先端医療、次世代の芽に システムサポート、東大研と連携 『北國新聞』2012年11月22日付

『北國新聞』2012年11月22日付

先端医療、次世代の芽に システムサポート、東大研と連携 

 次世代ビジネスとして関心が高まる先端医療分野を開拓する動きが北陸で広がってきた。金沢市のIT企業は東大先端科学技術研究センターと連携し、がん治療などに役立つ遺伝子研究を支援する。自社の技術を生かし、再生医療関連に参入するメーカーも見られる。ノーベル賞を機に人工多能性幹細胞(iPS細胞)が脚光を浴びる中、各社が医療、健康の領域で事業拡大の芽を探る。

 東大先端科学技術研究センターと連携するのは、ソフトウエア開発のシステムサポート(金沢市)。研究に必要な大量の情報を蓄積するデータベース構築を担う。

 同社によると、研究はゲノムデータ(全遺伝情報)を高速で読み取る装置「次世代シーケンサー」を活用し、膨大な情報を収集。病気になる時の遺伝子変異のパターンを調べ、将来的に適切な治療法の発見などに役立てるという。

 同社は、データ管理のためのストレージ(記憶装置)やバックアップシステムを開発する。同センターゲノムサイエンス分野の油谷浩幸教授の研究を支援し、10月から社員を研究室に派遣している。

 能登満専務は「医療は未知の領域だが、IT技術を駆使して最先端の研究に貢献したい。実績が出ればビジネス展開も狙う」と意欲を示す。同社は石川県産業創出支援機構のトライアル連携事業を活用し、経費の一部補助を受けた。

 医療市場は高齢化や健康志向に伴う拡大が予想され、参入を目指すIT企業が増えている。石川県情報システム工業会によると、先端医療をはじめ、遠隔医療や在宅介護システムなどで自社技術を応用できないか関心が高まっているという。

 製造業でも先端医療関連に打って出るメーカーが出てきた。

 再生医療分野を「最先端ビジネス」と位置付け、産学連携で装置の研究開発を行うのは澁谷工業(金沢市)。担当者は「研究レベルから産業化へのステップを歩んでいる」と話す。

 これまでに佐賀大や東京のベンチャー企業と共同で再生医療用ロボットシステムを開発。iPS細胞や患者の細胞から欠損、不全となった細胞を再生して治療する装置で、細胞の塊を剣山のような針に刺し、積み上げて培養した上で軟骨などの立体組織をつくる。

 無菌状態でロボットを作動させる澁谷工業の技術を応用した。再生医療関連では他の大学とも共同研究を進めており、無菌空間を提供したり、滅菌したりする同社装置の需要も高まるとみている。

 スギノマシン(魚津市)は独自開発の繊維「バイオマスナノファイバー」を再生医療の組織培養基材として応用できないか研究を進めている。

 ナノファイバーは植物の主成分や、カニの甲羅などに含まれるキチン、キトサンを加工した極細繊維で、金沢工大と再生医療向けに共同開発を行っている。杉野岳執行役員新規事業開発本部長は「再生医療はビジネスとしての収益性はもちろん、患者の助けになる。必要とされる分野であり力を入れていく」とした。

 新たなビジネスとして注目される先端医療だが、関係者からは「高度な技術や知識が求められ、研究機関との連携が必要なケースが多い。企業単独ではハードルが高い」と参入の難しさを指摘する声も聞かれる。

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