[教授の力(下)]寄付金額、全学の8割 地域貢献へ期待背負う『秋田魁新報』2012年5月29日付

『秋田魁新報』2012年5月29日付

[教授の力(下)]寄付金額、全学の8割 地域貢献へ期待背負う

 昨年発覚した2人の医学部教授による不祥事で、クローズアップされたのが奨学寄付金だ。1人は奨学寄付金から支出される旅費を不正に請求、確認された分だけで不正受給は計約45万円に上った。

 もう1人は、医師派遣先の民間病院から現金100万円の提供を受けたケース。この教授は大学の調査に「奨学寄付金との認識だった」と説明したが、正規の事務手続きを取らずに全額を使っていた。

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 秋田魁新報社が情報公開請求で入手した秋田大医学部と付属病院への奨学寄付金の申請一覧には、数万から数百万円の金額が並ぶ。寄付者は、大手製薬会社や県内の総合病院などが目立つ。ほとんどは、講座の代表を務める教授宛ての寄付。少額の消耗品購入といった場合を除き、使途は教授が決める。

 研究に使う資金には、大学本部から配分される運営費交付金と、奨学寄付金などの外部資金がある。交付金で不足する研究関連費用は、寄付金から支出する。

 それでも足りない場合、教員が自腹を切るケースもある。医学部のある教授は「うちの講座は出張回数が多く、交付金や寄付金で旅費を賄い切れない。自分以外の教員は、自費で出張することが多い」と明かす。

 2004年度の国立大学法人移行後、国からの交付金が減少している全国の国立大にとって、外部資金の獲得は重要な課題の一つ。奨学寄付金は教育研究を進める上で欠かせない資金だ。

 10年度に秋田大に寄せられた奨学寄付金は、全体で801件、約6億4300万円。うち医学部と付属病院を合わせた分は690件、約5億4200万円で、全体の金額の約84%を占める。工学資源、教育文化両学部と比べ、医学部が件数、金額とも突出する傾向は以前から変わらない。

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 県内医療機関などからの医学部への寄付は、本県医療を支えてもらいたいという期待の表れでもある。医師派遣を受けている講座の教授に、寄付する病院もある。県内のある民間病院は「医師育成に役立ててもらいたいと考え寄付している」と説明する。

 同大理事で研究や産学連携を担当する西田眞副学長は2人の教授の不祥事について「私的な使用や、正規の手続きなしに現金提供を受けることがいけないことは、研究者の常識だ」と指摘、「不適切な使用は、寄付者の期待を裏切ることでもある」と語る。

 県内で9病院を運営するJA秋田厚生連では、医学部から常勤、非常勤合わせて多くの医師の派遣を受けているが、それでも医師は不足しているのが実情だ。厚生連として医師育成を支援するため、医学部の複数の教授に奨学寄付金を出している。

 厚生連の丸井保総務人事部長は「大学も人手不足で、簡単に医師を派遣できない実情は十分理解しており、できる応援はしたい」と話した。

奨学寄付金

 個人や一般企業が、大学の特定の教員らに対する教育研究助成を目的に提供する資金。学部の別なく主に各講座の研究器具購入費や教員の出張旅費、非常勤職員の人件費に充てている。対象研究関連にしか使えない文部科学省の科学研究費補助金などに比べ、日常業務を含め幅広く使途が認められている。

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