「2年後」では遅すぎる法科大学院の改革『日本経済新聞』社説 2013年6月28日付

『日本経済新聞』社説 2013年6月28日付

「2年後」では遅すぎる法科大学院の改革

 法曹界の人材養成のあり方について、現行制度の見直しを議論していた政府の検討会議が最終提言をまとめた。

 司法試験の合格者数を年間3千人程度まで増やしていく目標を撤回し、法科大学院を統廃合するために法的措置を導入することを今後の検討課題としてあげている。

 司法改革の制度設計そのものに問題があったことを指摘しながら、肝心の具体的な改善策は先送りしてしまった。そんな印象がぬぐえない結論である。

 10年前に千人ほどだった司法試験の合格者は、2千人程度にまで増えている。この間に弁護士の数は1.7倍になった。ところが法律にかかわる仕事の需要は、想定したほどには伸びていない。

 このため弁護士になっても弁護士事務所に採用されず、仕事がない人が増えた。事務所で実際の業務を通した教育がなされないため、質の低下も危惧されている。

 「身近で使いやすい司法」を実現するために法曹人口を増やす方針は間違っていないが、現実的でなくなった数値目標をいったん取り下げるのはやむを得まい。

 約70校が乱立する法科大学院の統廃合を進め、全体の教育レベルを高めるのは当然の措置である。法科大学院修了生の合格率は低迷しており、昨年は25%だった。入学者数は3千人を割り、ピーク時の半分にまで減っている。

 しかし提言は統廃合のための法的措置の中身や適用基準について、「新たな有識者会議のもとで2年以内に結論を出す」との内容にとどめた。これでは問題の先送りと言われてもしかたあるまい。

 2年後に結論を出して、それから制度を作って実施するのでは、改善までに何年かかるのか。いま法科大学院で学んでいる学生や、法曹の世界を志す若い人たちに、これ以上の不安や迷いを与えるようなことがあってはならない。

 法科大学院を出ても合格できない。合格しても就職先がない。それがさらに大学院離れにつながる。よりよい司法を目指したはずの改革だったが、むしろ多様で有為な人材を確保できない危機に直面している。一刻も早く新たな道筋を示すことが国の責任である。

 今回の最終提言は近く、上部組織である法曹養成制度関係閣僚会議に提出される。司法試験は法務省、法科大学院は文部科学省という枠組みを超えた、政治のリーダーシップに期待したい。

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