミッションを明らかにする取組を行っているということがございます。
そして,資料の2ページ,2.に該当しますけれども,そのようなミッションの再定義を踏まえた各大学の主体的な改革を大学のガバナンス改革,学長のリーダーシップの発揮を通じて促進していくということです。
三つ目の項目でございますが,人材システムのグローバル化によって世界トップレベルの拠点形成を進めていく。
四つ目になりますけれども,イノベーションを創出するための教育・研究環境整備を進めて,理工系人材の育成を強化する。
五つ目になりますけれども,人事・給与システムの改革を進めて,優秀な若手・外国人研究者の活躍の場を拡大していく。
ここで人事・給与システムとございますのは,国立大学は法人化されて従来の国の機関から非公務員型の法人組織となってございます。そのようなことで,公務員型ではない人事・給与システムの改革を一層進めるべきであるということで進めてございます。
それから,六つ目,七つ目に関わりますけれども,各大学の改革成果を踏まえながら,国立大学法人の新たな評価の指標を確立しながら,運営費交付金の在り方も抜本的に見直していくということにしておるわけでございます。
こうした改革の取組のイメージを図示いたしましたものが資料1-2でございます。
冒頭ございますように,今年度を含む3年間の改革加速期間の目標,これは抜本的な機能強化ということでございます。ミッションの再定義を通じて明らかにする各大学の強み,特色,社会的役割,こういうものを踏まえながら,グローバル化,イノベーションといった機能強化を図る改革,併せて人事・給与システムの改革を進めていこうとしているものでございます。
その下に少し例がございますけれども,実際に各国立大学からこうした方向性を踏まえた改革構想がもう多数出てきてございます。来年度の予算要求でも,こうした改革構想を実現するための組織再編を重点的に国として支援しようということで要求してございます。
このような全学的視点からの機能強化のための組織の再編を進めているわけでございますが,組織再編には学長のリーダーシップが不可欠でございます。まさにガバナンスが問われるという問題でございます。各国立大学とも学長に改革構想をおまとめいただきき,これを実行に移すために御尽力いただいているというのが現状でございます。
加えまして,学長の改革構想のもとに新たに再編される組織につきましては,学長のガバナンスが効く仕組みを導入していく。あるいは,その組織については,率先して年俸制を導入するといった改革の方向性を踏まえた取組を行っていただいているところでございます。
具体例で申し上げますと,最近のマネジメント改革の実例として,例えば秋田大学は100年の歴史を有する鉱山学部の実績が強みとしてございます。このため学内の資源を再配分いたしまして,来年度から国際資源学部を創設することにしているわけでございますけれども,こうした国際資源の分野で資源を投入して,組織再編成して重点化していくというわけでございますが,こちらの学部運営は,運営面と教学面の組織を区別して,教学面は教授会が責任を持って検討していただくわけですけれども,運営面は,教育課程とか教員人事などの運営方針を,企業の実務者の方などの構成員の半数を学外員とするパネルを設けて行う。また,学部長も学長が指名するという制度の導入をするというような取組を決定しております。
また,もう一例として,九州大学では,毎年,部局の教員ポストの1%を学長が確保する。大学の将来構想に合った部局の改革計画を募って,優先度の高い計画にコストを再配分していくといった取組も行っておられるところでございます。
なお,文部科学省が重点支援していくこうした組織再編の取組につきましては,国立大学法人評価委員会でも評価を行っていただくこととしております。
今後の改革の慎重状況を踏まえながら,28年度からの第3期からは運営費交付金の配分を抜本的に見直すとともに,新しい評価の在り方を定めて,各国立大学が教育・研究組織の恒常的な見直し,あるいは再編成を進めることができる,そういう体制を作ってまいりたいと考えてございます。
簡単ですが,以上でございます。
【北山副部会長】 先日,平成24年度の国立大学法人評価委員会の総会がありましたが,先ほど文部科学省から御説明がありましたように,現在,第2期6年計画の4年目,すなわち後半の3年の1年目ということになります。国立大学改革全体を進めていくに当たっては, 3年前に出した6年計画を途中で修正・調整するようなことが起こりますので,新しい評価の仕組みにおいては,6年計画の途中でも,そうした改革の進捗状況のフォローアップを行えるようにしていく必要があるだろうと思います。
また,秋田大学の例のような新設学部については,割と改革がしやすい面もあろうかと思いますが,やはり大学の既存部分の方が圧倒的に大きいので,国立大学法人評価委員会の評価についても,そうした既存部分の改革をいかに推進するのかということも含めて,今後検討していく必要があると思っております。
【河田部会長】 私は委員の一人として国立大学評価委員会のいわゆるヒアリングに立ち会わせていただいたのですが,やはり伝統ある国立大学は各部局の自治が続いており,なかなか改革の手が付け難いという状況があります。この組織運営部会は,そういう意味で一つの大きな役割を果たせるのではないかという感想を持ちました。
国立大学の改革の状況について,御承知おきいただきたいと思います。
(2)審議まとめ(素案)について,文部科学省より資料2について説明があり,その後,意見交換が行われた。
【白井大学振興課課長補佐】 これまでの御議論を踏まえまして,審議まとめ(素案)という形で資料2にまとめさせていただいてございます。きょうの御審議や,国立大学改革の進展状況,また,適時のタイミングでパブリックコメント等も行いまして,幅広く御意見も頂戴しながら,最終の確定版にまとめていければと考えてございます。
資料全体が45ページにわたる大部のものでございますので,かいつまんだ御説明になることを御容赦いただければと存じます。
1ページ目は目次でございますけれども,全体で6章の構成にしてございまして,「はじめ」にから始まりまして,大学ガバナンスの現状,大学ガバナンス改革の推進についてという第3章,それから,第4章で国による大学ガバナンス改革の支援,第5章で社会との関係,そして最後,「おわりに」という構成立てにしてございます。
2ページにお進みください。大学へのメッセージという形で,特に強調したい点をまとめさせていただいてございます。また,内容については,後ほど重複する部分があるかと思いますので,省略させていただきます。
3ページでございます。第1章の「はじめに」というところでございます。学長のリーダーシップについてですけども,大学というものについては,これまで本部会でも京都大学,大阪大学はじめ,いろいろな大学の学長が非常に積極的に大学改革に取り組んでおられる状況についてプレゼンを頂きました。ただ,一方で,大学を取り巻く社会の変化というのは,それ以上に激しい面もあり,なかなか機敏に対応できていないという指摘があるのも事実でございます。
そのような中で,経済界をはじめとしまして,権限と責任の所在が不明確ではないかとか,あるいは意思決定に時間が掛かるのではないかという御指摘を頂いていることもまた事実でございます。
そうした中で,教育再生実行会議の第三次提言でございますとか,あるいは第二期の教育振興基本計画等におきまして,このガバナンスの在り方の見直しについての御提言でありますとか,閣議の決定を頂いているところでございます。
中教審におきまして過去にも,例えば平成10年の大学審議会答申等においても,このガバナンスについて検討してきたところでございますし,昨年8月に出しました質的転換答申においても全学的な教学マネジメントの確立における学長のリーダーシップの重要性というものについて指摘しているところでもございます。
大学のガバナンスの在り方,それぞれ歴史や伝統文化に根差した各大学のそれぞれの事情によるところも大きく,基本的には自主的・自律的な改善が前提であると考えてございます。
既に各大学では,いろいろな改革が進展しているところでございますけれども,改めて,この審議まとめを契機に各大学においてガバナンスの在り方を総点検していただいて,役員・組織の責任と権限,あるいは相互の関係等のガバナンス体制を見直していただいて,最適なガバナンスの在り方を再構築していただきたいということが,この審議まとめの大きなポイントであろうかと存じます。
そのために,例えば国立大学については,第2期の中期目標期間中における関係する内部規則の見直しでありますとか,あるいは国における効果のある制度改正,あるいは予算面でのめりはりある支援といったことが進められていければと存じます。
6ページにお進み頂ければと存じます。第2章大学ガバナンスの現状についてでございます。
初めに,1.大学ガバナンスに関する現行制度でございます。これについては,これまでの部会の審議でも御説明してまいりましたところでございますけれども,大学ガバナンスに関しては,主に教学面と経営面というそれぞれの法体系がございます。教学面については主に学校教育法,経営面については国立大学法人法や私立学校法といった法律が適用されているという状況でございます。
次に,8ページにお進み頂きたいと思います。この教学面と経営面,それぞれの法体系がある中で,教学面の責任者である学長と経営面の責任者でもある理事長と言われる存在がございますけれども,国立大学の場合には学長が両者を兼務しているような状況であり,また,公立大学の場合には両者を兼ねることもできるし,別にすることもできる。私立大学についても多様であるといったような様々なガバナンスの体系というものがございます。
設置形態によって実態は非常に多様でございますけれども,重要なポイントとしては,最終的な決定権と,その責任に対して誰がどのように責任を負っていくのかということを明確にするのが重要なところではないかと,8ページの下の方に記述させていただいてございます。
それから,8ページの下の方から始まりますが,教育公務員特例法という法律がございます。これについては,戦後70年余りの間,全ての国公立大学,公務員の形の大学に対して適用されてきたものでございますけれども,公権力の行使との関係から,学部を中心とした教授会,あるいは評議会といった教員組織に,特に人事に関して大きな権限を与えてきたということがございます。
この教育公務員特例法については,国立大学や公立大学の法人化が進む中で,現在では,これらの大学には適用されない状況になってございますけれども,その当時に形成された慣行でありますとか,内部規則が今も多くの大学において残っているという状況がございます。こういうものについては,また改めて法人化後の法令の適用関係を踏まえて,内部規則を見直していく必要があるのではないかというところでございます。
9ページの2.コーポレート・ガバナンスとの異同というところでございます。
初めに,ステークホルダーに関してでございますけれども,株式会社の場合には株主総会という非常に明確なステークホルダーがございますけれども,ただ一方で,大学の場合にはステークホルダーというのは非常に多様でございます。もちろん学生も大きなステークホルダーでございますけれども,例えば学生が卒業後に採用される企業であるとか,あるいは広く研究成果を活用できる社会一般も広い意味のステークホルダーということがございます。そういう意味では,誰に対して責任を負うのかというステークホルダーの位置付けが不明確になりやすいという傾向がございます。
それを補うために現在,国立大学法人などでは,国民代表である所管省庁の大臣,文部科学大臣が法人の中期目標を示して,その中期計画について認可しているというような仕組みが取られているわけでございます。また,私立大学,学校法人については,意思決定機関である理事会に対して評議員会や監事,監督官庁等が監督を行っているという仕組みが設けられているところでございます。
国立大学法人については,基本的に国の関与というのは最小限にとどめられて,広範な裁量が与えられているところでございますけれども,学長自身が,このような広範なステークホルダーを意識してガバナンス改革に取り組む社会的責任があるということについて,改めて記述させていただいております。
10ページの下の方,権限と責任の明確化という小見出しでございます。大学におきましては,この権限と責任の所在が必ずしも一致していないのではないかというような御指摘を多々頂いてございます。実際,一部の教授会等においては,いろいろな事項について事実上,議決機関として機能しているのではないかというような御指摘もあるところでございます。
もちろん大きな組織であれば,適切な権限を下部の機関等に与える,議決権を与えるということも当然あるべきことでございますけれども,大切なことは,そのもともとの権限がどこにあるのか。それが学長から委任されているものなのか,それとももともと教授会が持っているものなのかといったことをきちんと区別して理解していくということであろうかと存じます。権限と責任が一致することは,株式会社だけではなく,あらゆる組織におけるガバナンスの基本であるということを改めて認識したいと存じます。
11ページ下の方,コーポレート・ガバナンスと大学のガバナンスの比較でございますけれども,大学のガバナンスにつきましては基本的に構成員自治に基づく自律的な運営を基礎としている。また,大学として学問の多様性や継続性を維持しなければいけないという社会的な使命もございます。そういう意味では,コーポレート・ガバナンスは,本質的に異なる部分も多いということには留意が必要かと存じます。
また,学長からのトップダウンではなくて,基本的には教授会を中心としたボトムアップによる意思決定というのが基本になってこようと思いますし,また,そのようなやり方が国際的にも認知された大学運営の在り方であろうかと存じます。
12ページの中段以降,諸外国の大学制度との異同を書いてございますけれども,ここでもアメリカ,イギリス,フランス,ドイツといった主要国の事例を取り上げておりますが,いずれにも共通することは,アカデミックな事項については教員組織に広範な権限が認められているということが確認されている状況でございます。
13ページの下の方でございますけれども,我が国の大学の特徴というところでございますけれども,この部会におきましても,特に人材の流動性の低さ。これは大学に限ったことではなく,企業や官公庁においても同じかとは存じますけれども,特に執行部クラスの人材の流動性が少ないことから,経験・能力のある適任者を選ぶということがなかなか難しい状況になっているのではないかということを書かせていただいております。
また,第2点としまして,特に我が国では学部段階を中心に非常に大規模な大学が一部にあることから,どうしても独立性が高くなってしまっている。各学部ごとにいろいろなことを決定するという傾向になり,学長のグリップが効きにくいというような事情もあろうかと思います。
我が国の大学におけるガバナンスを考慮するには,我が国の事情を十分に考慮する必要があるのではないかということを14ページの下の方に書かせていただいております。
15ページ,第3章大学ガバナンス改革の推進についてというところにお進み頂きたいと存じます。
初めに,「1.大学ガバナンス改革の目的」と書かせていただいております。大学は,学術の中心と教育基本法,また,学校教育法においても位置付けられてございます。
大学ガバナンス改革の目的については,大学自体の目的である教育,研究,そして社会貢献の機能を最大化するという観点から検討しなければいけないものと考えます。そのためには,大学は多様性を確保して大学全体の多様性を戦略的に構築していく。単にばらまきのように広げるのではなくて,きちんとした戦略のもとに多様性を維持していく。その上で資源配分の最適化に努めることが重要なのではないかということを指摘させていただいております。
次の16ページでございますけれども,大学といいましても,先ほど述べましたように国公私立大学,各設置主体の性格ごとに非常に多様でございます。特に私立大学については独自の建学の理念に基づく歴史や伝統等があることから,そのような多様性への配慮ということも必要であります。
ただ一方では,大学も国公私立問わず,各種の財政,あるいは税制の支援を受けたり,また,高等教育における責任を担う公共性もありますので,それに応じて社会に求められるガバナンスについてはきちんとやっていただくということも,また一面の真理ではないかと考えております。
続きまして,18ページでございます。2.学長のリーダーシップの確立というところを書かせていただいてございます。
18ページの一番上の方でございますけれども,学校教育法の関係の規定を少し書いてございますが,この中では,学長は校務をつかさどり,所属職員を統督するという規定がございます。これについては,学長が最終的な教学に関する責任者であって,また,所属職員に対して指揮監督できるという,法令上の権限が明確にされているということでございます。
ところが,長年の,特に教育公務員特例法時代の慣行を踏襲した内部規則によって各学部に権限が配分されてしまい,学長がリーダーシップを適切に発揮しにくい構造になっている場合もあるということでございます。こういうことについては,国の法令等を踏まえながら,各大学において総点検,見直しをしっかりと行っていただくことが必要かと存じます。
また,法令上の権限が学長にあるというだけでは当然足りないわけでございまして,学長がリーダーシップを発揮するためには明確なビジョンの提示,丁寧な教職員との対話やコミュニケーションということも必要になってくるかと存じます。
また,国立大学の場合,経営協議会,あるいは私立大学における理事会など,経営組織と十分に意思疎通を図って,経営面からの支持・支援を得ておくことも学長がリーダーシップを発揮する上で重要かと存じます。こうした様々なプロセスを通じて,現実的で,かつ合理的な政策として学長が打ち出すことが可能になると考えます。
18ページの下の方ですが,学長補佐体制の強化というところでございます。現在,教育再生会議,あるいは中央教育審議会でも様々な課題が議論されてございます。このような様々な課題に対応していくためには,教員一人一人の意欲と能力を最大限に引き出していくことが必要になってきます。そのためには,学長一人がこの課題を考えていくということは現実的ではなく,学長を補佐する相当規模の充実した体制というものの整備が必要になってきます。
このため,現在,一部の大学にあるような縦割りの分掌業務でなく,特に米国のプロボストのように大学全体の教育研究を見ることができるような,例えば総括副学長のような職の設置というものが有効かと考えられます。また,国立大学法人の場合にも総括理事というような職を置くことも検討すべきではないかと提言させていただいております。
また,リサーチ・アドミニストレーターでありますとか,あるいはカリキュラム・コーディネーター,IRに関するインスティテューショナル・リサーチャー,産学官連携に関するコーディネーターでありますとか,弁護士,弁理士といったような様々な専門性の非常に高い方々がいらっしゃいます。ここでは,これを高度専門職と呼ばせていただいておりますけれども,このような方々については,新たな職種となるために,競争的な資金を原資として,どうしても任期付きの採用となるような事例が多い状況にございました。ただ,こういう専門性の高い人材は学長を補佐する上で非常に重要でございますので,安定的に採用・育成していくことが重要であろうと存じます。
20ページでございますけれども,事務職員です。国立大学においても人事交流は,かつて活発だったわけでございますけれども,現在,同一大学の中で勤務するという傾向が増えているという御指摘がございます。そのような中で,様々な経験を積みながら,能力のある方に対しては人事評価をきちんと行って処遇,あるいは新しいキャリアパスを開いていくことが重要かと存じます。そのような中で,教職協働で,事務職員,また,教員が大学運営に参加するという意識を養っていくということでございます。
20ページ中段でございますけれども,このような専門職の方,あるいは事務職員の方々を対象に現在,FD,ファカルティ・ディベロップメントという規定がございますけれども,スタッフ・ディベロップメントについても充実していくことが重要かと存じます。また,学内情報の集約,分析結果をもって学長が適切な予算配分,あるいは人事ポストの配置ができるために,IR,インスティテューショナル・リサーチの充実ということもあろうかと思います。
20ページの一番下でございますけれども,全学的な意思決定に際して,各学部長が学部に案件を一旦持ち帰り,学部教授会の意見を聞いてから判断するような慣行があるという御指摘もございます。そのような場合,教授会が月に1回しか行われない場合には,大学全体としての判断がどんどん遅れてしまうということもございます。
そこで,全学的な意見を集約して,学長の意思決定を円滑にするための組織として,例えば大学運営会議でありますとか,そのような組織を置くとか,あるいは全学機構のようなものを学長の下に置いて,機動的な執行体制を整備していくという取組も有効かと存じます。
21ページでございますが,人事に関する学長のリーダーシップでございます。人事については,これまでの御議論の中でも配置と選考ということに分けて考えるべきではないかという御意見を頂いてございます。
初めに,配置に関しては,大学の運営全般に関する問題であって,限られた学内資源を効率的に活用していくためには,最も必要性が高い部署に教職員ポストを再配分していくことが必要であろうかと存じます。まさに,ここは学長が大学全体のビジョンの中で判断すべき問題かと存じます。
一方で,選考ということに関しましては,基本的には専門性を有する教員組織が合議制の機関において客観的に判断を行うべきであって,学長は,基本的にはこのような意見を尊重することが求められるというふうに考えられます。
もっとも,前回,田中委員からプレゼンがございましたけれども,アメリカの大学などでも,教授会での審査に関して,例えば利害関係者が関与していないかとか,選考の手続が適正であるとか,内容といった面について一定の関与をすることは考えられようかと存じます。
また,大学の国際競争力を高めるためには,人材を幅広く募集することが大事でございますので,基本的には公募とするなど,公正性・透明性を高めることが重要かと存じます。
教職員の人事評価でございますけれども,きちんと人事評価を行って,その査定結果に応じた給与制度を構築することも重要でございます。例えば特別に処遇すべき教職員を学部長から推薦するといったようなことも考えられます。また,年俸制の導入でありますとか,若手の常勤ポストの拡充など幅広い人材が集まるような仕組みの整備が重要であるということでございます。
22ページ中段,予算に関するリーダーシップでございます。現在,大学の予算,例えば国立大学の場合には人件費,維持管理費等,大半が固定的な支出であるため,改革に使える予算というのは非常にわずかであるという御指摘もございます。本来であれば基金の運用収益でありますとか,寄附金収益があれば,より自由度が増すわけでございますけれども,そうは言っても,大学収入のうち一定割合について学長裁量経費というような形で,最適な学内資源配分に向けていくことが重要であるという提言でございます。
22ページの下の方です。組織再編等に関する学長のリーダーシップでございます。組織再編,組織の新設等であればともかく,予算や定員,教員ポストを削減する等,痛みを伴うような場合には学内でいろいろな御意見が出るのは当然かと存じます。そのような場合においては,学長は大学の将来のビジョンを明確にしながら,IR等を通じて客観的,合理的なデータをお示しして,きちんと理解を得て,最終的には学長自身が全ての責任を負って改革を推進していくことが大切かと存じます。
23ページからが3.学長の選考・業績評価について記述してございます。現在,学長については,国立大学については学長選考会議,私立大学の場合には理事会でありますとか,そのようないろいろな機関が選考してございますが,ここでは学長選考組織とまとめて呼ばせていただいております。
現在の学長選考については,必ずしも学長に求める職務や資質,能力といったようなことが明示されないままに選考が行われているケースがあるという指摘がございます。実際,教職員による投票の結果を単に追認するということがあったり,学長選考組織が主体的に選考を行っているとは言いがたいような状況が見られるという指摘もございます。
大切なことは,学長選考組織が将来の大学のミッションを見通した上で,そのミッションの実現に向けてどういう学長人材が必要なのかということを明示して,それに見合った選考方法を行っていくということかと存じます。その観点から,現在の学長選考方法について,各大学が再点検することが必要であると存じます。
米国の場合には,学長の職務内容,Job descriptionを明示した上で学長選考を行っているというようなこともございます。こういう取組も参考になる部分もあろうかと存じます。
また,一旦選考された学長の職務執行状況についてでございますけれども,現在,学長選考組織は,一旦選考が終わってしまいますと,ある意味,仕事は終わってしまうような状況もございますけれども,きちんとフォローアップしていくことも重要かと存じます。
それから,24ページですが,国立大学法人における学長選考ですが,国立大学の法人化,あるいは公立大学の法人化によりまして,大学の学長に求められる資質というのも法律上も変わってきてございます。従来の学校教育法に基づく学長としてだけではなくて,法人の経営についても一体的に責任を負うという位置付けになってございます。
その意味で,例えば国立大学に関しましては,教育研究評議会の学内委員と経営協議会に所属する学外委員の同数から構成される学長選考会議において,きちんと学会と学内の意見がそれぞれ適切に反映されるような学長選考の仕組みというものが設けられてございます。
ただ,一部の大学においては,実質的に教職員による意向投票の結果が,そのまま学長選考に反映されているというような場合も見られるところでございますが,法律の制度の趣旨からしても,過度に学内の意見に偏るような選考方法であれば,それは適切とは言えないのではないか。意向投票の結果というのはあくまで参考の一つであって,学長選考組織が,その権限と責任において決定すべきということについて改めて認識することが重要かと存じます。
それから,25ページ,学長の任期についてでございます。学長の任期,現在,国立大学法人,公立大学法人の場合には2年以上6年を超えない範囲ということが法定されてございます。私立大学については,この規定はございません。
この学長任期についてですが,安定的なリーダーシップを発揮できるためには,相応の年数の任期というものが必要になってこようかと存じます。とりわけ欧米のリサーチ・ユニバーシティについては10年以上務められる学長が増えているという状況もございますので,このような状況なども考慮しながら,安定的な運営が可能になるような任期の設定が重要かと存じます。
また,例えば国立大学の場合には6年間の任期の終了後に,そこでまた再度,意向投票を行うというようなケースもあるようでございますけれども,優れた業績を上げているという判断があるような場合には,学長選考組織が学内意向投票を行わないということも考えるべきではないかということでございます。
また,25ページの最後のところでございますけれども,学長の任期と中期計画期間が国立大学の場合に必ずしも一致しないようなケースがございますけれども,そこについては積極的な変更の手続を行っていってはどうかという御提案でございます。
26ページでございますが,学長の業績の評価でございます。先ほど学長選考組織,一過性の選考だけで終わらないで,学長の選任後もきちんと業務についてフォローアップをして,必要な支援を行っていくということが必要でございます。また,それは監事についても同様かと思います。
この支援を行うわけでございますけれども,それでもなお十分な業務執行が行われていない場合には,学長の解任ということも場合によっては学長選考組織が考える必要があるということでございます。
現在,解任については,なかなか想定されていないのか,内部規則等が十分整備されていないような場合もあるようでございますけれども,このあたりについても各大学で見直しをする必要があるのではないかというところでございます。
それから,4.学部長の選考・業績評価というところでございます。26ページの中段以降でございます。
学部長は,学部に関する校務をつかさどると法律で定められてございます。学部長は学部教員の代表者でございますけれども,同時に全学の立場から任命されるポジションでもございますので,全学の方針と学部の方針との間の調整役ということが求められてきます。
この学部長については,当然,学長のビジョン,あるいは大学全体の経営方針を共有していかないといけない。そういう人材を任命することが必要であろうと考えます。また,学部長の選任方法については,教授会での投票結果であったり,投票結果をそのまま尊重されたり,単に持ち回りで行われているような場合もあるようでございます。
この学部長についても,求められる職責に照らして,ふさわしい選考の仕組みが各大学で行われているのかどうかということを見直していただくのが必要ではないかと考えてございます。
27ページの5番,教授会の役割の明確化というところでございます。教授会につきましては,学校教育法第93条で,大学には重要な事項を審議するため,教授会を置かなければならないと規定してございます。ここは様々な御指摘がございますが,教授会の審議事項が大学の経営に関するような事項まで非常に広範に及んでいて,大学の学長のリーダーシップの発揮を阻害しているのではないかというような御指摘もあるところでございます。
この重要な事項については,大学の自主性を尊重する観点から,あえて詳細は規定せずに,各大学の広範の裁量に委ねている部分でございますけれども,この解釈を考える際に重要なところとしましては,そもそも教授会が学校教育法に基づいて設立されている機関であるということでございます。この学校教育法自体が教育研究に関する法律でございますので,当然,その法律に基づいて設置される機関である教授会については,その審議事項というのは教育研究に関することに限られることになってこようかと存じます。
28ページでございますが,とはいいましても,大学というのはそもそも教育研究を行う機関でございます。教育研究に関する事項と経営に関する事項を峻別するのも一方で難しい部分がございます。
むしろ問題なのは,直接責任を負う立場にない教授会の議決によって,学長や理事会の意思決定が事実上否定できてしまうという責任と権限の不一致ということではないかということでございます。また,そういうことを暗に追認するような形の内部規則等もある場合がございますので,教授会の役割について,内部規則を含めて総点検,見直しをきちんとすることが求められると存じます。
また,教授会については,特に専門的な知見を持った教員から構成される合議制の機関,属人ではなくて集団による公平で慎重な判断が求められているということがございますので,そこを踏まえますと,具体的な内容としましては,例えば教育課程の編成,学生の身分に関する審査,学位授与,教員の研究業績等の審査といったことについては,教授会の審議を十分考慮した上で学長が最終決定を行うことが望ましいと考えられるということでございます。
28ページの下の方でございますけれども,教授会の設置単位の再点検と書いてございます。教授会も様々なものがございます。学部・学科レベルのものから全学レベルのものもございますけれども,ほかにも教育課程編成委員会,教員人事委員会など,機能別に組織されているようなケースもございます。最も一番多いのは学部ごとに置かれている学部教授会といったようなものであると思います。
学部教授会については,学部ごとにいろいろなことで関係するということから,責任関係が分かりやすい一方で,学部が強過ぎて,例えば全学的な改革を学長がしようとしても,個別の学部の反対によって進まないといったような指摘もあるところでございます。
ただ,よく大学の自治ということが学部自治と同じように言われることもございますけれども,大学の自治ということは,基本的には公権力と大学との関係を杞憂したものでございまして,大学の中について,例えば学部に所属する全ての教員が意思決定に関与しなければいけないというものでは当然ございません。
必ずしも学部ごとに教授会を置かずに,より機能的な組織,教授会運営するということもできるようかと思いますし,また,全学的な事項については,全学的な審議機関,全学教授会等で審議することが適当な場合もあろうと思いますので,そのような様々な手法を活用していくことも重要かと存じます。
29ページからでございますけれども,教授会の審議事項の透明化ということでございます。教授会については,なかなか参加できる組織ではないということもございまして,一般の方にも何を審議しているのか,明らかでない部分がございます。もちろん,例えば学生の入学の判定でありますとか,不正行為等に対する懲戒でありますとか,人事に関することとか,公開すべきでない事項もたくさんあるわけでございますけれども,ここにも書いてございますが,例えば東京工業大学など,一部の大学では教授会の審議事項などをホームページ上で公表するというような動きも出ておりますので,こういうことについて可能な範囲で情報公開を進めていくということが期待されると存じます。
30ページの6.経営組織と教学組織の関係というところでございます。この経営組織と教学組織の問題につきましては,先ほどの教授会部分でも触れましたけれども,大学の教育研究に関する様々な事項が,どうしても経営事項と教学事項と両者にまたがってくるという部分が課題になってございます。
31ページ,国立大学法人の場合でございますけれども,例えば経営協議会と教育研究評議会で同じような事項がそれぞれ審議されているという御指摘も頂いております。そういう場合に,この運営に関して,特に経営協議会が外部委員が多いということもあり,開催頻度が低くて適時のタイミングで審議がなかなかできないという御指摘もございます。持ち回りの開催でありますとか,個別の意見聴取とか,運営方法について改善が必要な部分があろうと存じます。
また,この経営協議会,国立大学法人の場合には学外委員を2分の1以上としてございます。これは,学外者の意見をきちんと国立大学の運営に反映させるという趣旨かと存じますけれども,実際には会議への欠席等によって,会議の実態が学内委員中心の運営になっているという指摘もございます。
法律の趣旨を踏まえますと,要は学外委員の意見が経営にきちんと反映されるような運営が行われるように,委員の選任であるとか,会議の運営に配慮する必要があろうかと存じます。
31ページの中段以降,公立大学に関してでございます。公立大学の場合には設置主体である地方自治体の意向が大きく影響する部分がございます。学部,研究科の在り方だけじゃなくて,大学そのものの存立についても自治体のイニシアチブのもとで見直しが図られるようなこともございますので,安定的な教育活動が求められてこようかと存じます。
32ページ,学校法人の理事会と私立大学の教学組織についてでございます。この理事会に関しましては,学校法人,私立大学における最終的な意思決定機関と位置付けられてございます。例えば大学内の予算編成であるとか,学生の定数管理,学内資源の配分については,きちんと,最大限に大学が教育研究機能を発揮できるように担保し,責任を負ってございます。
理事会は,このような様々な決定をする際には教学組織の意向を十分に聴取することが必要でございますけれども,最終的には,その権限と責任において理事会自らが決定すべきところでございます。
一部には,学部教授会が拒否権的なものを持っているというような御指摘もございますけれども,基本的には権限と責任の一致の観点からはおかしいのではないかと思われます。また,逆に理事会が教育研究に関する事項について,例えば個別の学生の入学であるとか,卒業の審査,教員の審査といったようなことに関与するのも逆におかしく,基本的には教学組織の意見を尊重することも求められようかと存じます。
なお,法律上は,大学の学長が学校法人の理事として経営に参画する制度が設けられており,両者の調和が図られるような仕組みが設けられてございます。ほかにも,別途,定期の経営陣と大学執行部との意見公開会など,様々な手法があろうかと存じます。
33ページ,7.監事の役割の強化というところです。監事は,財務,会計ではなくて,教育研究,社会貢献含めて,あるいは大学のガバナンスの在り方も含めて,様々なことについて監査していくことが求められると存じます。
そのためには重要な会議の出席,資料提出,情報提供等,必要になってございますけれども,できる限り常勤の監事を配置することも重要かと存じます。
また,私立学校については,今,監事の機能については平成16年の法改正で大分充実したものになってございますけれども,国立大学法人等についても,これに倣ったような形で機能強化に向けた検討が必要になろうかと存じます。
33ページ,8.その他のガバナンス改革ということで,ファカルティ・ディベロップメント,スタッフ・ディベロップメントの推進ということを挙げてございます。
それから,34ページでございますけれども,人材の流動性の確保ということで,国内外を対象にした公募の導入でありますとか,様々な勤務経験,また,経営能力のある教職員の育成ということで,特にマネジメント能力の高い教職員の積極的な起用や大学団体等の研修,人事交流を通じた執行部人材としての育成。さらに,大学ポートレート等による積極的な情報交換の推進といったことを挙げさせていただいております。
以上が第3章でございまして,35ページからが第4章でございます。
第4章は,国による大学ガバナンス改革の支援についてということで,国が取り得る具体的なアクションについて記述した章でございます。
35ページ,制度改正を通じた支援というところでございますけれども,繰り返し御説明してまいりました教育公務員特例法の適用下で形成された内部規則の問題が一つございます。
各大学が様々厳しい中で,組織のスクラップ・アンド・ビルドであるとか,人事,予算等の大胆な見直しが必要になってくる。そういう中では,限られた資源を最大限に活用する観点から権限と責任の所在を改めて明確にすることが必要になってきます。また,権限のない組織が意思決定過程に関与することも適切でない。その観点から,仮に国の法令が改正等があれば,法令に適合しない内部規則については当然見直しを行っていくことが必要になってきます。
36ページでございますけれども,教授会については,先ほど申し上げましたように学校教育法93条によって教授会の審議事項とされている重要な事項について,特に専門的知見を持った教員組織による合議制の審議機関としての教授会の趣旨に照らすと,教育課程の編成,学生の身分に関する審査,学位授与,教員の研究業績等の審査といったことが具体的な内容であるといったことを明確するように,所要の法令改正を行ってはどうかという御提案でございます。
それから,次の○でございますけれども,例えば総括副学長職の設置であるとか,あるいはIR,入試,教務等に通じた高度に専門性の高い人材,高度専門職というものを設置してはどうか。あるいは事務職員も含めたスキル向上のためのスタッフ・ディベロップメントを義務化してはどうかといったことについて,法令改正を含めて検討してはどうかという御提案でございます。
また,学長の任期,あるいは選考方法,これらについても各大学の改革状況を踏まえながら必要な見直しを行うべきであるというふうに記述してございます。
さらに,こうした制度改正効果等を踏まえながら,将来的には,例えば学長と学部長の関係でありますとか,そのようなことについても必要に応じて関係法令の見直しを含めた検討を行っていってはどうかと書いてございます。
36ページの下の方でございますけれども,監事についてです。国立大学法人の監事について,私立学校のように監査報告書の提出でありますとか,必要な法令の整備を早急に行うことが必要であろうということを記述してございます。
また,37ページ,常勤監事が少ない中で,できる限り常勤監事の配置に努めるということが期待されます。将来的には,例えば一定規模の法人には1名以上の常勤監事を置くといったような,必要に応じて制度改正を含めて検討することも考えられようかと存じます。
37ページの予算を通じた支援でございます。この予算については,主に三つの手法があろうかと存じますが,1番が学長が自由に使える裁量経費の拡充という点でございます。2番目が大学ガバナンス改革を含む教育研究活動の支援。そして,3番目が補助事業の要件にガバナンス改革を求めていくというようなやり方でございます。
学長裁量経費につきましては,その裁量の確保はなかなか難しいという状況でございますが,特に間接経費の拡充といったことが必要になってこようかと思います。この間接経費の効果的な学内の配分を通じて,学長がリーダーシップを発揮できると考えます。特に,その際には間接経費の趣旨について,基本的には研究機関全体として管理する経費である。要は大学全体として管理すべき経費であるということについて,教職員全体が再認識することが必要かと存じます。
また,かつてのGP事業のようにプロジェクト型予算の場合には,特に柔軟な人事を行いたいとか,学長の裁量が高まる部分もございますので,こういう事業についても重視していくことを考える必要があるかと存じます。
38ページの中段以降でございますが,大学ガバナンス改革を含む教育研究活動への支援ということでございまして,現在,国立大学においては,ミッションの再定義等も行われているわけでございますけれども,このような中で全て取組をするような大学に対して,国立大学法人運営費交付金であるとか,私学助成といったスキームの中でも重点的なガバナンス改革に対する支援というものが行われている部分もございます。
それから,39ページでございますが,補助事業の要件として,例えば地(知)の拠点整備事業,大学COC事業等におきましては,支援の要件として,学長を中心とした事業実施体制を整備していることであるとか,あるいは全教職員へのFD・SDの徹底というようなことを要件として求めてございます。こうした要件化を通じてガバナンス改革を進めることも考えられると存じます。
さらに,このようなガバナンス改革について,国立大学等における中期目標であるとか,自己点検評価,あるいは監査等によって担保していくことが重要かと存じます。
特に国立大学につきましては,第2期の中期目標期間においてもしっかりと中期計画に反映していくとともに,第3期の長期目標においては,内部規則の見直しを含めたガバナンスの改善に関する目標を定めて,中期計画をしっかりと行っていくことにしたいと存じます。公立大学についても同様でございます。
また,監事による業務監査に際しても,ガバナンス体制についてチェックをしっかりとしていただいて,もし適切な体制がない場合には監査報告書の提出であるとか,理事会等への報告といった措置が求められるということでございます。
国立大学法人についての監事機能の強化のために,できる限り早期に所要の法令改正ということを書いてございます。
また,大学団体との協力につきましても,執行部人材等を対象にした研修でありますとか,新任学長・副学長向けの研修,あるいは学部長や将来の学部長補佐役などを対象にした研修といったことも重要かと存じます。
42ページが大学で行うべきガバナンス改革と国が行うべき改革への支援ということを対照表としてまとめたものでございます。
43ページが第5章社会による大学ガバナンス改革の支援についてということでございます。様々な社会的な課題がある中で,大学に対する期待というのも非常に高まってございます。特に大学については様々な形,例えば学長の選考会議でありますとか,監事でありますとか,理事会でありますとか,いろいろな形で地域とのつながりというものがございます。このようなつながりの中で,きちんと社会からのサポートを受けていく。その活動についても理解していただいて,サポートを受けていくことが必要なのではないかということを書いてございます。
45ページ,第6章おわりにという部分でございます。大学には伝統的にオートノミーが認められてきたところでございますけれども,そのオートノミーというのは,あくまで大学自身が社会的にきちんとした責任を果たしていっているということが前提でございます。教員一人一人が頑張っていることが前提でございまして,確かに個別に見れば,大学の先生方,学長先生方,教員の方々が頑張っているという部分があるとしても,今後は,特に学長のリーダーシップのもとで,大学が組織として全体が改革に取り組んでいくことが必要であろうかと思います。そうすることによって,また教員一人一人の顔が見えてくる部分があろうかと存じます。
長くなりましたが,こちらからは以上でございます。
【河田部会長】 ありがとうございました。極めて簡にして要を得た御説明を頂いたと思います。きょうまでで6回討論いたして参りました。が,その5回分のことを非常に幅広く,そして深く,論ずべきところはきちんと書いてあると,私も頂いて通読いたしましたけれど,そのような印象を抱いております。
1,2のところは飛ばしまして一番大事な,3.大学のガバナンス改革の推進についてという15ページ以降のところで,各委員から,抜けている点,あるいは,ここをもっと強調すべきだ,ここは書いた方がいいとか,様々な御意見があると思いますので,御遠慮なく積極的に御発言頂ければ有り難いと思います。
【上山委員】 私も,ここに参るまでに読ませていただいて,本当によくできていると感服いたしました。
まず,全体としてガバナンスの重要性ということ,現在,それが求められているということのメッセージをもう少し付け加えてもいいかなと思いました。それは,国立大学を中心とした大学のシステムが今疲弊している,社会の要請に対応できていないというメッセージだけではなくて,つまり,大学の問題を正面に立てるだけではなくて,むしろ大学をめぐる環境そのものが,この30年間ぐらいに大きく変わってきている。したがって,このガバナンス改革は,それに対する対応として必然的なものであるというメッセージがあってもよかったのではないかと最初に思います。
つまり,ガバナンスというとコーポレート・ガバナンスが最初の方に出てきますけども,企業と同じようなガバナンスの形が必要だということが前面に出てきても,それは企業と全く同じではないということを,ここに書かれてあるそのとおりなのですけども,むしろ高等教育をめぐる環境が,アメリカでは1970年代以降に大きく変わって,それが顕在化してきているのが80年代後半から90年代にかけてである。それは,この一番後ろの方に産学連携とか,あるいは企業との共同研究とか,特許の問題であるとか書いていますが,つまり,社会の中で大学が果たすべき役割が大きく変わってきているということが必然的にガバナンスの問題に関わっているというメッセージがどこかにあってもいいのではないかと思いました。
日本の国立大学は,改革してちょうど10年ですが,この10年間,非常に不幸な時代だったと私が思うのは,高等教育改革と産業政策の改革が同時並行して一気に起こってしまった。アメリカで80年代から90年代にかけて推進されてきた高度知識基盤社会に対応するような産業の育成に求められるタイプの大学というものが70年代後半ぐらいから起こってきたわけですけど,それが今の場合は残念なことにちょうどこの10年間に集中して起こってしまったという不幸があると思うのです。
そういう意味では,必ずしも大学そのものが問題であったわけではなくて,大学の置かれている環境が変わってきたというメッセージがどこかにあってもいいのではないかと思いました。
アメリカでも1970年代から80年代にかけて,20年間ぐらいかけて大学のシステムの変化ということが起こって,そこの中でそれぞれの大学がもがき苦しんでいろいろなものを作ってきたわけで,我々はその過渡期にある。したがって,ガバナンスが求められるというようなメッセージがもう少し前にあってもいいかなと思いました。
それと対応することですが,10ページ以降にコーポレート・ガバナンスとの異同ということが書かれていて,いわばコーポレート・ガバナンス的なガバナンスの考え方を大学の中に入れなければならなくなったのは,文字どおり,先ほど申し上げましたように大学が例えば産学連携とか特許とか商業化の問題に直接対応しなければならなくなったために,企業的なガバナンスの考え方を入れなければならなかったのだということです。すなわち,このガバナンスの問題は大学を改革するためというよりは,むしろ公共性のある大学を守るために大学自らがガバナンスを作っていかないといけないという背景だったのだと私は理解しているわけです。
ですから,恐らくもう少し手を入れられればいいと思うのは,余りにも大学が悪いという表現,企業的になるべきだというメッセージより,むしろ,大学というものの本来のオートノミーな,あるいは重要な役割を守るためにガバナンスの改革が求められている。企業的なものもどこかで入れながら,それを本来の大学のあるべき姿とちょうどタイアップするような形で,このガバナンスを考えるべきなのだというメッセージがもう少し前半のところにあればいいのではないでしょうか。大学の人たちがこれを読んだときに受け止めるイメージは非常にディフェンシブで,我々は常に攻撃されている,変えるべきだというような形で受け止められるよりも,むしろ本来の大学というものの公共性のある,非常に高い学識の拠点としての大学を守るためにも,このようなガバナンスの考え方を入れなければいけないのだというメッセージが最初に少しあってもよかったと全体として思いました。
したがって,どこかでやはり知識基盤社会とか,あるいは産学連携とか,企業と関わる関係としての大学とか,そういうものがもう少しちりばめられながら,この話があってもよかったと思いました。これが1点です。
また,部会長がおっしゃいました本題のところで言うと,私自身は,大学のガバナンスに関してはやはり予算の問題が大変大きいと思っております。今,国立大学はかなりのところ,退職された先生方のポストをある程度本部に召し上げるような形で大学の改革を行っているのが実情だと思うのですが,実際のところは,それを形のものにしていくための本部が使える資金が本当に限定されている。ただ,それを学内のスクラップ・アンド・ビルドで,選択と集中でそれをどこかから引き剥がしてきてやるということは,恐らく現状ではとても難しい。
そういう意味では,こういう組織の中に追加的な大学本部への資金投与の形を模索すべきだというような表現が例えば22ページあたり,予算,リーダーシップとか,あるいはもう少し後半に行けば37ページあたりの予算を通じた支援のあたりに,そういう現状を踏まえた上での大学本部への資金投与の形態を模索すべきということが触れられていてもいいのではないかと思いました。
例えば競争的資金に関して言うと,財務省は,競争的資金は一貫して伸びている。運営費交付金は下がっているけども,この15年か10年ぐらいの間で競争的資金に関しては3倍ぐらい伸びている。ほかの社会保障費と比べてはるかに高等教育は恵まれているという言い方をずっとなされているわけですが,この競争的資金というものの扱い方を財務省にもう少し物を言ってもいいのではないかと思うのは,COEのような形で個別のプロジェクト型にお金を競争資金として流すよりは,大学がリーダーシップを持つ学内の研究教育に関するプロジェクトとして各大学が使えるような,大学そのものに対する競争的資金という形への転換があってもいいのではないかとかねがね思っているのですが,そういうメッセージがもう少しあると,同じ競争的資金の金額であっても,大学に対する学長,本部のリーダーシップを高めるような形の資金配分の形態ということがメッセージとして出るのではないかと思いました。
そういう意味で,競争的資金の在り方の見直しとか,大学本部の予算の拡充との連動の仕方とか,そういうことが37ページとか,先ほど言いました22ページあたりのリーダーシップのところにもう少しあると,メッセージとしては強くなるのではないかという印象を持ちました。
【河田部会長】 ありがとうございます。非常に有益な御意見でした。私も最初の「はじめに」の書きぶりがいささか外圧を強調して受け身的で,防御するような印象を受けますので,確かに今,上山委員が言っていただいたように,大学を取り巻く社会環境によって大学を改革せざるを得ないという,時代背景の方を強調するということでいかがでしょうか。
【北城委員】 全体として,大学改革の大きな方向付けを上手におまとめていただいたと思います。35ページには,戦後70年にわたって教育公務員特例法に基づく,教授会を中心とした大学運営が行われてきたが,これを変えなければいけないという趣旨を非常に明確に書いていただいているので,全体の方向としてよくおまとめていただいたと思います。その上で個別のことに関して,幾つかの論点を述べたいと思います。まず12ページの上の方に「特に教授会は」との書き出しで,「教授会を中心としたボトムアップで意思決定が行われるのが基本と考えられる」とある一つ目の○ですが,これは28ページの三つ目の○にも似た文章があって,こちらでは「学長が最終決定を行うことが望ましいと考えられる」と書いてあります。12ページの方で「ボトムアップで意思決定が行われるのが基本」と最初に規定しまうと,「だから教授会が決めるべき」というように受け取られてしまいます。
特に学生の身分に関しては,今後は多分,入学者選抜等も関係すると思いますが,今まさに大学入試改革に関する教育再生実行会議の提言がなされているところです。私も入試改革の方向付けはいいと思うのですが,選抜性の高い大学では,成績がいい学生を発展レベルの達成度テストで選抜しても,それでは十分な選抜効果が得られず,その結果,個々の大学が改めて入試をやるようなことになってしまいかねない。これでは,今回の改革の趣旨が生かされないと思います。実際の入学者選抜の仕組みを教授会がボトムアップで決めるということになると,結局は現状と同じになってしまうのではないかと危惧します。大きな方向付けは出しても,実施は教授会が決めるということになると,今のまま改革が進まないリスクがあります。私はここでは教授会がボトムアップで決めることが基本だと書くべきではないと思いますし,28ページの表現の方がいいと思います。
それから,教育課程の再編に関しても,やはり教授会のそれぞれの立場で反対意見が出ることも踏まえると,それを全部ボトムアップで決めるというように書くべきではないと思います。今,日本の大学の多くでは,先生が教えられるものを教育課程の中に入れていくという形になっています。そこから教育課程全体を編成するということになると,教授の中から反対意見が出ることも考えられるので,12ページの一つ目の○は,28ページの文章のように,審議をし,議論があっても最後は学長とか学部長が決める,というような表現にしていただいた方がいいのではないかと思います。
それから,その下の方にアメリカやイギリスの例が書かれていますが,これらの記述を見ると,教授会は理事会から権限を委譲されているのであって,教授会が自ら権限をもって決めているのではありません。理事会が教員人事とか学位とか教育課程に関する権限を委譲しているのですから,それが適切でなければ理事会が取り上げるということもあっていいわけです。もともとどちらに権限があるかというと理事会とかカウンシルに権限があり,アカデミックなことについては権限を委譲しているということです。これらを踏まえて,理事会と教授会のどちらに責任があるかということをはっきりした形で全体をまとめた方がいいと思います。
それから,18ページの上から二つ目の○のところに,「学長がリーダーシップを発揮して」とあります。これはそのとおりだと思うのですが,それに続く「教職員に学長のビジョンを的確に伝え」について,現実は11月6日の日経産業新聞のコラボ産学官が取り上げた会議で,ある学長から改革のプランはあるが,「ここで話すと学内の抵抗があるので話せない」という話がありました。要するに学長にはビジョンあるけども,それを言ってしまうと,教授会で承認されていないことを学長が言ったと反論されるので,学長としてはビジョンを話せないとおっしゃっているのが現実です。こういう状況では,ここに書いてあるような学長のリーダーシップによる大学改革は非常に難しいのではないかと思います。そういう意味で,教授会に権限があるような表現はできるだけやめた方がいいと思います。
それから,21ページでは人事に関する学長のリーダーシップについて,配置と選考を取り上げています。この選考に関してですが,ある教授がご自分の学問分野で特定の方向に傾いていて,学部長や学長がある教授を選ぶべきだと考えた場合,今のように教員組織が推薦した人だけを選ぶという形ではなかなか大きな改革はできないと思うのです。今どきマルクス経済学ではないでしょうが,必ずしも教員が選べばいいということではないのではないか。もちろん学長や学部長が全て自分で決められないので,多分,教授会にいろいろな意見を聞くと思うのですが,決めるのはどちらかということをはっきりしておいた方がいいと思います。
ここで書いてあるように,「教職員の意見を尊重することが求められる」とすると,文字通り尊重しなければいけないということになります。意見を聞くことは必要だと思いますが,決めるのは学長,学部長であるというのをはっきりしておいた方がいいと思います。
それから,24ページの○の二つ目にある教育研究評議会と経営協議会についてですが,学長選考委員会はこれらから作られます。教育研究評議会に属する学内委員は今の規定では半数ですが,半数にしてしまうと,学長選考委員会の委員には学長に選ばれた方が半分入っていることになります。25ページ以降に学長の再任等は学長選考会議等が決めると書いていますが,その再任を決める学長選考会議に,今の学長が選んだ委員が半分も入っているというのは客観性の観点からも問題があるので,私は学外委員を過半数にすべきだと思います。25ページの上の一つ目の○には,「大学の多様なステークホルダーが参加するように」と書いてあるので,経営協議会の委員にするかどうかは別として外部の方か,あるいは経営協議会の中の外部委員を登用すべきだと思います。学長選考会議の過半数が学外の人でないと,客観的な判断はなかなか難しいのではないかということです。
それから,27ページの上のところで,「学長や理事会が学部教授会に複数の候補者を示すように求めたり」と例示しているのですが,学部長の選任に関しては,基本的に学長が行うというだけでいいと思います。どう選任するかは学長が考えればいいわけで,多分,学部の教授会等に意見を聞くと思うのですが,今の記述では学部教授会から今いる人を中心とする候補者が出てきて,その中から選ばなければならないことになります。これでは学外の方を選ぶとか,候補に入っていない方を選ぶことが非常に難しくなってしまうので,学部長の選任は学長が行うとするだけでいいと思います。
それから,教授会の役割を明確化する観点で学校教育法の93条に関してですが,「重要な事項を審議するため」とされている審議は,決議ではないということです。このことは文部科学省もずっと言っていらっしゃるし,大学にもそれは伝わっていると思いますが,過去10年間かかっても,教授会がずっと決議機関として機能している実態は変わりません。これから,教授会は決議機関ではないということを文部科学省から国立大学に指示していくことになると思うのですが,私立大学まですぐにその指示が行く届くわけではないと思いますし,国立大学の中でも,それが徹底するまでに時間がかかると思います。
今求められているのは早い改革ですので,私は,ここで教授会の役割を明確に,例えば学校教育法の93条に「大学には学長,学部長の諮問機関として教授会を置く」と書くぐらいが必要ではないかと思います。要するに学長や学部長が自分たちの意見をまとめるに当たって,教授会の意見も聞くということでいいのではないかと思います。審議は決議ではないということを明確にするために,教授会は諮問機関とするというように,明確に法律を変えていただいた方が大きな価値観の変更ができると思います。
それから,31ページですけれども,ここに経営協議会と教育研究評議会の役割が書いてあります。私も国立大学の経営協議会委員をしておりましたが,経営協議会は開催頻度が低いと感じています。この経営協議会にタイムリーな判断を求めることは無理があるので,経営協議会の大きな役割として学長の選考及び学長の運営に関する評価等とすべきではないかと思います。大学の大きな運営方針を決めるときには関与するとしても,基本的には監督機関とするべきです。実際の執行は役員会や理事会等の執行側が行うものであり,経営協議会をタイムリーに開催して,そこで意思決定するという仕組みを前提にしてはうまく機能しないと思うのです。
その上で,三つ目の○に書いてある「経営協議会の学外委員を2分の1以上とし」に関してですが,実際にはかなりの大学でこれが2分の1となっています。半数を超えている国立大学も何校かありますけれども,ここに半数以上と書いてあるからでしょうか,ちょうど半分が学内となっています。私も参加した経営協議会でも,学外委員は経営者等が多いので,大体何人か欠席します。これでは常に学内の方が中心になってしまいますので,ここは学外委員を過半数というように明確に書くべきです。多分,半分以上ということは,要するに学外を多くしなさいという趣旨だったと思うのですが,以上の「以」を使って半分になっているので,明確に学外を過半数とするということでいいと思います。
あと,36ページ。これは質問ですが,下から二つ目の○に,「関連法令の見直しを含めた検討」とあります。これは実際どんなことを検討されるのかを教えていただきたいと思います。最後に45ページですけれども,「おわりに」の一番上の段落の「したがって」以下に,「株式会社や官庁の組織とは本質的に違うということを十分理解しなければならない」と書いてあります。しかし,今の議論は,どちらかというと日本の株式会社の議論よりも,アメリカの大学のガバナンスの仕組みとか,ヨーロッパの大学の一部で行われているような大学の運営の仕組みと日本の大学はどう違うのかということです。こういう文章を書くと,それを理由に,だから学校は違うのだというように,外部の意見を断るときに使われてしまうので,殊さらここに書く必要はないと思います。
以上です。
【金子委員】 今,北城委員がおっしゃったことはかなり多岐にわたっておりますので,体系的に御意見を申し上げることはなかなか難しいのですが,ただ,1点とにかく申し上げておきたいのは,政府と大学,あるいは法律と大学との関係です。基本的に日本国憲法の下では,学術の自由は保障されています。大学に対して法制的な規定があるのは,大学は基本的な機能を日本の学術制度上,学校制度上の認められている大学としての機能を果たすことを保障するというのが基本的には法律の立場でありまして,いかに効率的にするとか,社会的な要求をいかに達成するかという,そのものについて法律上で規定することはあり得ないと私は思うのです。
特に私立大学については,戦後,それが一貫した原則でありまして,学校教育法の最近の改正によって明らかに法令基準に対して違反している大学に対しては閉鎖命令を出すことはできる。でも,このような原則が認められたのはつい最近でありまして,それはそれで重要だと私は思いますけれども,明らかに法令に対して違反している場合です。基本的には,私立大学というものは,どう運営するか,どのような教育を行っていくかについては独自に決める権利がある,あるいは内部の組織についても,本来,大学が決定すべきものだと私は思います。
それが効率性がない,あるいは十分に急速に動いていないからといって,それを法的に事細かく規定するのは,基本的に日本の大学と法令との関係に関しては,その原則を逸脱していると思います。そこは諸外国の例を見ても,具体的な大学の組織の在り方については法律で細かく規定している例はほとんどない。これは,大学が自分で決めて,しかも,大学は自主的にそのような仕組みを作っていくときに,かなり標準化されていくということは事実でありますし,望ましいことだと思いますけれども,法律上規定しているわけでは必ずしもありません。
国立大学についても,それはある程度認められていることで,それはやはり原則的に大学というものが非常に多様な知識の集まりであって,官庁や普通の企業のように特定の目的に対して合理化するというような運営が基本的に難しいですし,長期的には,それが機能的ではないということを一般的に認められているからだと思います。
そういう意味で,私は,この部会で何が望ましいかということを議論することは必要だと思いますし,そういう意見を述べることは重要だと思いますけれども,法令上にそういう点を余り細かく規定することは,本来の原則を逸脱しているのではないかと思います。
以上です。
【北城委員】 法令で規定すると私はどこにも言っていません。変えるとすれば学校教育法の93条だけは変えるべきだということです。あとは,私立大学は私立大学で独自の運営をされてもいいと思います。ただ,ここには,私立大学といっても国からの助成金を交付する際に,文部科学省としてどういうところを重視して助成金を配付するとかは書いてありますが,法令を変えるべきだと言っているところはどこにもないと思います。私は,基本的に大学は学長を中心として運営すべきであるということだけを言っているだけです。あとは各大学が独自に決めていけばいいと思います。
【金子委員】 しかし,例えば経営協議会でメンバー2分の1以上にするとかいうのは,これはかなり明確に規定になるのではないですか。
【北城委員】 それもそうですし,規定を変えるとしたら学校教育法の93条と経営協議会の学外委員を過半数とするところです。
【河田部会長】 まだもう一回,最終回の部会がありますけど,一応,部会としてこういう意見が出たということを明示することは必要でしょうし,それを法令で変えろと書くかどうかは,そこは我々の知恵の出しどころだと思いますので,注を付けて,こういう意見も出たということを明記すればいいのではないかと思いますので,そこのところは後で最終的に詰めさせていただければいかがかと存じます。
【樫谷委員】 今のお二人の御意見を聞いていまして,今考えなければいけないのは,大学教育はこれでいいのかというところがポイントになっているわけです。大学の自主・自治というのはよく分かるのですが,今,そこが問題にされているわけです。それは皆さん,自由に考えなさいというのはいいのですけど,ほとんど変わっていないのです。どのようにしたらいいのかというところが今ポイントなのです。
それは,我々納税者なり,あるいは一般人から言うと,理屈はともかく変えてもらいたい,必要であれば法律も変えてもらいたいというのが我々一般人の考え方です。確かに建前で,大学とはこうだというのはあると思うのですけど,とは言って,では,そのとおりになっているのかといったら,全くなっていないとは言いませんが,かなり厳しい状況で,国際的には負けてしまうという非常に厳しい環境の中で,建前は大事で崩してはいけませんが,やはりもう少し書き込んでいかないといけないのではないかというように思いまして,北城委員がおっしゃったようなところは,よく議論した上ですけど,もう少し法律の中でも書き込めるものは書き込んでいただきたいと思います。
監事も,私立学校では監事は学長が任命する。では,任命された人の監査はできるのか。これ,本質論なのです。任期はどうなのだということになりますから。書き込むべきはしっかり書いていただかないといけない。
自治で言うなら,もっと情報公開を徹底しなさいということももっと書き込まないと,これは自治で秘密ですということを言うこと自体がおかしいわけです。だから,書き込むべきはしっかり書き込む。しかし,本質は本質としてしっかり守るということが大事ではないかと思います。
【河田部会長】 ほとんど変わっていないというのではなくて,ここで明らかになったように国立大学もこういう形でいろいろ変えている,現行の法の中でこれだけ努力している。私立大学の場合も,日本私立学校振興・共済事業団の作ったアンケートによると,学長選挙についても3分の1は意向投票じゃないとか,そういう形で変化は出ていますので,確かに企業の方から見れば遅々たる,ゆっくりかもしれないけど,変化はしているわけで,そこをもう少し頑張れというエールを送る形で書けばいかがでしょうか。
【樫谷委員】 前回御説明があった諸外国のガバナンスについてですが,諸外国から見て,ガバナンスの在り方もかなり違います。これを誰が変えるのかということです。自主的に変えてくれれば申し分はないのですが,変わってないではないですか。我々から言うと,民間人だから,あるいは企業人だからと言われるかも分かりませんが,正直言っていらいらすることばかりです。そういうものだと思っていただかないといけないということもよく御理解を頂きたい。
【石原委員】 大変多岐にわたる議論をきちんと整理してまとめていただいた報告書だと思います。国立大学も私立大学も含めて,大学は非常に多様性があり,ガバナンスの問題でも独裁とガバナンスの区分が非常に難しい状況が生ずる場合もあると思いますので,そのチェック機能がやはり必要かと思います。大学の多様性は日本の高等教育の強みでもあると私は思っておりますので,この多様性を総合大学の大きな大学の在り方と,小さい,地域に密着した国立大学,それぞれが自分のミッションを生かしながら,できるだけ自分たちで自律的にできるという支援体制や方策について,ここでいろいろと議論したことをもっと社会にアピールしたらよろしいかと思います。
質問ですが,18ページに学長,所属する教職員に対する指揮監督権が与えられているのは事実ですが,任命権と言わないのはなぜでしょうか。普通,人事に対する任命権,指揮監督だけでなく任命権はどういう位置付けになっているかということと,それから,36ページでございますが,監事についてのところ。36ページの下から4行目ですが,前にも言いましたが,監査報告書の提出というのはどこに出す報告書でしょうか。
と申しますのは,今どこの国公立大学法人の監事もそれぞれ年間計画を立てて,監査したことは報告書,あるいは意見書という形で,学長及び役員会に提出,あるいは,それについてのコメント,全年度に関してどういう対応を大学がしたかということを把握しております。監査報告書の提出という趣旨とどこに提出するのか。それから,関係機関への報告義務というのは,具体的にどこを意図しているのかを教えていただけたら大変有り難いと思います。以上でございます。
【白井大学振興課課長補佐】 国立大学については担当課からお答えさせていただきたいと思います。
18ページの指揮監督権の部分でございますけれども,ここは学校教育法に基づく学長の権限を書いているところでございまして,学校教育法上は所属する教職員に対する統督権ということになってございます。国立大学の場合ですと学長が経営者を兼ねていることになりますので,国立大学法人法で任命権を持っているということで,ここでは学校教育法に基づく指揮監督権だけを書かせていただいているということになります。
【河田部会長】 それから,36ページの一番下の「また,監事についても」のところの3行目で,監事の報告書の提出先,関係機関への報告義務,つまり監事はどこに,誰に対して報告するのかという話ですが。
【里見大学振興課長】 こちらも国立大学法人支援課に答えてもらいますけれども,その前に北城委員から,その1個前の将来的には学長と学部長の関係についても関係法令の見直しを含めた検討という御質問がありましたが,参考資料でお示ししておりますように,学校教育法の92条の3項は,「学長は校務をつかさどり,所属職員を統督する」と書き,第5項は,「学部長は,学部に関する校務をつかさどり」と規定していますが,この二つがどういう関係にあるのかということが学校教育法上明らかでないということについての問題意識を示したものでございます。
【平野国立大学法人支援課課長補佐】 国立大学法人支援課でございます。
まず,監査報告書の提出先ということでございます。きょうのペーパーの方にも独立行政法人改革の動向を踏まえてとなっているところでございますけれども,基本的には監査報告書は学長宛てに,法人の長に対して出すといったイメージが一つでございます。
こちらの方に至るところの報告義務というところがございます。これは,今後,政府の方で今,独立行政法人改革の検討がされているところでございますので,この場で確たるこういうことだということはなかなか申し上げられないところでございますけども,過去提出された法案の例を参考に申し上げますと,役員などが不正の行為をした場合については任命権者に対して報告するといったイメージでございますので,理事などの場合は任命権者である学長,学長の場合は大臣ということになっているところが,今の想定でございます。
ただ,ここは政府の方で全体として議論があるところだと思ってございます。
【黒田委員】 どうもありがとうございます。この資料2は,大変よくまとめていただいていると思います。先ほどから話がありましたように,大学へのメッセージというのは,先ほど上山委員が言われたように,もう少し,なぜ今ある大学が改革しなければならないのかという根本的背景が抜けているような気がします。日本の社会の大きな変動とそれについて大学が変わらなければならないということ,その辺がまだ大学の中に浸透していないから,今まで同じような運営をやってきているというわけですから,その辺のことを少し付け加えていただくと有り難いと思います。
それから,学長のリーダーシップとか大学のガバナンスのことを書いてあるのですが,一番重要なことは学長のマネジメント力,学部長のマネジメント力が問われていることだろうと思います。そこがしっかりすれば余り法改正をしなくても,今の法体系はやれることになっていると思うのです。それがしっかりしていないので,教授会万能のような格好になってしまうということだと思うのです。
ですから,この教授会万能を根本的に直すときには,やはり北城委員が言われたような改正もしなければ大学人は動かないかと思います。動かないから何とか動かそうということだろうと思うのです。動いてくれれば,そこは変えなくてもいいわけです。別に教授会万能ということは法規制でないわけですから,最高の意思の決定者は学長であるわけですし,私立大学の場合は理事長にあるわけですから,そこが全ての権限を持っているわけですから,やろうと思えばやれるわけです。だけでも,それが変わらない。そのことを何としても変えたいということであれば,ここの報告の中で,大学が本当に変われるような内容にしていただきたいと思っています。
それから,33ページの監事の役割の強化,ここの書きぶりが少し足りないという感じがします。そもそも大学の監事というのは何をやるのかということをしっかりと書いていただきたい。今までは,監事というのは財政面しか見ない,教学に対しては全くタッチしなかったわけですから,それが変わったということをはっきりと打ち出しておいていただきたい。教学の内容,大学を変更させるときの監事の役割,そういうことも少し書いていただければ意識が変わるのではないかと思いますので,よろしくお願いします。
以上です。
【河田部会長】 ありがとうございます。三つの点をきちんと御指摘頂きまして,ありがとうございました。
【田中委員】 この会議は本日6回目で,今までの会議を通しましても学長のリーダーシップの強化ということは随分言われてきたことで,特にどこの部分をどうしていただきたいということではないのですけど,考え方として学長のリーダーシップを強くすることについて,私の意見も金子委員や黒田委員に割と近いと思うのですけども,学長のリーダーシップを強くすると大学が必ずよくなるという保証はないと思っております。私も幾つか,今自分が勤めている大学以外にも随分小さな大学も,また,海外の大学にもおりましたので,いろいろ見てまいりましたけれども,学長が間違うこともあるわけです。非常に小さな大学で優れた学長がいるところは非常にうまくいくわけですが,小さな大学で学長がワンマンで間違ったときに非常に悲惨な結果になることがございます。これ以上権限を強めるような法令改正をすることは非常に危険性を招く可能性もある。いわゆる学長の暴走を止めるガバナンスがなくなるということなのです。
やはり権限と責任の一致が重要だということは,ここでも御指摘があるわけですけれども,教授会が教員を雇い,カリキュラムの編成権を持っていて,失敗しても責任を取らない。それが学長の責任になっているということです。
逆にもし学長が人事権を持つなり,決めるならば,失敗したらば学長が責任を取る必要がある。そこのところが明確にされない以上,いわゆる暴走したままで終わる大学が出てくると思います。ですから,学部教授会の権限が強いならば,責任をそこに持たせる必要があろうし,逆に学部教授会ではなく学長に権限があるならば,理事会が責任を取らざるを得ないということを明確に規定する必要があるだろうと思います。法令というよりも,いわゆる暗黙のルールかもしれませんが。
金子委員も御指摘のように,例えばプロボストの権限もイエールとコロンビアとハーバードでは非常に異なっておりました。オックスフォードは全く違っておりました。オックスフォードの社会科学では,完全にデパートメントに権限を委譲していました。そのかわり潰れるなら潰れろというやり方,潰れたところは1校もないと言っていますけども,沈むも昇るも自分たちの責任だとしています。そこまで各学部を信用するかどうかというのは各大学のやり方だと思いますけれども,そこのところを明確にせずに学長の権限だけ強めるのは危ないという気がしておりまして,やはり権限と責任の一致,それから大学をよくするという価値観を教職員が共有することの重要性。何をもって大学をよくしていくというのは,要するに優れた教員が優れた教育をし,研究するという価値観を共有することだと思うのですけども,それを明確にしていかない限り,一方的に学長の権限だけが強まったのでは,うまくいく大学もあるかもしれませんが,失敗する大学も出てくると思っています。特に失敗したときの責任の取り方を明確にする必要があろうかと思っています。
【小林委員】 私も,今の田中委員の意見と,それから金子委員の意見には同じ大学の教員としては非常に賛成するところがあるのですけれど,やはり大学と企業は違うという大前提に置かないといけないということはあると思います。
ただ,なぜアメリカの大学が,コーポレート・ガバナンスと大学のガバナンスが違うかということを強調するかというと,コーポレート・ガバナンスのいいところも取り入れたいという要求があるわけで,それは先ほど来出ているようにスピードです。なぜスピードのある意思決定ができるかと言えば,専門家がきちんとした経営をしているからです。大学の場合には,そういうことはないわけでありまして,全てとは言いませんが,ほとんどのメンバーは経営の素人です。素人支配しているというのが大学の大きな特徴なわけで,これは理事会においてもそうですし,国立大学で言えば役員会もそうですし,ほとんどが素人で経営を行っているのが大学という組織体の非常に大きな特徴です。
ですから,素人だけで経営をどうするかというところでアメリカの大学が持ち出してきたのがサポート体制の充実ということになるわけで,素人をサポートする体制が極めて充実していることがアメリカの素人による支配を支えているという構造になっているわけです。
ですから,それなしに素人が,全く専門性がなく経営を行ってしまったら,それは先ほど田中委員が言われたように暴走することもあるでしょうし,とんでもない方向に行くということがあり得るわけです。
そういう点からしますと,日本の大学が十分なサポート体制を持っているかというと,私は非常に疑問だと思っていまして,この素案は非常によく書かれていると思います。その辺についても非常に気配りされておりまして,サポートの重要性というのがあちらこちらにちりばめられています。
例えば学長選考会議についてのところで,学長選考会議が学長をサポートするということが明確に書かれているわけですけれど,そこのところをもう少し書いていただいてもいいと思います。つまり,アメリカの理事会は学長を選んだ以上は非常に責任があるわけで,その学長が失敗すれば理事会の責任でもあります。実は国立大学の学長選考会議も同じ問題を持っているわけでありまして,学長を成功させるためにサポートするというところをもう少し書き込んでもいいのではないかと思いました。
23から26ページあたりまで同じようなことがずっと書かれていると思いますが,学長選考会議についてもそうですし,それから,学長についてのサポート体制という点についても書かれていますが,これについても特にスタッフの養成が重要だということで,19ページのところに非常に細かに,こういうスタッフが要るということを書かれておりますけれど,このあたり,なぜ要るのかということをもう少し明確に書いていただくとよいと思います。今言ったサポートのためには,このような専門性のあるスタッフがどうしても要るということを書いていただければと思います。
それから,理事会についても前回申し上げて,32ページから個別の項目として理事会を書いていただいたのは有り難いのですけれど,ここでも,今申し上げたように理事会にはサポートするスタッフというのが非常に重要な役割を果たしている。国立大学で言えば役員会にあたると思いますけど,そういうことを明記していただければと思います。
それに関連して言いますと,今言いましたスタッフをどうするかというのが非常に大きな課題でありまして,やはり専門性のあるスタッフが非常に少ないというのが日本の大学の大きな問題であると思います。
併せて,特に国立大学について言いますと,大体2年ごとに替わってしまうという問題がありまして,これではジェネラリストは育てられるかもしれませんけど,スペシャリストとしての専門スタッフを育てることが難しいという人事異動上の問題があります。このような点についても触れていただければと思います。
最後になりますけれど,このような充実にはもちろん財源が必要なわけで,これは,上山委員が言われましたから私は繰り返しませんけれど,やはり財務基盤の強化がなければ,そのようなことができない。そういうことも是非強調していただきたいと思います。
以上です。
【上山委員】 今,田中委員,それから小林委員と非常に適切なフォローがありましたので,そのとおりだと大体思います。
ただ,幾つか付け加えさせていただくとすると,学長のリーダーシップを強化することによる弊害というのは,恐らく国立大学よりも私立大学の方に起こるだろうと思います。国立大学の場合は運営費交付金がほとんど担保されていますから,各学部の予算が急激に減っていくということはないので,仮にリーダーシップが学長にある程度集中したとしても,今後大惨事は来ないだろうという気はしますが,むしろ,それは中小の私立大学で学長の権限が余りに強化されてしまって暴走し始めていくという懸念がある。その場合には,恐らく監事の役割が重要になってくると思うのですが,誰がどういう権限で,どこまでの権限を付与して監事を任命するのかということが,ここの中では余り明確に書かれていません。
国立大学の場合は監事というのは任命されていますけども,それは,恐らくそんなに大学の経営に関して口を挟むというレベルではないでしょうが,もし学長のリーダーシップが中小の私立大学に関して強化されていくと,このガバナンスは大変危ないことになる可能性があるということを明確に意識した上で,こういう提言を書くべきだと思います。
国立大学に関してはスタッフの専門知識が必要というのは,今,小林委員がおっしゃったとおりだと思います。
それから,北城委員が大学と官庁や株式会社とは随分違うのだという認識という御指摘があったのですが,これは実は違う。それはかぎ括弧して「残念ながら」と入れておきますけども,残念ながら違うのです。アメリカの大学でも,大学の学長たちが非常に心を配るのは実業界の人たちに大学の経営の難しさということを常に訴えて認めてもらう。そういうつながりの中で非常に苦労するということだと思います。
システムとしては,やはり違うということを念頭に置かなければいけないのですが,先ほど言いましたように「残念ながら」違うということだと思います。
それから,最後の5番目,42ページ以降の社会における大学ガバナンス改革の支援,これ,実はもう少し充実してもいいのではないかと思っております。特に私のようにアメリカの大学の変遷を見てきた人間からすると,民間の企業とか民間セクターの大学改革に対して果たした役割というのがいかに大きかったかということを痛感せざるを得ません。それは財団を通してとか,あるいは個々の企業がそうなのですが,社会の変化を体感して高等教育とか,あるいは知識の世界の変化を求めていくという声は,実は実業界の方から非常に強く起こるのです。そのときに実業界が大学という問題に対してどう関わっていくのかということの覚悟をどこかで問わなければいけない。
特にそれは資金の面でもそうなのですが,公的資金というのは非常に大きいのです。公的資金というのが圧倒的な役割を果たしている。ところが,改革の兆しを作っていく,きっかけを作っていくのは実は民間セクターの役割だと私は思っています。
ですから,企業が例えばこういう形の大学の変化が生まれるべきだと思えば,そこに刺激を与えるような資金投与を企業の方から,たとえ大きくなくても行っていく。そういう意味で,社会の高等教育に積極的な関わりということがもう少しうたわれてもいいと私は思っています。
そのことが本当にきっかけとなって,より大きな公的資金が投入されて大学全体が変わっていくといういいサイクルが生まれればいいと思っています。
【金子委員】 私は,この素案についてはもう余り変更するところはないのではないかなと思っておりますが,先ほどから出ていますように社会に危機感があるということは確かにそのとおりだと思います。特に教育の高度化に関して非常に大きな課題があることは事実です。少なくとも表面に立って大学側の歩みが遅いということも事実だと私は思います。
ただ,これは大学側の努力が足りないと思いますけども,私はいろいろなところに呼ばれてお話しする機会がありますが,実際には相当なことをやっていると思っております。さらに,それでもまだ遅いということはあるだろうと思います。遅いですけれども,一種のバランスは必要だというのが私の議論です。皆さん,もう忘れておられるみたいですけど,東大では秋入学というのを一昨年に出しまして,この事態を思い出しますと私は二つレッスンがあると思うのです。
なぜ秋入学が必要だったのかといいますと,私が解釈しますのは,東大で教育の国際化をするときに内部で学士課程で外国人の学生を受け入れたりするときに,教育改革をすることは非常に難しかった。なぜかならば,学部教授会は全て独自に教育課程を握っていますから,全学で受け入れられない。外国人の学生を受け入れるときに,法学部がアメリカのアンダーグラデュエイトの学生を受け入れるわけにいかないのです。全学的にやらなければいけない。いろいろな意味で全学的に教育をシステム化しないと国際化もできないわけです。それは非常に難しかった。
そのような抵抗があるために,むしろ入学時期を変えるというのは,ある意味での奇襲を打ったのだと私は思います。
ただ,基本的には御存じのように実施はかなり難しい状況になっています。それは,一部の新聞は教授会が抵抗したからだと書いていますが,それは教授会が抵抗したのではないと思います。実際に半年間入学を遅らせて,その後で3年半ないし進路が違う学生を,特に基礎的な領域で教育し直すのは非常に難しい。結局,そうしたらば,教育の質は今でさえ余り高くないと批判されているのが,それを確保できないという実態があるからこそ教授会は,最終的にはどうしても反対せざるを得なかった。
やはり教育の実態から発想するのは,教授会といいますか,個々の教員なのです。教育を改革する際にも,確かに社会全体の要求を反映するのは,むしろ学長とか大学全体だと思います。しかし,それを実施する担い手は教員ですから,教員が十分に説得されて,それに参加する,そのような決定をしなければ実際の教育改革はできないわけです。そういう意味では,バランスは非常に重要だと私は思います。
このまとめについては,これ以上踏み込むと,やはりそのようなバランスを逸する可能性があるのではないかと思います。
以上です。
【奥野委員】 すみません,議論についてはかなりいろいろな方がお話しいただいたのですが,これをもう少しバージョンアップしてまとめていくときの,言葉の話で申し訳ないのですが,今まで事務局からいろいろ出してくださった資料にガバナンスという言葉とリーダーシップという言葉とマネジメントという言葉がごちゃごちゃでした。正直言って私は,マネジメントともっと書いてほしいと強く思ったのですが,マネジメントという言葉は,この資料の中に3回しか出てきません。その3回は,何かのマネジメントという正しい言葉なのです。でも,私は,実際に学長を指名されて,今やっている中で,どなたかがおっしゃってくださったけど,私は学長の素人です。経営も素人です。でも,その中で必死にやっている。これ,私だけではないと思うのです。
では,外から理事長なり,あるいは経営委員なり入れたらいいか。いや,彼らは大学の素人です。そこで,ある意味で闘うということはよくないのですが,その中で競り合いしながら頑張っているわけです。
では,何が必要か。私が言うのはリーダーシップではないです,マネジメントなのです。リーダーシップという言葉は,ほとんどの場合,何か権限を持っているという言葉に使われています。ガバナンスという言葉は,一番典型的なのですけど,1ページ目は「大学におけるガバナンス」,これは正しい言葉だと私は思うのです。統治をこういう機構にするとか,組織にするということ。今回すごく正しいのは,前は学長のガバナンスという言葉がありました。あれは絶対にマネジメントです。でも,今回はずっと見ましたけど,「学長のガバナンス」という言葉はありませんので,安心しました。その辺は皆さんがよくまとめていると言ったのですが,私もよくまとまっていると思います。
でも,もう少し注意しながら,実はマネジメントという言葉を使ってほしいと思います。今,実際にやっているからそう思います。それは,大学,高等機関は,文部科学省,あるいは国の非常に大きな,長い政策の中でやっているわけです。国立大学も我々も,期間は6年となっていて,一番最初に国立大学の改革の話をされましたけど,1個回っているのは6年です。でも,もっと長い政策の中で国立大学は動いています。その中で小さいサイクルは1年です。年度計画を立て,それでPDCAでやるのです。私は国立大学の評価委員やりましたけど,委員任期は2年ですから,2年大学を見ているのです。
では,もっと長い国の政策の中で,こういう高等機関があって,その中で見てほしいというのが私の言いたかったことです。
【北城委員】 学長が権限を持つと暴走するリスクがある,これは田中委員がおっしゃるとおりで,確かに権限があれば暴走するリスクもある。ただ,26ページの上から二つ目の○のところに,「学長選考組織は,法律上の規定に基づき,任命権者に対して学長の解任を申し出る責務がある」と書かれています。つまり,本当に学長選考委員会がこの学長はおかしい,暴走に限らず他の運営についてもおかしいと思ったら,一応,罷免することができるということが防波堤になっているのではないかと思います。私立大学では事情が違うと思うのですが,今の問題は学長の暴走を抑えるために教授会の権限を強いままにしておくべきなのか。それとも学長が何かを変えようとするときに,それが変えられるようにしておくべきなのかという議論だと思います。
学長の暴走よりも,学長が変えようと思ったときに変えられない仕組みの方が,日本の大学運営の問題ではないかと思うので,基本的には学長に権限を与えるべきだと思います。
その上でもし問題があれば,国立大学の場合には学長を罷免できるし,私立大学でも理事会が学長を罷免できる仕組みを導入したらいい。このような形で暴走を防ぐべきではないかと思います。
【河田部会長】 私立大学でも,それぞれの大学に学長が暴走したときには罷免なり,辞めていただく制度があると存じます。
【北城委員】 あるところもあるし,ないところもあります。
【北山副部会長】 感想めいた話になりますが,先ほど冒頭にも触れました国立大学法人評価委員会総会の最後に,委員長として申し上げたことと同じ趣旨のことを,この場でも申し上げたいと思います。例えばガバナンス改革など,いろいろな改革案が出ておりますが,それらはいずれも何年も前から議論されてきた内容ばかりです。つまり改革は進んではいるのですが,まだ途上にあるということですので,大学自体の取組に加えて,改革を加速化していくために,文部科学省や企業などのステークホルダーが支援していくことが必要です。
企業も大学もそれぞれに直面している現実というものがあります。冒頭,上山委員が言われたように,アメリカでは20年間ぐらいかけて大学のシステムを変化させてきたとのことですが,日本では,現実として非常に大きな構造的変化に直面しています。過去の大きな成功体験を経てきた後に,一気に改革を迫られている状態です。
企業は放っておくと倒産してしまいますので,合併再編,スクラップ・アンド・ビルド,人員の配置転換,スピード,グローバル化といったキーワードに象徴されるような大きな改革をずっと進めてきました。
一方で,大学の改革がなかなか進まないのは,そのような過去の成功体験といった背景があるのではないかと思います。
大学改革を本当に推進していくためには,まず現実を踏まえて,改革によってどこが不利益を被り,その不利益をできるだけミニマイズするためには,どういう仕組みがあるのかといったプロセスの部分について支援していくことが必要です。その支援を,評価を含めてどのようにやるのかを考えるべきです。実際に大学に入り込むことはできないので,プロセスを支援できるような仕組みが大切です。目標ははっきりしているのに,そうした仕組みがないと,なかなか改革が進まないというようなことに陥りかねません。大学が主体的に考えなければいけないのは当然ですが,実際に改革が動くような支援の仕掛けを,文部科学省,企業や評価機関も含めたステークホルダー全体で考えるべきだと思います。
【帯野委員】 先ほど多くの先生から御指摘がありましたマネジメントという言葉は確かになくなっています。ただガバナンスとマネジメントという言葉がうまくすみ分けられなくて,全体にマネジメントの発想がもう少し要るのではないかと考えます。例えば,うまく言えないので組織力とでも言いましょうか。学長のリーダーシップを可能にするのは組織の力でありますので,小林委員がおっしゃったように専門性の高いスタッフも大切だし,もう一つ忘れてはならないのは一般の職員の能力,資質の向上,これは,企業から見ても正直明らかに遅れていると思います。
それについて少しだけ,例えば20ページ,21ページで職員について人事評価のことは触れていただいています。しかし,もうちょっと幅広く踏み込んでもよいのではないか。評価に応じた処遇,それから,21ページでは「教職員の人事評価を行い,その査定結果に応じた給与制度」とありますけれども,以前,私が職員の能力向上のところで研修と申しましたけれども,やはり組織を変えるのは評価であり,評価は組織の基軸であると思います。
ただ,そのときに忘れてはならないのは,評価にはプラスもあるけれども,マイナスもあるということです。これは,少なくともきちんと認識しておかなければいけません。特に21ページのその次の行ですが,「特別に処遇する教職員を学部長から推薦させたり,目立った成果をあげている学部」等々手厚い予算配分となっておりますので,どう書き込むかということは,工夫の要るところでありますが,例えばめりはりのある評価システムであるとか,そのためのルール作りであるとか,徹底した評価制度とその運用であるとか,ここら辺もマネジメントの重要性から考え,踏み込んでいただけたらと思っています。
【樫谷委員】 私もガバナンスのことについてですが,ここはガバナンスという使い方が少し違うのではないかというところがあって,確かに学長のリーダーシップに基づいて教授会とか学部長とか,職員も含めてマネジメントしていくのですけれども,これは間違った方向もあります。間違ったリーダーシップ,あるいはマネジメントする人もいます。実はそれを大きなチェックするのがガバナンスなのです。
ですから,ガバナンスというのは,もう少し大きな概念だと私は思っていまして,企業の方も取締役社長,これをどうやってガバナンスするか,チェックするかという話です。そういう仕組みができているわけです。
ですから,権限が集まれば集まるほど,それをどうチェックするかという大きなガバナンスが必要なのです。そういう観点からガバナンスというものを言うべきだと思います。それ以外は,基本的には学長の権限に基づくマネジメントだと思います。ですから,そこの誤解というか,分かりにくさがあるから混乱を招いているのではないかと思っております。
当然,チェック体制としては監事もあれば,情報公開もあれば,私立大学では評議員会とか,いろいろなステークホルダーがあると思います。そのようなところでガバナンスができるように,暴走しないようなガバナンス。暴走だけではなくて,何もやらない人もガバナンスしなければいけないわけです。物事を進めない人がいたら,それもガバナンスでチェックして進めていってもらわなければいけないというようなところがありますので,ガバナンスとマネジメントをしっかり定義するほどのことはないかも分かりませんが,少なくとも企業統治という言葉に対して大学統治という言葉もありますので,もう少し大きな概念だということを明確にしていただくといいのではないかと思います。
それから,民間と大学は確かに違いますが,違うから受け入れないというのではなくて,違うけれども,いいものは受け入れようというように,是非使えるものは使ってもらおうというのが正しいと私は思いますので,違うから受け入れないということではなくて,違うことを理解した上で,企業で言う仕組みのいいところは受けていただきたいと思います。
以上です。
【北城委員】 教授会の在り方に関して,これは決議機関ではないということでまとめていただいているので,方向はいいのですけれども,本当に大胆に改革するのであれば,学校教育法の93条を変えて,明確にこれを諮問機関とした方が,教育改革が進むと思います。
【河田部会長】 たくさん御意見が出て,有り難く存じます。具体的にここの箇所はこう書くべきだということを言っていただいたところは是非その御意見をうまく取り入れていただいて,それぞれの先生方の言わんとするところをうまく酌み取って,そのお考えをくみ入れていただくようにしたいと思います。親会議の大学分科会にも報告し,年内にきちんと提言を取りまとめたいと思いますので,次回で,本議題は終了となるようにさせていただきたいと存じます。
それでは,本日の審議はここまでとさせていただきます。各委員から率直な意見を頂き,ありがとうございます。より良い提言となるよう,委員の皆様方や副部会長とも御相談しながら最終案をまとめたいと思います。
(3)次回の開催日程について,事務局から発言があった。
── 了 ──
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