【法科大学院】身近な法曹どこで育てる『高知新聞』社説 2013年7月5日付

『高知新聞』社説 2013年7月5日付

【法科大学院】身近な法曹どこで育てる 

 政府の法曹養成制度検討会議は、司法試験の合格率が低い法科大学院を強制的に退場させる法的措置を検討することを盛り込んだ最終提言を採択した。

 法科大学院の司法試験の合格率は低迷しており、昨年は約25%だった。合格率が低いと大学院の志願者が減り、学生の質を確保するのが難しくなる。その結果、合格率はさらに低くなるという悪循環が起きている。

 質の問題は司法制度の根幹に関わるだけに、法科大学院の統廃合を進めるのはやむを得ない。しかし、学生や法曹を志す人たちに不安を与えないよう、政府は慎重に結論を出さなければならない。

 司法制度改革は法曹人口を増やし、国民が身近に法律相談などができる社会を目指して始まった。法科大学院創設はその制度改革の目玉だった。

 これまでに約70の法科大学院ができたが、司法試験の合格率が高い大学院の固定化など教育の質の二極化が早くから指摘されてきた。社会人や法学部以外の出身者らの合格率も伸び悩んでいる。

 そこで検討会議は、実績の低い大学院の定員縮小や統廃合を促すため、補助金の削減や教員派遣の中止を求めている。改善が見込めない場合は、修了した学生に司法試験の受験資格を与えないことなどを想定している。

 ただし、法科大学院の乱立を招いた責任の一端は、設置を許可した文部科学省にもある。合格率だけで切り捨てるのではなく、改善に向けた各大学院の取り組みへの配慮も必要だ。

 統廃合の動きは小規模な法科大学院が多い地方でも進むだろう。

 地方の志願者は都市部の大学院に進むしかなくなる。経済的事情で法曹の夢を諦める人も少なくないだろう。

 一方、弁護士ゼロ地域は解消されたようだが、地方では多様な司法サービスを提供できる状態になったとはいえない。

 そもそも司法制度改革は身近な法律家を育てることが目標ではなかったか。

 2015年度の法科大学院の入学者募集をやめた島根大は、広域連合方式の大学院設置を目指すという。

 医師と同様、弁護士も市民の安心を守るために欠かせない存在である。地域の法曹育成の場をどう確保するか、議論を重ねていきたい。

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