『京都新聞』 2014年1月8日付
大学入試改革 多様な個性みる流れに
文化部 梶井進
大学入試改革の議論が本格化している。政府の教育再生実行会議は昨秋公表した提言で、1点刻みで合否を争う知識偏重の入試からの脱却を掲げ、意欲や適性を重視した選抜の拡充を求めた。これまでもそのような方法は模索されながら、筆記試験重視の風潮は変わっていない。しかし、筆記試験による一発勝負ではなく、個人の資質を多面的にみる選抜方法は今後求められるだろう。
提言は、問題点として高校教育が大学入試のための学習に傾いて入学後につながっていないと批判する。大学入試センター試験に代え、複数回受けられる達成度テストの導入のほか、各大学に入試改革の必要性を説く。同様の観点で二十数年前に導入が始まったのが、高校の成績や活動実績、面接、論文などで選ぶアドミッション・オフィス(AO)入試だ。昨春入試は、全国で7割余りの536大学が何らかの形で実施した。
ただAO入試は京都や滋賀の大学を含め撤退の動きが見られ始めている。負担の割に思ったような人材が集まらないからだという。合格者の学力不足を指摘する声は多く、入学前学習を課したり、特待生採用を動機付けに一般入試を受けさせたりする大学が増えている。京都のある私立大の入試担当者は「筆記試験が入試の王道で、AO入試は学力不足の生徒の受け皿になっている面がある」と明かす。
受験生にも負担が大きい。AO入試で課される論文や面接、模擬講義を受けてのリポート作成は、特別な対策が必要で、筆記試験と合わせて受けるメリットはない。意欲や適性を評価するのは難しく、現時点で受験生には筆記試験による評価が客観的で、信頼も勝ち得ている。
立命館大の一部学部のAO入試は、高校生向けの自作コンピューターソフトのコンテストを主催して入賞者を優遇したり、学内外をめぐって観察や記録、考察などフィールドワークの実践的能力をみたりする。入学後も意欲の高い学生を確保できているといい、入学センター部長の花﨑知則教授は「学部で事情は異なるが、適性を的確に把握できると非常にAO入試は効果的だ」と評価する。
筆記試験と同じような信頼性を勝ち取るには学部ごとに適切な選抜方法を開発し、筆記試験の合格よりも志望学部への適性が認められたと受験生が確信できるようにならなければいけない。
長年、日本の教育は個性的な人材が生まれにくいと言われてきた。入り口の入試がもっと多様で個性的になるのは賛成だ。京都大は「京大特色入試」として論文や面接などで評価する選抜を2016年度から始める。大量に効率よく選抜できる筆記試験中心から、少人数ながらも多様な能力や個性をみる流れになってほしい。