法科大学院 精鋭育成へ再編が急務だ『産経新聞』主張 2013年11月10日付

『産経新聞』主張 2013年11月10日付

法科大学院 精鋭育成へ再編が急務だ

司法試験合格率が低迷している法科大学院に対し、文部科学省が新たな評価制度で改革に乗り出す方針を決めた。

レベルを5段階で評価し、低評価の大学院は補助金を大幅に削減し、統廃合を促す。法曹養成の教育機関として質が危ぶまれており、荒療治は当然だ。厳しく評価し再編を急いでもらいたい。

法科大学院は平成16年の開設から10年目になる。知識偏重との批判があった旧司法試験制度を改め、裁判員制度などとともに司法制度改革の中核ともされた。

米国のロースクールをモデルに、法律知識にとどまらない、思考力、識見を育てる。同時に法学部出身者以外にも広く人材を求め法曹界に送り出す。20~30校程度で精鋭を育て、7~8割の司法試験合格率を見込んでいた。しかし想定と異なり現在73校が乱立し、質に疑問が持たれている。

今年の司法試験合格者は2千人余りだが、法科大学院からの合格率は2割台だ。上位校でも合格率5割台にとどまる。法科大学院への志願者減少が続き、人材を集める役割にも影を落としている。

逆に法科大学院を経なくていい予備試験通過組は167人中、120人が合格し、合格率7割と高い。来年の司法試験受験資格を得た予備試験通過者はさらに増えている。予備試験は法科大学院に通えない苦学生などへの例外的措置のはずだったが、当の法科大学院生や法学部出身者の合格が多く、新制度は骨抜きになっている。

法科大学院が多すぎることは当初から問題になってきたが、是正は進まなかった。弁護士や検察官など実務経験のある教員の確保がままならない大学院もある。

法科大学院の教育の質を高めるため、少数精鋭体制に再編することが欠かせない。文科省は5段階の評価によって補助金を傾斜配分するという。最低レベルには補助金を半減し、場合によってはゼロにすることもある。これまでが甘すぎたのだ。大学側は生き残りのため、カリキュラムを練り真剣に改革しなければならない。

法曹は、医師と同様に弁護士の地域的偏在の問題も解消されていない。質の高い法曹人口を増やす法科大学院の責任は重く、地方大学も思い切った再編と教育内容の工夫が必要だ。文科省は法曹界と連携し、法科大学院改革に早急に手を打ってもらいたい。

 

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