国立大改革実行プラン、警戒感強く 「合理化優先」『日本経済新聞』2012年6月19日付

『日本経済新聞』2012年6月19日付

国立大改革実行プラン、警戒感強く 「合理化優先」

 文部科学省は19日、都内に全国86校の国立大学長らを集め、2017年度までに進める「大学改革実行プラン」を説明した。国立大の学部 再編方針などを巡り、統廃合を懸念する意見が続出。一方で、国の支援強化を評価したり、今後の大学教育のあり方を含めて腰を据えた議論を求めたりする声も 上がった。文科省は各大学の意見を踏まえ、制度づくりを進める。

 「各大学には全学部のミッション(設置目的)を自ら再定義し、強みを生かす体制を考えてほしい」「再編・統合ありきではない」。19日開かれた会議で、文科省の担当者は改革実行プランの狙いをこう説明した。

 学長らの関心が集中したテーマは、国立大の学部の再編成だ。地域や機能別の大学群をつくる構想で、世界に通用する研究大学と地域貢献を重視する大学への財政支援を強めることも併せて示したため、国主導で統廃合を進めるとの見方が広がった。

 和歌山大の山本健慈学長は「財政状況が厳しい中、合理化を優先する官僚の発想だ」と警戒感を強める。茨城大の池田幸雄学長も「文科大臣は4月の国家戦略会議では再編・統合に慎重だったが、考えが変わったのか」と不信感を口にした。

 一法人が複数大学を運営する「アンブレラ方式」についても否定的な見方が目立った。上越教育大の若井弥一学長は「大学にはそれぞれ歴史がある。大学関係者にも拒否感が強い方式だ」と指摘。九州大の有川節夫学長も「実現するとしても地方の小規模大同士では」とみる。

 プランを評価する声もある。北海道教育大の本間謙二学長は、研究や地域貢献に取り組む大学への支援強化を「各大学が存在意義を考える上での足場になる」と指摘。「ミッションの再定義では新たな機能も盛り込み、積極的に前に進んでいきたい」と意欲的だ。

 文科省は今年度中に20~30年先を展望した大学政策の基本方針「大学ビジョン」もまとめる。国立大学側に賛否両論がある中、大学の意見を いかに反映していくかが課題だ。茨城大の池田学長は「スピード感を持って改革を進める狙いは分かる。高等教育のあり方はもう少し時間をかけ、腰を据えた議 論が必要だ」と訴える。

 

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