高齢化社会対応 大学の力、地域に生かせ『秋田魁新報』社説 2013年8月10日付

『秋田魁新報』社説 2013年8月10日付

高齢化社会対応 大学の力、地域に生かせ

秋田大学が北秋田、潟上、横手3市で、高齢化社会に伴う地域課題の解決に向けた研究に乗り出す。文部科学省の補助を受けた5カ年事業として実施、各地域と連携した取り組みを進める。研究内容を自治体の施策に随時反映させ住民の満足度向上につなげるなど、大学の力を積極的に発揮してもらいたい。

秋田大は横手市と北秋田市に分校を開設、地域交流などに取り組んでいるほか、両市や潟上市とは連携協定も締結している。今回の研究は、全学的な態勢で地域貢献しようというのが大きな特徴である。

高齢化社会への対応が3市に共通する研究テーマだ。高齢者らの「安全・安心」をどう確保し、地域の「元気」を維持するのか。人口減、少子化も進む中、高齢化への対応は特に全県的に重要な課題といえよう。

高齢化に伴う問題は通院や除雪、日常の買い物など実にさまざまある。高齢化で地域行事などが維持できなくなれば、人々を結び付ける貴重な地域コミュニケーションが減退するという問題も出てくるため、解決策を講じることが急がれている。

今回の研究で秋田大は、豪雪地帯の横手市で山間部での冬場の地震を想定した避難計画の策定や不安の解消などに取り組む。医学部は在宅看護モデルについて研究し提案する。

過疎化により伝統行事の継承が危ぶまれる北秋田市では、行事の保存などを通じた世代間交流の推進や地域の元気づくりの方策を探る。潟上市では、地域のよりどころとなってきた小学校の閉校を受け、住民の交流拠点の在り方を考える。

全学態勢で地域づくりに関わる秋田大の教員には、専門知識を十分に生かした斬新な研究手法を期待したい。その効果が各地域で具体的に見えるようになれば、教員の意欲も一層高まることになろう。

さらに期待されるのは、学生たちの積極参加である。学生ならではの新鮮な発想や若者自身が必要と考える施策を、ぜひ地域づくりに反映させてほしい。講義や教室の研究では学べない実学の場となるに違いない。それぞれの専攻の延長として地域課題の解決法を探るという経験は、社会人になってからも役立つはずだ。

同時に、容易に解決できない問題があることを知る機会にもなる。そのハードルの高さが、学生の研究意欲をさらに引き出すと信じたい。何よりも自分が住む地域に目を向け、考えるという生きた学問になる。

自治体側がどう対応するかも重要だ。秋田大の研究によって解決策がすぐに見つかると考えるのは、誤りであろう。行政のプロとして、地域事情に即して大学側の提言を活用してほしい。自治体の施策は議会の承認手続きなどもあり、後手に回りがちである。研究内容を可能な限り迅速に施策へ反映させることが必要だ。

 

 

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