大学入試改革 具体像が見えてこない『北海道新聞』社説 2013年11月2日付

『北海道新聞』社説 2013年11月2日付

大学入試改革 具体像が見えてこない

政府の教育再生実行会議が、大学入試センター試験に代えて、「基礎」と「発展」の2種類の達成度テストの導入を提言した。

今後、中教審で実施に向けた制度設計を行い、5、6年後の導入を目指す。

実現すれば受験制度の抜本的な改変となる。将来の受験生や親にとっても無関心ではいられない。

だが、高校の学習達成度と大学進学の適性を測るために、なぜ2種類のテストが必要なのか。その理由があいまいだ。テストの性格づけも不明瞭で、具体像が見えてこない。導入には慎重な論議が不可欠だ。

提言によると、基礎テストは高校生に必要な学習の達成度を把握するもので、在学中に希望者が受ける。卒業認定や大学入学資格には使わず、推薦やアドミッション・オフィス(AO)入試に役立てるという。

一方、センター試験に相当する発展テストは1点刻みの成績評価をやめ、各大学に面接など人物重視で最終選抜を行うよう要請している。

「1点刻みを廃す」「人物重視」と聞こえはいいが、テストでレベル分けし、大学に独自選抜を求める点で、「ふるい落とし」の発想から抜け出ていないのは明らかだ。

学ぶ意欲のある人には門戸を広く開く。大学入試はこれを基本に、将来のあり方を検討していくべきだ。

高卒レベルの学力習得が見極められれば、進学希望者はそれぞれの資質に応じた大学に進学できる制度にすることが望ましい。

たとえば、ドイツやフランスは大学入学資格試験を通過すれば原則、希望する大学に入学できる。

センター試験は23年を経て、見直しの時期を迎えている。最大の問題は受験科目が6教科29科目まで増えて複雑になったうえ、高校生が受験対策で細分化した科目に絞って学習するようになった点である。

高校時代に幅広く身につけておくべき知識が偏重し、本来の教育目的が果たせなくなってきた。

この弊害を新しいテストでどう解消するのか。提言は問題点を認識しつつも、解決の道筋という肝心の部分の説明が欠落している。これでは評価のしようもない。

大学には人物本位の最終選抜を求めているが、その実現の可能性にも疑問符がつく。果たして短期間で数千、数万人もの受験生の資質を的確に判別できるだろうか。

選考基準が不明確になり、公平感や信頼感が失われるようでは入試制度の根幹を揺るがしかねない。

達成度テストは制度設計によっては高校、大学双方の変革を促す好機となる。中教審にはさらなる熟慮を求めたい。

 

 

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com