秋大国際資源学部 人材育成へ強み生かせ『秋田魁新報』社説 2013年11月9日付

『秋田魁新報』社説 2013年11月9日付

秋大国際資源学部 人材育成へ強み生かせ

秋田大の「国際資源学部」新設が文部科学省に認められた。各国の資源獲得競争が激化する中、専門知識や語学力を備え、内外で資源開発に携わる人材の育成を目指す。100年を超す鉱山研究の蓄積という強みを生かした新学部の創設であり、世界で活躍できる多くの人材の輩出を期待する。

秋田大は来年度、国際資源学部新設と併せ、工学資源学部を理工学部に改組する。「文理融合」を掲げる国際資源学部は定員120人。4学部の総定員はやや減ったが、1970年の医学部以来の学部新設となる。

資源学の専門知識だけでなく、国際情勢、資源国の歴史や文化、法律を学ぶ。1、2年対象の英語集中プログラムを設けて専門の授業を英語で行い、3年時は海外研修を義務付ける。

注目されるのは、さらなる社会貢献を目指す姿勢が大学を今後どう変え、社会にどのような果実をもたらすかであろう。

秋田大は新設前、資源関連企業を対象に調査を実施。その結果、「資源国で交渉や折衝ができる人材」が求められていると判断し、企業や公的機関で即戦力として活躍する「グローバル資源人材」の養成を掲げた。

さらに教授会の機能を執行機関に限定。教育や研究の意思決定は社会のニーズを反映できるよう民間の専門家らでつくる機関が主導する。

象牙の塔にこもっていては十分な社会貢献は望めない。世界での資源の開発と獲得に役立つ学問に挑戦し、存在感を存分に発揮してもらいたい。大学間競争が激しさを増す中、特色を打ち出すことはますます重要となるからだ。

国内大学の資源系学科が再編、縮小される中での新設であり、秋田大の国立大法人化10年目の節目の新路線である。生き残りを懸け、これまで以上に個性を発信していく必要がある。

中でも、かつて鉱山で栄えた秋田の強みを前面に押し出した点を評価したい。工学資源学部の前身、秋田鉱山専門学校の設置以来の長い歴史を持つ鉱山学を軸にしたアピールは、足元の価値にあらためて光を当てた発信といえる。県内の他分野でも積極的に参考にすべき取り組みであろう。

乗り越えるべきハードルもある。目標とする人材の「世界的教育拠点」の実現には高い教育レベルの維持が不可欠であり、実績のある優れた教員を採用することが重要。学生が体系的な研究を続けるため、大学院の早期開設も必要になろう。

県内では、英語による授業や留学義務付けで知られる国際教養大が全国から注目されているほか、農業や観光分野で独特の学科を持つ大学がある。

こうした個性ある大学の増加は本県の魅力を一層増すことになろう。本県で学び世界を目指す若者が増えることは地元活性化にもつながる。国際資源学部設置をそんな契機としたい。

 

 

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