『日本経済新聞』2013年4月18日付
就活解禁、大学3年の3月に ルール守られるか(Q&A)
政府は19日に経済界に対して、就職活動の解禁時期を今の「大学3年生の12月」から遅らせ「大学3年生の3月」へと3カ月繰り下げるよう要請する。対象は現在2年生の2016年春卒業の学生からになる予定だ。就活解禁の繰り下げの背景や課題をまとめた。
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就職活動ルールの変遷
1972~81年 労働省が加わり「就職協定」
当初7月選考開始だったが後に11月に修正
82~96年 経済界と大学の「就職協定」
おおむね会社訪問開始を8月、内定は10月に
96年 協定破りが横行し協定を廃止に
96年末 倫理憲章の開始
内定開始を10月に
2011年 就活解禁を3年生の12月、選考開始を4年生の4月と明記。13年卒から適用
13年4月 首相が経済界に解禁時期を3年生の3月、選考を4年生の8月にするよう要請。16年卒から適用
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Q 具体的にどうルールが変わるのか?
A まずは就職活動の解禁にあたる会社説明会などの開始時期を「大学3年生の3月」にする。これに伴い、今は「4年生の4月」となっている筆記試験や面接など選考活動の開始時期も「8月」に繰り下げる。安倍晋三首相が19日に、経団連など経済界の首脳に直接申し入れる方針だ。
Q なぜスケジュールを繰り下げるのか。
A 大学側は「3年生のうちから就活が本格化すると、学生が学業に専念できない」と主張してきた。こうした要望が実現した格好だが、政府は大学側にも学生の能力向上策や大学改革を求めるようだ。
Q 企業にはどう周知徹底するのか。
A 経団連は加盟企業の自主ルールである「倫理憲章」で日程を定めている。経団連の米倉弘昌会長は政府要請を容認する考えを表明しており、要請を受けて憲章の見直しを始める。
Q すべての企業がルールを守るのか。
A まさにそこが課題の一つだ。確かに大企業はおおむね政府方針に従う姿勢をみせている。ただ経団連の倫理憲章の賛同企業は約830社で、憲章に加わっていない外資系企業などの青田買いは防げない。賛同企業が抜け駆けをした場合も罰則はない。
外資系企業などには、今でも解禁時期よりも前に採用活動をしている例がある。倫理憲章の前身の就職協定の時代には、主要な加盟企業の間で「協定破り」が横行した経緯もある。
Q そうした傾向が強まるのでは。
A 今回の解禁繰り下げが憲章に加わっていない企業に有利に働くとは限らない。米ストレージ(外部記憶装置)大手の日本法人、EMCジャパン(東京・渋谷、山野修社長)では「日本企業よりも先に内定を出した学生に後で辞退されるケースが増えるかもしれない」と懸念している。
Q 学生には不利益はないだろうか。
A 学生の間では「3年生まで落ち着いて勉強できる」「安心して海外留学できる」との声が広がっている。一方、公務員試験と一般企業を併願する学生は就活のピーク時期が重なるため、戸惑いがあるようだ。
大手企業の後に採用活動が本格化する中小企業には、就活の短期化により「優秀な学生を取るチャンスが減る」との声もある。経済界では、そもそも新卒一括採用を軸とする今の採用システムを見直すべきだとの声も上がっている。