沖縄科技大学院 開学の志を忘れずに『毎日新聞』社説2012年9月24日付

『毎日新聞』社説2012年9月24日付

沖縄科技大学院 開学の志を忘れずに

 沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村)が今月開学し、18カ国・地域から博士課程の学生34人(日本人は5人)を迎えた。大学の公用語は英語で、約260人の教員・研究者の半数は外国人だ。学部は設けず、学際的な研究に力を入れるなど、従来の日本の大学にはない試みは国内外の注目を集めている。

 米スタンフォード大教授から転身した物理学者のジョナサン・ドーファン学長は博士課程開設式で「世界最高水準の教育研究機関に成長するという揺るぎない目標に向かって進む」とあいさつしたが、日本の大学に新風を送り込むとともに、研究成果を産業化につなげることで沖縄の未来も切り開くことを期待したい。

 OISTは沖縄振興を目的に、01年に構想された。私大だが、法に基づく特別な学校法人として、国が予算のほとんどを支出している。今年度を含む8年間の交付金・補助金総額は859億円。今後も当面は年間約100億円程度が研究費や運営費として国から補助される見通しだ。

 東シナ海を望むキャンパスは美しく、電子顕微鏡やDNA配列の解析装置などの設備もハイレベルだ。OISTの理事を務める金澤一郎・元日本学術会議会長が「日本の大学院大学でOISTほど恵まれた所はない」と言うのもうなずける。物理や生命科学など五つの分野を中心に研究活動は一足早く始まっており、沖縄にも関係が深いサンゴの全ゲノム解読など世界的な成果も出ている。

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