リケジョを増やせ!(1)東大が理系女子獲得作戦『読売新聞』2012年3月14日付

『読売新聞』2012年3月14日付

リケジョを増やせ!

(1)東大が理系女子獲得作戦

 「パーン」。耳をふさぐ女子中高生たちの目の前で、大きな音を立てながら青白い光がさく裂する。昨年11月5日、東京大学工学部の高電圧実験室で行われた落雷実験。雷の衝撃から人を守るにはどうしたらいいか、人工的に作った雷を使って学んだ。

 東大は昨年10、11月の週末、理系学部や研究所が女子中高生と保護者に向けたイベントを開催し、理系の魅力をアピールした。落雷実験は、「工学部をのぞいてみよう」のイベントの一つだ。

 参加したのは、女子中高生30人と保護者13人。実験や研究室を見学し、教員、女性院生と交流した後、「生活の役に立つ学問であることが分かった。娘にぜひ進んでほしい」「女の子だけで参加しやすかった」などと話した。

 同大生産技術研究所では、昨年6月、子どもたちに科学技術への興味を持ってもらおうと、産学連携で出張授業などを行う「次世代育成オフィス」を開設。その1回目の出張授業を12月に埼玉県立浦和第一女子高校(さいたま市浦和区)で行い、車両研究の第一人者が講義した。

 オフィス室長の大島まり教授は「高校に工学という教科がないので触れる機会がないが、社会とどんなつながりがあるのかを示したい。特に女子はライフサイエンスに興味を示すが、工学となると少ないので重要な分野だと知ってほしい」と話す。

 東大は2020年までに女子学生比率30%を目指している。世界の主要大学では50%近いのに対し、同大では学部で19%。同大男女共同参画室によると、昨年度から現役女子学生による母校訪問を、今年度は新入学女子歓迎会を始めた。

 東京理科大学(東京都新宿区)は、08年から、「科学のマドンナプロジェクト」と銘打ち、東京、千葉、北海道の各キャンパスで実験体験やサマースクールを開催。関西地区の大学は「女子中高生のための関西科学塾」という科学イベントを持ち回りで開く。独立行政法人・科学技術振興機構は「女子中高生の理系進路選択支援事業」としてこれらに助成している。

 理系女子を獲得しようという機運が高まっている。(金来ひろみ)

 国際競争力の強化や男女共同参画社会への動きを背景に、“リケジョ”(理系女子学生や女性研究者)がますます注目されている。大学や企業の思惑、理系女子を取り巻く環境などを取材した。

 メモ 第4期科学技術基本計画で、自然科学系全体で25%という女性研究者の採用目標を早期に達成し、更に30%まで高めることを目指している。第3次男女共同参画基本計画でも、女子生徒の理工系分野への進路選択支援を施策の基本方針とする。多様な視点での研究活動を活性化するためには、女性研究者の活躍が不可欠とされている。

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