就活解禁繰り下げ、首都圏で歓迎と不安『日本経済新聞』2013年4月19日付

『日本経済新聞』2013年4月19日付

就活解禁繰り下げ、首都圏で歓迎と不安

 安倍晋三首相は19日、大学生の就職活動の解禁時期を3カ月繰り下げるよう経済界に要請した。学業に専念させることや、海外に留学した学生の就活機会を確保するのが狙い。首都圏の中堅・中小企業や大学には歓迎の声が広がる一方、懸念する意見も出た。首相は育児休業の延長も経済界に要請し、雇用面から成長戦略の「アベノミクス」を推進する。

 東京都江戸川区。19日午前、ダイレクトメール発送代行の興伸の小野伸太郎社長は来年4月入社の採用面接をしていた。例年、採用活動から感じるのは「学生から特定の企業や業種で働きたいといった強い意欲が伝わってこない」ことだ。

 その原因の一つとして現在の就活期間が長い点を指摘する。「短期決戦になれば学生はもっと真剣に入社したい企業を選ぶようになる。中小企業に目を向けてくれる機会にもなる」と歓迎する。

 都内や埼玉などでスーパー76店を運営するコモディイイダ(東京・北)は大卒で50人程度を毎年採用している。採用時期の変更で「内定者の辞退が減る」(総務部)とみる。大手とのバッティングが増えるなか、応募してくる学生の思い入れは強いからだ。辞退者が減れば採用コストが抑えられる利点がある。

 金属部品加工を手がける日本メカニック(東京・板橋)は経済状況を踏まえ、ここ数年は新卒者の採用をやめていたが、近く再開する計画だ。「中小企業も意欲のある学生を早く採用したいが、(大企業などに流れ)今でも難しい。就活期間が短くなればさらに不利になる」と関清一社長は不安そうに話す。

 学生を送り出す立場の大学側も賛否両論だ。成蹊大学(東京都武蔵野市)は「大学3年生までは勉強に専念できる。就職活動の繰り下げは歓迎する」。一方、駒沢大学(東京・世田谷)の担当者は「今後はセミナー日程が窮屈になるので、日程の組み方を変えないといけない」と懸念する。

 国の調べによると、2013年2月時点の関東地区の大卒内定率は83.0%。08年秋のリーマン・ショック後から悪化傾向にある。東京都などは企業の合同面接会を開き、就職支援に力を入れる。今回の就活時期の繰り下げの影響も「企業や大学にヒアリングし、何らかの対応が必要であれば打ち出していく」(産業労働局)としている。

 就職情報サービスのディスコの桑原博之キャリアリサーチグループ長は「企業は学生と早めに接点を持とうとインターンシップなどへの需要が高まるため、我々も企業の合同説明会などとは違ったサービスも検討する必要がある」と語る。

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