奨学金『四国新聞』2013年4月16日付

『四国新聞』2013年4月16日付

奨学金

 春の大学のキャンパスでは新入生が学生生活のスタートを切ったが、経済的には厳しい現実が待ち受けている。

 東京地区私立大学教職員組合連合の調査では、2012年春に入学した学生への仕送りの平均月額は、過去最低を更新し8万9500円。家賃を引いた1日当たりの生活費は千円を切った。

 キャンパスライフを楽しむどころか、授業のほかにはアルバイトに追われる学生も少なくない。

 家計に占める学費や仕送りの負担が重くなるのを反映、奨学金受給者が右肩上がりだ。奨学金事業の中心である日本学生支援機構から受給する短大・大学生は37・3%(11年度)に上る。機構の奨学金は、貸与制で無利子と有利子があり、有利子は最高月12万円が貸与される。だが卒業後の返還額は、貸与月額によって数百万円にもなる。いま返還の延滞が大きな問題になっている。

 機構の調査では、延滞理由の一番は「本人の低所得」。年功序列、終身雇用制度で安定した給与生活が可能だった時代とは違い、大学を出ても非正規労働に就いたり、リストラされたり、収入が不安定な生活を余儀なくされるケースは珍しくない。

 国際人権規約は高等教育への無償教育の漸進的な導入を規定。政府は昨年、ようやくこの規定の適用を受け入れた。家計の負担軽減のためにも、早急に無償化の道筋を示す必要がある。

 同時に、返還義務のない給付型奨学金の整備など、先進国の中で大きく後れを取っている奨学金問題に本腰を入れるべきだ。(K)

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