高就職率誇る福井大 細やか支援が力引き出す『福井新聞』2012年5月28日付

『福井新聞』2012年5月28日付

高就職率誇る福井大 細やか支援が力引き出す 

 就職率で福井大生の快進撃が続いている。卒業生1000人以上で複数学部を有する国立大にあって、2008年から昨年まで4年連続のトップに輝いた。今春卒についても昨年を上回る状況にあり、5年連続の期待も大いに高まる。

 就職活動(就活)を通じて学生は社会人としての適性などを厳しく評価されるとともに、自己アピール度も試され、高就職率は福井大生の高い評価、実力を示す数字でもある。それを遺憾なく引き出しているのが、同大のユニークで細やかな就職支援・指導だ。

 ■個別説明会で“相思相愛”■

 民間大学情報サービス会社の就職率調査によると、福井大は08年が95・3%、09年97・2%、10年94・3%、11年94・7%と高率だ。就職支援・指導に関しては、教育ジャーナリストの木村誠さんが著書「福井大学はなぜ就職に強いのか」(財界展望新社)を発刊するなど全国的に注目を集めている。同書や同大就職支援室の青山傳治室長の話を通じ、高就職率を支える取り組みとして、まず挙げられるのが個別企業説明会だろう。

 同説明会は、200、300社が一堂に会して学生が企業の話を聞く合同企業説明会とは違って、1社、2社といった少数の企業が対象。参加する学生も少数の場合が多いが、その分、参加企業に意欲のある学生が集まり、企業とのやりとりも熱のこもったものになるという。

 また、大学のOBが説明に来るケースも多く、学生にとっては合同説明会などで聞くことのできない内容にまで踏み込める。企業側も学生の資質を十分に見極めることができるため、この段階で“相思相愛”の関係が築けることにもなる。

 ■低い離職率が好循環に■

 こうした独自の個別企業説明会を可能にしているのも、低い離職率があってのこと。厚生労働省の調査では、入社3年目までの大卒離職率は全国平均で30・0%にも上っている。これ対して福井大は8・0%と低率だ。離職者が少ないため、企業が安心して福井大に人材を求めるという好循環につながっている。

 青山室長によれば、個別説明会は08年のリーマン・ショックで雇用環境の悪化が想定されるとの危機感から始めたという。参加企業は09年の43社、10年の97社、11年の132社と急増。13年春採用に向けた今年は、150~160社に達するとみている。

 携帯メールを使った、学生に対する就職情報の発信も大きな武器だ。求人情報、求人票は今では約2900社に及んでいる。とりわけ役立っているのが、追加求人情報だろう。就活のヤマ場となる3~5月以降、採用枠を満たせなかった企業が追加募集する。さらに秋の採用決定時にも追加募集が出てくる。内定を得られなかった学生にとっては、再チャレンジの好機といえる。そうした情報を素早く発信することは、就活の生命線にもなっている。

 ■グローバル化にも一手■

 エントリーシートの作成講座や面接対策講座などガイダンスも40を数え支援態勢は充実している。女子学生向けの「メイクアップ講座」など至れり尽くせりの感がある。さらに普段の授業、カリキュラムの段階で、企業との交流や製品開発、地域活動など、職業観やコミュニケーション力を高める取り組みがあり、まさに大学挙げての手厚い支援は、学生にとって心強い。

 語学センターの設置は、企業のグローバル化を見込んでの一手ともいえるだろう。県内企業でも新興国の需要の取り込みや円高対策などから、生産拠点の海外移転を進展させている。企業の求めに応じて海外で働くことが今後、採用の大きな条件にもなってくるはずだ。

 学生一人一人顔の見える就職支援・指導が、福井大生の高就職率を支えているといえる。他の大学からの視察も絶えないというが、参考にすべきは、国ではないか。今春卒の大学生の就職率が4年ぶりに改善した要因として、新卒ハローワーク効果を挙げ、さらに大学内にハローワーク窓口を設置することも検討している。少なくとも福井大には不要だろう。大学は生き残りをかけ創意工夫を凝らす。国の細やかな支援は、既卒のフリーターらにこそ向けられるべきだ。(近藤 修)

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