『産経新聞』主張 2013年9月18日付
法科大学院 質の高い法曹人の確保を
創設10年目を迎えた法科大学院で、司法試験合格率が平均で2割台にとどまっている。文部科学省は成果の上がらない18校への補助金を平成26年度から削減することなどを決めた。
低迷を続ける大学院への国費投入を見直すのは妥当だ。18校が自ら抜本的な改善策に取り組むのは当然だが、好転がみられない大学院には再編や閉校を勧告するなど、政府としても積極的に是正策をとるべきだ。
法科大学院は司法制度改革の柱として16年度からスタートした。テクニック偏重と批判のあったそれまでの司法試験を見直し、実務能力と見識を備えた法曹人をじっくり育てる考え方はよいが修了者の7~8割が合格するとの構想は甘すぎた。
25年の合格率は平均26・8%にとどまった。志願者数も当初の約5分の1に減った。一方、法科大学院を修了せず予備試験から挑戦した受験生167人中、120人が合格する皮肉な結果が出た。
予備試験は、時間や金銭上の都合で法科大学院を出なかった人にも、司法試験受験資格を得る道を開くために導入された。こうした状況が続けば空洞化が進み、制度の根幹が問われる。
全国20~30校という見込みに対し、74校が開校された「乱立」に原因があるのは明らかで、質の低下は当初から懸念されていた。
すでに大学院間の統合などを模索する動きもみられるが、規模の適正化など、質の向上を伴う再編でなければなるまい。多くの大学院が使命を果たせずにいる深刻さを考え、国や教育界を挙げて取り組んでもらいたい。
法科大学院の低迷を受け、政府は司法試験合格者を年間3千人にする数値目標をさきに撤回したが、「質の高い法曹人口の拡大」という当初の目標はどうなるのか。国民の権利を擁護するという目的を達成するには、拡大の具体策が必要だ。
政府が17日に設置した「法曹養成制度改革推進会議」での検討も鍵となるのは法曹人材の需要拡大策だろう。資格はあっても仕事がなければ、法曹の世界に若者は希望を抱けないからだ。
裁判官や検察官増員の可能性、官庁、企業での雇用拡大の方策を考えるべきだ。法廷以外でいかに活躍の場を広げるか、法曹界としても知恵を絞ってほしい。