大学入試改革 多様な人材が求められる『西日本新聞』社説2013年4月22日付

『西日本新聞』社説2013年4月22日付

大学入試改革 多様な人材が求められる

 東京大学と京都大学が入試改革に乗り出した。学力試験だけで選んでいた従来の方針を転換し、東大は推薦入試、京大は書類や面接を中心に選考する「特色入試」を導入する。2016年度入試から、それぞれ100人程度を選抜する。

 「偏差値エリート」ばかりでなく、多様な人材を確保するためだという。

 日本が誇る東大、京大も、海外の有力大学に比べると、抜きんでているわけではない。むしろ近年では後れを取っているとの評価もある。社会、経済は国境のないグローバル時代を迎えている。世界を舞台に活躍するたくましい若者をどんどん育てようという理念には賛同する。

 では、どのような学生を求めるのか。そのためにはどんな選抜方法がふさわしいか-。中身の詰めはこれからだ。両大学の方針変更は、全国の国立大学などの入試に少なからぬ影響を及ぼす。学生の混乱を招かぬよう、できるだけ早く明確な指針を示してもらいたい。

 推薦入試は国公立大学の95%で実施されている。大学の特色づくりだけでなく、少子化対策で一般入試の前に学生を囲い込んでおきたいとの思惑も働いている。それを横目に、学力試験だけの選抜にこだわってきた東大、京大も、国際的に学生争奪競争が加速する中で、トップ校のブランドにあぐらをかいてはいられなくなったといえる。

 東大の浜田純一学長は12日の入学式で、東大の「二つの弱さ」を訴えた。

 一つは「国際化の遅れ」。米国の有力大学では学生の半数以上が海外への留学やインターンシップを経験するの対し、12年に海外留学した東大の学部生は全体の0・5%にとどまる。海外からの留学生も少ない。浜田学長は「(国際化の)遅れはきわめて深刻」と懸念する。

 もう一つは「均質化」だ。黒川清東大名誉教授によると、東大入学者の5人に2人は、わずか20の進学校の卒業者で占められ、その多くが中学高校の6年間、同じ学校で学んできたという。さらに首都圏出身者が半数以上、保護者の平均収入が高い-などの共通点がある。

 似た環境で育った者ばかりが集まることで、個性に乏しく、「内向き」「指示待ち」の気質が強まっているという。東大入学自体を目的としてきた学生は、入学後の学習意欲低下が指摘されている。将来のリーダー候補がこれでは困る。

 新たな推薦入試は、数学や歴史、文学など特定の分野に強い人が対象で、高校の校長が推薦する。5教科でまんべんなく高得点が必要な今の入試の枠からはみ出してしまう「異才」や「奇才」が、大学に新風を吹き込むことを期待する。

 また、私立の中高一貫進学校が幅を利かせる東大入試は、地方の公立高校の生徒にとってハードルが高く、保護者の経済的負担も大きい。奨学金の拡充なども併せ、地方出身者に門戸を広げる制度にしてもらいたい。それは大学が求めている「多様性」への有効な一手でもある。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com