『毎日新聞』2013年06月19日付
秋入学:東大見送りに他大学も「仕方ない」
東京大が「全学部一斉秋入学」導入の見送りを決めた。同大は約2年の議論の末「社会的環境整備の見通しが明らかでない」と結論付け、2015年度末までに4学期制を導入して学生の海外留学を促す方針だ。「秋入学」を検討してきた他の有力大からも「社会環境が整わない中では仕方ない」と冷静な声が相次いだ。
秋入学は12年1月、東大が「5年前後をめどに全学部生の秋入学移行案」を発表。京都大や大阪大、早稲田大など他の有力大11大学にも呼びかけ学内外で議論を重ねてきた。公務員試験や国家試験の実施時期の問題などがあり、東大の学内検討会が13日に当面見送りの方針を決めた。
11大学の一つ、北海道大は「資格試験の問題などを考えた時、ハードルが高かったということだろう。今後、北大だけで独自に秋入学を検討することはない」(教務課)とコメント。九州大の丸野俊一副学長は「社会整備がまだということ。ただ議論は大学の国際化への問題提起になった」と受け止めた。
これに対し、桜美林大の舘昭(たちあきら)教授(教育学)は「長年培われてきた日本の生活基盤のリズムがある中で、大学だけ部分的に変えるのは難しい。今回の議論が小中高校を切り離していたこともそうだが、深い調査・研究に基づいたものだったのか」と疑問視。千葉大の伊藤智義教授(計算機科学)も「秋入学にすれば海外から優秀な留学生が来るという発想は安易。日本の大学は教育・研究体制が貧弱で、まずは足元を固めるべきだ」と指摘した。
一方、4学期制については、現在導入を検討中の慶応大の清家篤学長は「東大の決定は改革の着実な一歩」と評価。九州大でも今後、導入を検討するという。【三木陽介、水戸健一】
京都大は「現時点でコメントすることはない」としている。松本紘(ひろし)学長はこれまでの毎日新聞の取材に「高校時代に幅広い勉強をした学生を大学でさらに伸ばすため、入試改革を優先する」として、秋入学に同調しない方針を既に示している。【五十嵐和大】