大学入試改革(3)英語「話す力」どう採点『読売新聞』2013年7月11日付

『読売新聞』2013年7月11日付

大学入試改革(3)英語「話す力」どう採点

 「Are you ready?(準備はいい?)」

 京都市中京区の市立西京(さいきょう)高校で6月24日、青木宮美(くみ)教諭(37)が語りかけると、生徒のグループが英語で寸劇の発表を始めた。

 英語を使う機会を充実させる目的で、今年度から導入された高校の新学習指導要領では、英語授業の指導は、英語で行うことが基本になった。同高は国際社会で活躍できるグローバル人材の育成を目標に掲げ、「英語を使いこなす力」の指導を重視。昨年度には文部科学省の研究拠点校にも指定され、「英語で英語指導」を先行実施してきた。

 ただ今のところ、3年生になると日本語中心の指導も行っている。生徒の多くが志望する、京都大などの入試英語対策に重点を置くからだ。受験対策を求める生徒の要望も強い。村上英明校長(57)は「高校の教育目標はあっても、目の前の大学入試は無視できない」と話す。

 国際的に活躍出来る人材の育成が進まないのは、大学入試で「話す」力が問われず、結果として高校までの英語教育が文法や訳読中心の指導から抜け出せないためだと指摘される。

 大学側でも「話す」力を測るテストを探る動きが強まる。京都工芸繊維大は昨秋から、一般入試での導入に向けた検討を重ねる。同大の羽藤由美教授(56)(応用言語学)は「最近は高校も大学も英語での発信力強化に力を入れている。両方の動きがつながるように、大学入試も変えなければ」と言う。

 だが、課題は多い。面接官や教室を学内で確保できるか。入試の「公平・公正」を維持するには、質問や面接時間、採点基準などをそろえ、面接官の訓練も必要だ。羽藤教授は「現時点ではまだ、手探りの段階です」と述べる。

 「大勢の受験生を試験日に集めて、一斉テストで選抜する方式が続く限り、入試英語を変えることができない」。上智大の吉田研作・言語教育研究センター長(64)は強調する。上智大と日本英語検定協会は、大学入試用英語力テスト「TEAP」を共同開発する。

 TEAPは筆記と面接で、「読む・聞く・話す・書く」を400点満点で採点する。日本の高校生の水準に合わせた問題が中心で、大学入学後に留学などに挑戦できる力があるかどうかを見る。

 TEAPについて、英検協会は2014年度から、全国7都市で年3回、公開テストを実施予定だ。上智大は15年度一般入試から、定員の一部で選抜の材料とする。

 TEAP普及のため、6月28日に上智大で初開催された協議会には48大学が参加した。ただ、上智大以外に入試での導入を決めた大学はなく、今後の普及は未知数だ。

 16年度入試からは、英語で英語授業を受けた高校生たちが大学受験に挑む。いかに高校と大学の英語教育を接続するか。模索は続く。(伊藤史彦)

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