『読売新聞』社説2012年3月2日付
公務員給与削減 議員も地方も足並みそろえよ
国家公務員給与削減特例法が、ようやく成立した。民主、自民、公明3党の合意に基づく議員立法が実を結んだ。
衆参ねじれ国会の下、与野党は相互に妥協して法案の成立を図るしかない。民自公3党は、社会保障と税の一体改革にも協議を広げて、政治を前に進めるべきである。
国家公務員給与は、人事院勧告に基づく平均0・23%の引き下げを4月にさかのぼって実施し、2012年度から2年間は人勧分を含めて平均7・8%削減される。首相や閣僚らの給与も大幅な削減となる。妥当な判断だ。
政府は、これで捻出する約5800億円を震災復興に充てる。
地方公務員の給与削減については、地方自治体の自主的判断に委ねると、法の付則に明記した。
地方からは「今回の給与削減は国の事情によるものであり、従わない」と反発も出ている。
だが、政府の財政事情だけでなく、公務にある者が震災復興に協力するという趣旨でもある。地方公務員も、国家公務員に準じた措置をとるのが筋だろう。
民主党が給与削減とセットで成立を求めていた国家公務員制度改革関連法案については、「審議入りと合意形成に向けての環境整備を図る」ことになった。給与削減とは事実上、切り離された。
制度改革関連法案の最大の眼目は、一般の国家公務員に労働基本権の一部である協約締結権を与え、労使交渉で賃金などを決定する仕組みを作ることにある。
人事院を廃止し、公務員庁を新設するなど、戦後の公務員制度を根底から見直す内容だ。新制度が十分機能するのか、逆に行政の混乱を招きはしないか、与野党は腰を据えて検討すべきだ。拙速な改革は避けねばならない。
国家公務員の給与削減を実現するまで、民自公が協議を開始してからほぼ3か月もかかった。
地方公務員への波及阻止と協約締結権の獲得を目指す支持団体の連合に対し、民主党が配慮し過ぎた。それが与野党合意を困難にした。こんなことで民主党は行革に取り組めるのか。政策決定過程に疑問符を付けざるを得ない。
公明党などが提起している国会議員の歳費削減も、与野党協議のテーブルに載せるべきだ。
震災復興を進め、社会保障制度を確かなものにするには、国民の負担増は避けられない。
その環境を整備するためにも、国会議員の歳費削減を早期に実現しなければなるまい。