大学入試改革 大事なのは教育の中身だ 『産経新聞』主張 2013年10月7日付

『産経新聞』主張 2013年10月7日付

大学入試改革 大事なのは教育の中身だ

大学入試を、大きく変える改革が検討されている。政府の教育再生実行会議は、大学入試センター試験の見直しなど改革案を近く公表する。

制度を安易にいじり、受験生を振り回すだけの結果にならないよう慎重な議論を求めたい。

それ以上にいま肝心なのは、入学後の学生をどう育てるかだ。教育の中身の改革をこそ急ぐべきではないか。

産業界からも、創造力のある人材や、特定分野に秀でた世界で仕事ができる人材の育成が強く望まれている。

今回の大きな改正点は、大学の1次試験にあたるセンター試験の改革で、結果は点数でなく学力レベルが分かるよう段階的に示す。受験機会は、年1回でなく複数回に増やす。各大学には2次試験で面接や小論文を重視し、社会貢献活動を評価するなど多様な尺度で選抜するよう促す。

高校で基礎学力が身についているか、学習到達度テストも導入する。大学で学べる学力を確かめ、学習意欲のある多様な人材を大学に受け入れ育てるねらいだ。

これまでも入試制度の改革は繰り返されてきた。センター試験の前身、共通1次試験が昭和54年に導入された当時から、答えを選択するマークシート方式に対し、「考える力が育たない」との批判が根強かった。

共通1次は当初5教科7科目を課したが、「受験生に負担が大きい」とされ、センター試験で各大学が必要な科目だけ選ぶ方法に変わった。このため受験科目の少ない大学が目立つようになった。

知識偏重を見直し、多才な人材を育てたいというねらいは通らず、受験科目になければ勉強しないという結果を招き、学力低下が心配されるようになった。

一発勝負、1点刻みの入試を変えるという試みが「ゆとり教育」の失敗のようにならないか。各大学が2次試験などの選抜方法を工夫する力が問われる。

今回の入試改革案は、欧米の大学入試制度を参考にしている。だが卒業認定が厳しい欧米と比べ、日本の大学は「入るのは難しく、出るのはやさしい」といわれ、事情が違う。

大学改革では入学後に勉強しない学生が批判されてきたが、なかなか変わらない。成績が悪ければ退学を勧告するなど、大学には厳しい姿勢も求めるべきだろう。

 

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