大学生と就職 学んだ成果も評価する採用に『読売新聞』社説2012年9月3日付

『読売新聞』社説2012年9月3日付

大学生と就職 学んだ成果も評価する採用に

 「大卒」の肩書は、もはや就職の保証にならないということか。

 文部科学省の学校基本調査で、今春に大学を卒業した学生のうち、12万8000人が安定した仕事に就いていないことがわかった。

 大学院進学者(7万6000人)を含む全卒業生56万人の約2割が、非正規労働やアルバイト、進路未定者の計算になる。

 文科省が、「極めて深刻な事態であり、改善が必要だ」と懸念するのは当然だ。

 経済状況が好転せず、雇用環境は依然として厳しい。一方で、学生の間に知名度の高い企業を志向する傾向も根強く、採用を希望する中小・中堅企業とのミスマッチは解消されてはいない。

 就職先が決まらず、途中で就職活動をあきらめてしまった学生も少なくないようだ。

 各大学は、厚生労働省が設置した若者向けのハローワークなどと連携し、粘り強く就職活動の支援・助言を続けてもらいたい。

 同時に考えねばならないのは、大学が4年間の教育を通じて、学生に社会で通用する力を身につけさせることである。

 中央教育審議会は、大学改革の一環として、学生の学習時間の増加を求める答申をまとめた。

 大学生の学習時間は、授業を含めても1日平均4・6時間で、文科省が想定する時間の半分程度にとどまると指摘している。

 授業に出るだけ、という受け身の姿勢では、社会で必要とされる、様々な問題の解決方法を自ら探求する思考力や、新たな技術を生み出す創造力は培えまい。

 大学教育の現状に、学生を採用する側の産業界が不信感を抱くのも無理はない。

 答申は、大教室での一方通行的な講義ではなく、討論型の授業を増やすことや、学生の知的好奇心を刺激する分かりやすい授業計画を示すことを提言している。大学はこうした実践によって、教育の質を向上させる必要がある。

 学生の成績評価の基準を明確に示し、進級や卒業の認定も厳格に行うべきだろう。

 産業界の努力も欠かせない。

 現在、企業の多くは採用時に大学での学習成果や専門性を重視していない。採用の際、それらも適正に評価するようになれば、在学中に学生が勉学に励む動機づけになるのではないか。

 会社訪問などに時間を割かれ、学業がおろそかになりがちだ。そんな現状を改善するため、就職活動の期間短縮も必要である。

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