東北の大学秋入学 「検討」は1割 期待と不安相半ば『河北新報』2012年02月22日付

『河北新報』2012年02月22日付

東北の大学秋入学 「検討」は1割 期待と不安相半ば 

 欧米の大学進学に時期を合わせようと、東大の懇談会が打ち出した秋入学への完全移行。河北新報社が行ったアンケートには、国際的な研究や国際交流を期待する一方、経済界を含む社会全体の仕組みが変わらない中での導入には慎重な意見も寄せられた。

 東北大の井上明久総長は「個人的には今後の日本の大学教育のあり方を考える上で、重要な選択肢の一つ」との認識を示す。既に帰国生徒や留学生向けに、工学部や理学部などで秋入学を導入していて「優秀な留学生の受け入れが促進され、国際化に好影響をもたらしている」と強調する。

 東京大が旧帝大と有力私大11大学に呼び掛け、4月に設置する協議会に参加を表明した。学内に専門の委員会を設置し、「学生のメリット、デメリットを第一に検討する」と前向きだ。

 秋入学にすると高校卒業から入学まで、半年のずれが生じる。この「ギャップターム」について、東北学院大の斎藤誠副学長は「大学が実質5年化し、社会、家計、大学の負担が増える」と懸念する。

 「公立学校の学事暦や採用試験の時期が変わらなければ、秋入学は導入できない」と否定的見解を示すのは宮城教育大の見上一幸副学長。就職や資格試験との整合性も大きな課題になる。

 私大では、学生確保のため推薦入試合格者の割合が増えている。八戸大は「試験から入学まで長くて10カ月のブランクができる。(ボランティア活動などの)社会体験するにも地元には受け皿がない」という。

 「大学の国際化を掲げるなら、秋入学の時期設定では不十分」との見方もある。東北福祉大の渡辺信英学長補佐は「教育内容に魅力がなければ、留学生は来ない。カリキュラム改革など一層の努力が必要だ」と話す。

 国際教養大(秋田市)は、2004年の開学以来、春入学と並行し、秋入学を導入している。入学式と卒業式も年2回実施。昨年は4月入学は152人、9月入学は31人だった。

 国際教養大は「さまざまなバックグラウンドを持つユニークな学生が入学するようになり、キャンパスの多様性が拡大した。研究、教育の分野で日本の先端をいく東大が秋入学を検討し始めたインパクトは大きい」と指摘している。

 

 

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