増える奨学金の滞納 慎重な資金計画を 『神戸新聞』 2013年9月10日付

 

『神戸新聞』 2013年9月10日付

増える奨学金の滞納 慎重な資金計画を

不況や就職難などを背景に、大学などを卒業後、奨学金を返済できずに苦しむケースが増えている。奨学金に詳しい、川西市在住のファイナンシャルプランナー中村典子さん(60)は「進学の資金計画は慎重に」と呼び掛ける。(片岡達美)

「非正規雇用になり生活が苦しい。消費者金融に手を出したことも。奨学金はもちろん返せず、困り果てている」(40代、男性)

「奨学金を借りた30代の息子が行方不明になってしまった。延滞金も発生し、連帯保証人である自分(=母親)のところに督促状がくる…」(60代、女性)

奨学金の返済に苦しむ人を支援するために今年3月、弁護士らが「奨学金問題対策全国会議」(東京)を設立。6月には「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」(事務局・神戸市中央区)が結成された。前述の声は同会に寄せられたものだ。「件数はまだ数えるほどだが、どこに相談したらいいか分からない人が多く、問題の根は深い」と同会事務局長の佐野修吉さん(64)。まず困っている人に声を上げてもらい、問題を把握したいという。

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日本の奨学金は、貸与型が中心。奨学金利用者の大半に貸与している独立行政法人「日本学生支援機構」(横浜市)は、無利子の「第1種」と利子(上限3%)付きの「第2種」を設けているが、近年、第1種、第2種とも貸与金額が増加、返済の延滞も増えている。2012年度に返済すべき奨学金を滞納したのは約33万4千人で、期限を過ぎた未返済額は過去最高の約925億円に上った。

注意したいのは、1、2種とも返済が滞った場合、年利10%の延滞金が加算される点。ファイナンシャルプランナーの中村さんは「奨学金という名の金融商品と考えた方がいい」と警鐘を鳴らす。

奨学金問題対策全国会議共同代表で、中京大国際教養学部の大内裕和教授(46)=教育社会学=は「『借りた金を返さないのは甘い』という批判もあるが、余裕があるのに返さない人はごく少数。長期の返還滞納者の9割近くは年収300万円以下の人たち」と説明。さらに「本人の年収をベースに返済し、延滞金は廃止。将来はすべてを無利子にし、返済の必要がない給付型奨学金も拡充すべきだ」と制度の見直しの必要性を訴えている。

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奨学金問題の相談は「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」事務局TEL078・362・1166、メールhy-shougakukin@mbr.nifty.com

日本学生支援機構の奨学金 大学生、大学院生らを対象にしており、2012年度の貸与実績は、第1種が約40万2千人、第2種が91万7千人。家計の経済状況が苦しいことなどが貸与の基準になっている。借り入れ可能な金額は大学生の場合、第1種、第2種とも月額3万円から。返済期限などはさまざま。

 

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