これが「究極の行革」!? 『東京新聞』2012年9月3日付 【私説・論説室から】

『東京新聞』2012年9月3日付 【私説・論説室から】

これが「究極の行革」!? 

 野田内閣が九月以降、二〇一二年度予算の執行を抑えるそうだ。当初予算九十兆三千億円のうち約四割の約三十八兆円は赤字国債を充てるが、それを発行するための公債発行特例法案が与野党対立で成立しなかったためだ。「ない袖は振れない」のは当然だろう。

 これは大変、と社説では「処理すべき重要法案の成立」が危うくなり、「これが『決められる政治』とは聞いて呆(あき)れる」などと批判してきたが、あることが頭をよぎった。これは究極の行政改革ではないか、と。

 収入が減れば支出を抑えるしかない。政府は当面、各省庁の庁舎運営費や出張旅費など行政経費、国立大学や独立行政法人に交付する運営費などを予算額の半分以下にする。社会保障や治安、防衛は対象外だ。

 なかなか手が付けられなかった経費も、財政の非常事態が理由なら、ばっさり削ることができる。冗費が減り、行政機構が筋肉質になるのなら大歓迎だ。既得権益を打ち破るにはショック療法は不可欠だろう。

 最初は無理だと思っていても、やってみれば何とかなることは、節電などの知恵と工夫で、原発稼働が実質ゼロでも暑い夏を乗り切れたことで実証された。

 野田佳彦首相がそこまで考えて政権運営をしているのなら、たいした策士である。これまでさんざん腐(くさ)してごめんなさい、と言いたいところだが、多分違うだろうことが何とも悲しい。

     (豊田 洋一)

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