【大学入試の結果】希望かなえる指導を『福島民報』論説2013年4月4日付

『福島民報』論説2013年4月4日付

【大学入試の結果】希望かなえる指導を

 県内の今春の大学入試結果がまとまった。福島大、福島医大、会津大の地元国公立三大学はいずれも前年と比べて本県勢の合格者が減った。東京電力福島第一原発事故による放射線問題で本県の大学を敬遠した他県勢の志願が今春は戻ったためとみられる。本県の高校生は依然として厳しい教育環境にある。受験生の希望がかなえられるよう高校の現場で支えてほしい。

 福島大は、一般入試の県内合格者が4学類合わせて昨春比で93人減った。比率も48・7%から36・7%に低下した。代わって山形が36人増の96人、岩手が20人増の40人と、近隣県の合格者が大幅に増えた。

 県外合格者の増加について大学側は「構内での放射線量の状況などを理解してもらえたためではないか」と分析している。事故から2年経過して、冷静に判断した他県の受験生が多かったといえる。

 福島医大医学部は定員が5人増えて130人になったが、本県勢は推薦、前期、後期含めて52人にとどまった。昨春より9人少なく、比率も48・8%から40・0%に下がった。合格者52人のうち、本県勢に有利な推薦が実に35人を占めている。二次試験を課す前期、後期では他県勢にかなり押されたことが分かる。

 会津大も、一般入試で県内出身者の比率が36・0%で前年の37・1%から下がった。昨春は原発事故前の6割程度だった県外高校の受験者が、今春は8割程度まで回復した分、本県勢合格者の比率が低下したといえる。

 超難関の東大は減少、京都大は増加したが、大きな変化はなかった。東北大は前期、後期合わせた合格者が104人にとどまり、過去十年間で最低だった。都道府県別では、宮城、東京、栃木、岩手に次いで山形、埼玉と並んで5番目だった。六つの大学合格者数では、本県勢が躍進したとはいえない結果だ。

 今年1月にいわき市を訪れた下村博文文科相は、大学進学で被災地枠を設けるよう求められたのに対して「各大学に協力をお願いしたい」などと述べた。県立高校サテライト校の要望への説明で、具体化するならば朗報となる。ただ、来春の入試で制度化されるかどうかは不透明だ。

 厳しい教育環境にある本県の児童生徒の学力を心配する声がある。復興を進める本県では、さまざまな分野で活躍する人材が必要となる。志願する大学に一人でも多く合格者を送り出せるよう、教育現場での適切な指導と努力を求めたい。(佐藤 晴雄)

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