医学部新設へ知事始動『朝日新聞』神奈川版 2012年04月18日付

『朝日新聞』神奈川版 2012年04月18日付

医学部新設へ知事始動

 黒岩祐治知事は17日、大学医学部新設の検討を始めると表明した。実現すれば、全国で1981年以来の新設になる。詳細は不透明な部分も多く、県医師会との調整も課題だ。

 県の「医療のグランドデザイン案」に盛り込んだ。キャンパスを国から指定を受けた横浜、川崎市臨海部の「ライフイノベーション国際戦略総合特区」(下記参照)の中につくる予定。「国際的な医療人材の育成」の拠点として現存する医学部と差別化をはかる。

 黒岩知事は「医療・科学分野での経済のエンジンを回す、という特区の趣旨にも沿っている」と話した。

 県医療課などによると、米国の大学医学部の分校を誘致する案も上がっている。外国人医師が英語で講義をしたり、留学生を多く受け入れたりすることを検討。付属病院では、外国人の医師による診療や、外国の患者の受け入れも考えているという。

 もともとは医師不足の打開策として検討された。人口あたりの医師数は全国39位、看護師数は全国で最も少ない。

 医学部の新設に対して、県医師会は「新設には時間も費用もかかる。地域差、診療科ごとの偏在を解消する方が先決だ」(幹部)と反対してき た。黒岩知事が昨年末、国に医学部新設の要望をすると反発。このグランドデザインの内容を議論してきた県のプロジェクトチームから一時、脱退した。

 医師会メンバーが復帰後、チームが3月にまとめた最終報告書では、医学部の新設を提示しつつ「教員の確保によって、地域の医師不足を助長するおそれがある」などの課題も併記していた。

 知事の発表に対し、県医師会は「現段階では、見解は言えない」としている。

 県は、このデザインについての県民の意見を18日から5月17日まで、県のホームページなどで募集する。

 「ライフイノベーション国際戦略総合特区」 医療分野の国際競争力を高めるため横浜市、川崎市の臨海部が昨年末、指定された。新たな抗が ん剤の開発、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用した再生医療などの6事業について、法人税の軽減や財政支援などの優遇が認められている。

(佐藤陽、山口博敬)

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