秋田公立美術大 芸術通じて地域貢献を『秋田魁新報』社説2013年2月20日付

『秋田魁新報』社説2013年2月20日付

秋田公立美術大 芸術通じて地域貢献を

 秋田公立美術大学が4月に開学する。秋田公立美術工芸短大からの移行により、東北唯一の公立四年制美術大学となる。東北、さらに全国から意欲的な学生が集まり、新たな大学の礎を築くことが期待される。大学側は高度な研究成果の蓄積や優れた人材の養成に努めてほしい。加えて、芸術文化の拠点として短大時代以上に地域に開かれた運営を心掛けてもらいたい。そうした多様な取り組みが地域貢献の深化につながるはずだ。

 公立美大は新しい芸術領域の創造、秋田の伝統・文化の発展、世界に発信する人材育成、地域社会への貢献の四つの基本理念を掲げる。1学部1学科で学生を一括募集し、3年次から「アーツ&ルーツ」「ビジュアルアーツ」「ものづくりデザイン」「コミュニケーションデザイン」「景観デザイン」の五つの専攻に分かれる。アーツ&ルーツ専攻を例に取ると、日本画や彫刻などを学ぶだけでなく、地域の文化資源を発掘し、それを生かして既存の芸術にはない発想、表現を現代美術に取り入れることを目指すという。

 こうしたシステムは、県外の既存の美術大学が日本画、油彩画、彫刻、工芸など、ジャンルごとの学科構成となっているのとは異なる。旧来の芸術教育の枠組みにとらわれず、地域と関わりながら新たな芸術の在り方を探究するという姿勢は評価されよう。研究の質を高めつつ、次代を担う芸術家の養成に成果を挙げてほしい。デザインやまちづくりの分野でも新しい発想で企業の商品開発やPR、地域活性化などに寄与する人材輩出を期待したい。

 初の一般選抜入試(2次試験)の志願倍率が4・4倍となったことは、受験生側の期待の高さの表れと受け止められる。一方で卒業後の進路、就職先が大学に対する評価に大きく影響することは言うまでもない。

 四年制移行の議論に当たり、短大卒業者は四大卒業者より就職率が低い傾向にあることが理由の一つに挙げられた。今春、短大から3年次に編入する学生が卒業するのは2年後。早くから学生たちの進路意識を高めてきめ細かい支援を進めるべきだろう。同時に県内外の企業に大学をPRし、養成する人材への理解を深める努力も必要だ。

 1995年に開学した短大は公開講座や「アトリエももさだ」での各種イベント、デザイン関係の受託事業などさまざまな形で地域貢献に努めてきた。卒業後も県内にとどまり、制作活動を続ける若者も少なくない。

 初年度、秋田市が負担する運営費交付金はおよそ8億円。公費支出に対する市民の理解を得るためにも、開学後は教授陣と学生が一層積極的に地域との関わりを深め、活性化に貢献していくことが重要だ。地域社会の側でも大学との協働で若い発想を生かし、企業活動の新たな展開やまちづくりに取り組む機運が高まることを望みたい。

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