リケジョを増やせ!(2)女性院生「後輩」を応援『読売新聞』2012年3月15日付

『読売新聞』2012年3月15日付

リケジョを増やせ!

(2)女性院生「後輩」を応援

 「工学部というと、機械やロボットをいじっている『ガテン系』なイメージがあるかと思いますが、今日はそれだけではないことを教えたいと思います」。昨年10月25日、宮城県立仙台二華高校の総合学習の時間。理系進学を目指すことに決めたばかりの1年生を前に、3人の女性大学院生が説明を始めた。

 3人は、東北大学(仙台市)の自然科学系10部局の女性院生でつくる「サイエンス・エンジェル(SA)」のメンバーだ。この日は出張セミナーの講師として呼ばれ、自分の生い立ちを記した「夢年表」を示しながら、理系に進んだいきさつや自分の研究について説明した。「自分の研究が世の中の役に立っているという実感が持てる」と学生生活の充実ぶりを話すと、高校生は真剣なまなざしで聞き入っていた。

 1913年、帝国大学で初めて女子学生を受け入れ、3人を理学部に入学させた歴史を持つ同大。女性研究者が少ないのは、身近にお手本がおらず将来像を描きにくいのが一因だとして、2006年からSA活動を始めた。現在、41人が登録し、高校への出張セミナーのほか、オープンキャンパスの女子高生相談会や市民向けの科学イベントで、科学の魅力を発信している。

 「科学の面白さを伝えたい」「自分も進路選択で悩んだので後押ししたい」。そんな動機で参加した女性院生にとって、SA活動は自身のプレゼンテーション能力向上や他部局の学生との交流、研究者としての使命感を深める場にもなっているという。

 昨年度から出張セミナーを取り入れた同高は、今年度初めて、理系を志望する生徒の数が文系を上回った。共学になって2年目の同高は、男子生徒が1、2年ともまだ十数人ずつしかいないが、今後、理系志向が高くなると見越してこれまで以上に理系に力を注ぐ必要性を感じたという。

 菅原賢一教諭(47)は「出張セミナーは生徒が今後、自主的に大学のイベントなどに行くための動機づけ。早いうちにどんな研究があるのか知ってほしい」と期待を込める。

 同大女性研究者育成支援推進室副室長の田中真美・医工学研究科教授(41)は「異分野融合で学問は横断的になっており、一つの学部だけでやっている研究はない。だが、そのことを知らない高校の先生方は少なくない」と話す。

 高校生の進路選択に、リケジョの力が活用されている。(金来ひろみ)

 メモ 文部科学省の2011年度学校基本調査によると、大学学部生に占める女性の割合は42.6%。人文科学系学部は女性が66.2%。理系学部では、医学や薬学などを含む保健58.1%、農学41.8%と多い一方で、理学部は25.9%、工学部11.2%と少なく、分野によって偏りがある。

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