就活と学業の両立へ前進 解禁「大学3年の3月」に『日本経済新聞』2013年4月20日付

『日本経済新聞』2013年4月20日付

就活と学業の両立へ前進 解禁「大学3年の3月」に

 大学生の就職活動の解禁時期が、2016年卒から大学4年生になる直前の「3年生の3月」になる。安倍晋三首相が19日、経団連などの首脳に要請し、経済界側も受け入れを表明した。新日程により「学業と就活の両立」に向けた環境整備が前進する。ただ大手企業の後に採用が本格化する中小の日程が窮屈になるなど、採用期間の短縮による内定率の低下を防ぐ対策が課題になる。

 首相は19日、経団連、経済同友会、日本商工会議所の首脳と会談し、就活解禁時期の繰り下げを正式に要請。同日午後に都内で記者会見し「前向きに協力するとの回答をいただいた」と述べた。

 新日程では、会社説明会などを始める就活の開始時期が現状の「3年生の12月」から4年生になる直前の「3年生の3月」になる。筆記試験や面接など、選考活動の開始も現在の「4年生の4月」から8月に遅らせる。内定を出す時期は10月と現状と変わらないため、企業の選考は短期化する見通しだ。

 今後、経団連が「倫理憲章」で新たな日程を定め、賛同する加盟企業がサインする運びだ。新スケジュールが企業に広く行き渡れば、大学関係者らが求めてきた「大学3年生までは学業に打ち込む環境」が整い、就活との両立が可能になる。

 新日程は安倍首相が成長戦略の一環で重視する「国際人材の育成」にもプラスに作用する。日本企業を舞台に海外での活躍を目指す学生が、就活での出遅れを気にせずに、留学しやすくなる。

 ただ、新たな日程はあくまでも経済界による自主ルール。経団連の現在の「憲章」にサインする企業は830社にすぎない。経団連の米倉弘昌会長も「みなさんが守れる制度を作らないといけない。政府からも指導してもらいたい」とする。サインしない企業は拘束されないため、外資系企業の「青田買い」などで、ルールが形骸化する事態を懸念する声もある。

 中小企業を中心に就活の短期化に対する不安の声も出ている。計測機器メーカーのマウンテック(東京・新宿)の横山雄高社長は「(採用活動は大手の後になるため)今以上に時期がずれこむと採用がますます厳しくなる」と見る。「就活日程を後ろ倒しにした場合、新卒の採用総数が最大で6.9%低下する」(リクルートワークス研究所)との試算もある。

 内定率の低下を防止する具体策としては、インターンシップ(就業体験)制度を拡充して学生が企業を研究できる機会を増やすことなどが考えられる。地場中小企業の採用担当者が地元の大学に出向いて説明会などを開く「オンキャンパス・リクルーティング」も中小と学生のマッチング策として期待できる。

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