新教育の森:ほっかいどう 大学教員の雇用問題 相次ぐ解雇、雇い止め 考えるシンポに170人 /北海道『毎日新聞』2013年05月25日 地方版

『毎日新聞』2013年05月25日 地方版

新教育の森:ほっかいどう 大学教員の雇用問題 相次ぐ解雇、雇い止め 考えるシンポに170人 /北海道

 ◇「改革」のひずみ、指摘も

 道内の大学で相次ぐ教員の解雇処分や雇い止めなどの労働問題を考えるシンポジウム「どうなってる 道内の大学」が18日、札幌市北区の北海道大であった。大学関係者ら約170人が参加し、事例の発表とパネルディスカッションを実施。問題の背景に、学長や理事会の権限強化のひずみを指摘する声が上がった。

 ■8年半勤務の末に

 「なぜ私が働き続けることができないのか、裁判で明らかにしたい」。北大から雇い止めされ、2011年6月に札幌地裁に提訴した小池晶さんは事例発表で訴えた。

 小池さんは02年秋、非正規職員の研究補助として働き始めた。身分は「謝金雇用」「短時間勤務職員」「契約職員」と変わり、職場を異動した末、8年半後の11年3月に雇い止めとなった。「私の退職後、後任を雇っており、予算上の問題ではない。雇い止めの理由が知りたい」と、小池さんは怒りをぶつけた。

 今年3月に閉校した専修大北海道短大では、教員24人のうち8人が解雇された。8人は解雇無効を求めて提訴。原告の一人で、教員組合委員長の男性(44)は「大学側は、専修大や石巻専修大の専任職員への転職など優遇措置で、解雇回避の努力をしたと説明するが、応募者はいなかった」と現状を訴えた。小さな子供を抱えながら職を探す仲間の厳しい現実も紹介した。

 このほか、天使大で教職員組合結成に対する不当労働行為▽道教育大で学長選の取り消しを求める訴訟▽札幌大で労働条件切り下げをめぐる道地労委への救済申し立て▽千歳科学技術大で新任教員の不当解雇▽東京理科大長万部キャンパスでパワハラによる懲戒処分禁止の仮処分申し立て−−など、11年以降の労使紛争も報告された。

 ■チェック機能なし

 パネルディスカッションでは、背景や問題点を探った。

 札幌学院大の片山一義教授(労働経済学)は「この10年間に全国で起きた動きが、道内にも飛び火した形」と指摘する。北大の光本滋准教授(高等教育論)はグローバル経済を受けた新自由主義経済に基づく大学改革で、国の統制が強化されたことを説明し、「問題の多くはそのひずみの表れ」と話した。

 大学教員の労働問題を扱う中島哲弁護士は「法律を教えるのが大学だが、法律を守ろうとしているのかがはなはだ疑問」と皮肉りながら、「企業なら株主代表訴訟、行政なら住民監査とチェック機能が担保されているが、大学にはない」と強調。04年の国立大学法人への移行、私学法の改正で、「経営体制の明確化」の名の下に、学長や理事会の権限が強化され、大学自治の要を担っていた教授会の役割が有名無実化しているのが実態という。

 弁護士の佐藤博文実行委員長は「教員が大学という名の企業の使用人化している。大学の自治が破壊され、未来が脅かされている」と警鐘を鳴らした。【千々部一好】

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