新大学入試 真の教育改革へ国民論議を 『琉球新報』社説 2013年10月6日付

『琉球新報』社説 2013年10月6日付

新大学入試 真の教育改革へ国民論議を

大学入試改革を議論している政府の教育再生実行会議が現行の大学入試センター試験に替え、1点刻みではなく一定幅の段階評価とする共通試験導入を提言する見通しであることが分かった。入試とは別に、高校在学中に学習の到達度を測るテストの創設も求める。 実現すれば、1979年の共通1次試験導入以来の大学入試制度の大改革となるが、目的がはっきり見えない。制度変更の是非、新たな制度設計と導入時期をめぐる議論や合意形成にあたっては、受験生や高校・大学教育の現場の混乱を招かぬよう十分配慮し、時間をかけ慎重に作業を進めるべきだ。

提言案によると、新しい共通試験は現在のセンター試験を土台とし、点数に応じて複数段階の結果を示す。1点刻みの過度な受験競争の弊害をなくし、高校・大学の教育の質を上げるのが狙いという。

学習到達度をみる新テストは、高校生が身に付けるべき基礎的・共通的な目標を国が設定し、思考力や判断力を含めた幅広い学力を測る。希望者が高校在学中に複数回受験できるように設計する。

新大学入試の結果を段階別の「点数グループ」で示すことで評価の公正さを担保できるか疑問だ。到達度テストの大学推薦入試などへの活用が受験期間を事実上の前倒しし、生徒の負担を増幅させないか懸念する。「高校・大学の教育の質」の向上にとって、新入試が優先課題なのか吟味も必要だ。

日本学術会議の教育学の展望分科会が2010年にまとめた報告書では、「21世紀の教育改革の要諦は『質』と『平等』の同時追求にある」と指摘している。

その中でOECD(経済協力開発機構)諸国の中で国内総生産(GDP)に占める教育支出が最下位レベルに転落した日本の現状や、貧困を背景とする学ぶ権利の疎外と学ぶ機会の剥奪、学校現場における臨時採用教師と非常勤教師の激増、「副校長」「主幹教諭」など職階制導入による官僚主義形成とこれに伴う教師の多忙化-など、教育の問題点を洗い出し、改善を求めている。

政府が「教育の質」の改善を言うのなら、こうした提言も踏まえ、日本の教育の総合的な検証を公平・公正に実施するのが筋だ。

知識偏重型教育から創造的な学び、人間力を育む教育への転換を見据え、多角的な専門家の論議、国民的論議を求めたい。

 

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