秋田公立美大開学 独自色ある教育前面に『秋田魁新報』社説2013年4月3日付

『秋田魁新報』社説2013年4月3日付

秋田公立美大開学 独自色ある教育前面に

 秋田公立美術大が開学した。地元の秋田市新屋では、住民たちが歩道橋に横断幕を掲げて祝った。9日に入学式が行われれば100人余りの新入生が通い始め、キャンパスも活気づくことだろう。地元のみならず、各界の期待に応える大学として発展を遂げてもらいたい。

 北海道・東北では唯一の公立美術系大学で、美術学部美術学科の105人(1日現在)が入学する見込み。教員は母体となる秋田公立美術工芸短大の27人に、新たに採用した14人を加え計41人と充実した。

 学生は入学後の2年間で美術の基礎的な知識を幅広く学び、3年時に五つある専攻から選択する。1、2年次の教養科目には「東北造形史」や「東北生活文化論」を取り入れている。こうした科目で本県を含む東北の伝統文化への理解が深められるのは他にはない特色だ。

 既存の美術系大学の多くは募集段階や入学時から専門分野に分かれ、それに特化した教育を行っている。専門性を優先するのか、幅広い教養を求めるのか。意見の分かれるところだろう。しかし、既存の美術系大学と同じような目標を目指すのでは、後発の大学として存在感を発揮するのは難しい。秋田公立美大の個性を前面に打ち出していくことを大切にしたい。

 理事長兼学長に就任した樋田豊次郎氏(美短学長)は会見で、大学が掲げる四つの理念に沿って▽芸術の伝統を掘り下げる▽伝統の最先端を追求する▽美術と芸術に関するグローバルな人材を輩出するなどの抱負を示した。秋田の伝統を強く意識していることがうかがえる。そうした伝統重視の姿勢にも、この大学ならではの学びの芽があると言える。ぐんぐん伸ばしていってほしい。

 秋田公立美大の基本構想では「まちづくりに貢献し、地域社会とともに歩む大学」を理念の一つとして掲げている。法人設置者の秋田市が毎年、多額の運営費を交付するので当然と見る向きもあるだろうが、これもスクールカラーとしていくべき重要な理念といえよう。

 美短も教員や学生が地域とさまざまな形でつながりを持ってきた。教育環境が格段に充実する秋田公立美大には一層地域との結び付きを強め、発展に寄与することが求められる。

 初年度の入学予定者のうち、県内の高校出身者は約2割。それでは少ないという見方もあるかもしれない。しかし、本県は若者の県外流出に歯止めをかけられない状況にあるだけに、県外から8割の学生を呼び込む効果は決して小さくない。

 さまざまなものづくり、商品づくりに美術的センスのある人材が求められている。卒業後も秋田に残って活躍する若者を増やすことが肝要だ。大学と地域の連携が、そうした機運の盛り上がりにつながるに違いない。新大学には、若者定着という観点からも期待がかかる。

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