大学開国時代のグローバル人材 「語学+α」の条件『日本経済新聞』2012年4月22日付

『日本経済新聞』2012年4月22日付

大学開国時代のグローバル人材 「語学+α」の条件

選ばれる大学へ 欧米は比較しやすく

大学開国 番外編

 国際競争に打って出ようとしている日本の大学界にとって、教育内容を外部から客観的に評価できる仕組みづくりが急務になっている。日本のビジネススクールで米国で通用する認証を受けているのは2校のみ。先行する欧米の事情を追った。

 日本など多くの国で、政府機関が大学の認証を行う一方で、米国では民間団体がその役割を果たしている。進学先の大学が全米高等教育機関基準認定協議会(CHEA)の認証を受けているかどうかを確認する人は多い。認証がない大学の場合、奨学金や企業からの学費負担を受けられない場合があるからだ。

 CHEAには約60の認証団体があり、これらの団体の認証を元に約3000の高等教育機関を学位大学として認めている。

 CHEAの広報担当、ティム・ウィラード氏は「米国の大学認証評価(アクレディテーション)は学生や家族、政府機関や雇用主が、ある高等教育機関が質の高い教育を提供しているかを知るうえで重要な役割を担っている」と語る。

世界の大学ランキング

1 英ケンブリッジ大

2 米ハーバード大

3 米マサチューセッツ工科大

4 米エール大

5 英オックスフォード大

※2011年版USニューズ&ワールド・リポート誌まとめ

 もっとも、CHEA認証の有無が大学選びの決め手になっているとは言い難い。学生らが実際に参考にするのは「USニューズ&ワールド・リポート」誌の大学ランキングだ。同誌でのランキングは優秀な学生集めの成否に関わってくるため、大学側も研究レベルの高さなどランキングの評価対象の項目に集中投資するなど努力を惜しまない。

 欧州では各国でバラバラだった大学の教育課程を共通化する「ボローニャ・プロセス」が1999年に始まった。当初29だった参加国数は47に増え、欧州域外にも広がった。大学間での単位認定や学位制度の「学士・修士・博士」の3段階での統一が柱。2010年には参加国が「欧州高等教育圏」の発足を宣言した。

 ボローニャ・プロセスの事務局(ルーマニア)は「圏内の大学を比較可能にし、教育に互換性を持たせ、一貫した制度下に置くのがプロセスの狙い」と説明する。4月下旬には参加国がブカレストで閣僚会議を開き、教育圏の強化について討議する予定だ。

 プロセスの一環として、大学教育の「質」に関するガイドラインが完成した。ガイドラインに基づき、欧州大学協会(ブリュッセル)はこれまで実際に45カ国の約300の大学の質を評価した。

 協会のミラー広報部次長は「絶対的な評価を出すのではなく、教育の質の向上を助けるのが目的」と説明。教育圏の発足や教育の質の向上により、欧州の大学で学ぶ外国籍の学生は徐々に増加してきたという。

(ニューヨーク=清水石珠実、ジュネーブ=藤田剛)

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