法科大学院、背水の策 補助金削減 最多18校 『朝日新聞』2013年09月13日付

『朝日新聞』2013年09月13日付

法科大学院、背水の策 補助金削減 最多18校

来年度の補助金が減る法科大学院と過去3年の合格率

【千葉卓朗、藤田絢子】法律家を育てる法科大学院の低迷が続いている。法務省は10日、今年の司法試験の合格状況を発表。これを受け、文部科学省は来年度に過去最多の18校について国からの補助金削減に踏み切ることにした。生き残りをかけ、各校は司法試験の合格率アップ策だけでなく、合格後の就職対策まで面倒をみるなど懸命だ。

今年度に国立大として初めて補助金を削減された島根大法科大学院(山陰法科大学院)。2015年度から募集を停止することを決める一方で、他の地方大学と連携することによって、新たに「広域連合法科大学院」として再出発することを模索している。

朝田良作研究科長は、司法試験合格率が低迷する静岡大と提携協議をしていることを認め、「さらに複数の大学と協議中」と話す。来年5月までに国に広域連合法科大学院の新設を申請し、15年度からの入学開始を目指すという。

地方大学の場合、首都圏の大規模校に比べて多様な専門分野ごとに教員をそろえることは難しい。大学同士が手を結ぶことで互いの教員を活用でき、学生がより専門性の高い授業を受けられるようにして、司法試験合格率を上げるのが狙いだ。離れた大学の授業を中継映像で結ぶ「遠隔授業」を採り入れる予定だという。

駒沢大法科大学院は、今年の合格率が7・9%にとどまった。全国平均の半分を3年連続で下回り、来年度からの補助金削減の対象になった。

同大は少しでも多くの入学者を集めようと、今年から全国初の9月入学制度を始めている。学生は8月の入試の翌月にすぐに入学できるため、修了後から司法試験までの受験勉強期間を長く確保できる利点がある。入学時期が4月でも9月でも同じ内容の授業を受講できるよう、カリキュラムも見直している。

ただ、今年8月の入試では期待したほど効果は出ず、9月入学を希望した合格者は3人だけだった。對馬(つしま)直紀研究科長は「文科省への届け出が遅れた影響で広報を始めたのが6月。入試までの周知期間が短かったのが響いた」と話す。

合格率を高めるため、授業などで丁寧な指導を行っているのが愛知大法科大学院だ。学生に課題を出し、授業の数日前までに解答をメールで提出させる。それを教員が徹底的に添削する。それによって、学生の理解度を正確に把握でき、授業では理解度が浅い部分に絞って指導することができるという。今年の司法試験合格率は42・9%で全国5位。中央大や早稲田大といった強豪を上回る成果を上げた。

司法試験合格後の就職まで面倒をみる大学も現れた。岡山大法科大学院は昨年12月、地元弁護士と協力して岡山市のキャンパス内に法律事務所を開設。同大を修了した新人弁護士をここで採用し、地元の医療機関や自治体での仕事を経験させる。期間は2年間。

新人弁護士の就職先は主に弁護士事務所だが、地方では就職難が続いている。岡山大は、こうした取り組みを通じて、新人弁護士が企業や自治体に直接就職する道を広げることを狙っている。

■法科院を「敬遠」 予備試験組、合格者倍増

今年の司法試験では、合格率1割以下の法科大学院が74校中25校にのぼった。「入試競争倍率が2倍未満」「3年連続で合格率が全国平均の半分未満」などの基準に基づき、文部科学省は来年度、過去最多となる18校の補助金を減らす。

法曹養成制度のあり方を検討してきた政府の会議は6月、合格者の少ない法科大学院の修了者に司法試験の受験資格を与えないなどの「法的措置」の導入などを提言している。文科省は今回、補助金削減の基準を厳しくしており、大学側に改善を促す「荒療治」に乗り出した格好だ。

国立は、鹿児島大と、2年連続となる島根大の2校。私立では、日本大のように受験者が100人以上の大規模校も対象となった。

法科大学院を修了していない人を含む予備試験組の合格率は71・9%と高かった。合格者数は120人で、58人だった昨年から倍増。約半数が20~24歳の若い層だった。

法科大学院修了は司法試験受験の要件だが、経済的事情などで大学院に進学できない人向けに昨年から始まったのが予備試験。しかし、修了までに数年かかる法科大学院を敬遠する若い層が「抜け道」として利用しているのが実情だ。

予備試験組の増加は、合格率が低い法科大学院にとって存続意義が問われる事態となっている。愛知大法科大学院の森山文昭教授は「法科大学院

 

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