『毎日新聞』社説2012年10月1日付
大学入試改革 教育の質転換に生かせ
文部科学相の諮問を受けて、中央教育審議会が大学入試の改革を審議し始めた。なぜもっと早く、の感もあるが、密度の高い議論で、難題を先送りにしない、実効性のある結論を強く望みたい。
戦後の大学入試制度で大きな節目になったのは、1979年からの国公立大学共通1次試験と、これをやめて私立も活用できるようにした90年からの大学入試センター試験の導入である。
過度の受験競争や難問奇問を排して、受験生にも大学にも過度の負担がないようにという考え方がベースにあった。
今回の諮問は「大学入学者選抜の改善をはじめとする高校教育と大学教育の円滑な接続、連携強化の方策」を求めている。「中」の入試を変えることによって「前」の高校も「後」の大学も教育の質やつながりを高めようというのである。
平たく言えば、入試が大学の教育にふさわしい力を高校生に求め、そうしてつけた力が大学教育に直結するという構図である。
少子化を背景に“お手軽入試”も目立つ中、事実上学力不問で入学、高校程度の補習を受けるといった光景は珍しくない。
肝心なのは、入試(入学者選抜)をどう変えるのかということだ。
諮問理由は「グローバル化、情報化、少子高齢化など社会構造が大きく変化し、先を見通すことが難しい時代」では、主体的に考え、予想外の事態を乗り越える力、グローバル化に対応できる力が必要という。