センター試験 混乱の原因検証し再発防止を『読売新聞』社説2012年1月18日付

『読売新聞』社説2012年1月18日付

センター試験 混乱の原因検証し再発防止を

 受験生の将来がかかる試験だ。あってはならない不祥事である。 

 大学入試センター試験の「地理歴史」「公民」で、問題冊子の配布が大幅に遅れるなどのトラブルが続出した。影響を受けた受験生は、判明しているだけで全国58会場の約4500人に及ぶ。 

 試験会場側のミスとしては過去最大の規模だ。文部科学省と大学入試センターは、経緯と原因を徹底的に調査し、再発防止を図らなければならない。 

 混乱を招いた要因は、試験方法を変更したことだ。 

 昨年まで社会科系の試験は、地理歴史と公民の時間を分け、2科目を受験する場合には両方からそれぞれ1科目を選び、各60分で解答していた。 

 それが今年から時間を分けず、地理歴史と公民の全10科目から二つを選び、計120分で解答するよう変更された。 

 問題冊子は、地理歴史と公民の計2冊を試験開始の時点で配ることになっていた。ところが、会場の監督者が変更点を十分理解しておらず、どちらか一方の問題冊子しか配らずに試験を始めてしまうケースが相次いだ。 

 解答する順番は受験生が決める。希望通りの科目から先に解くことができなかった受験生は、さぞ動揺したに違いない。

 会場では、配布の遅れをカバーするため、試験時間を延長するなどの救済措置がとられた。しかし、不利益を被った受験生もいただろう。公平性に疑問符を付けざるを得ない結果となった。 

 試験方法の変更は、科目の選択肢を広げるのが目的だったが、そのために監督者側が前回より複雑な作業を求められたのは間違いない。だとすれば、一層入念な準備が必要だったはずである。 

 大学入試センターは、昨年6月に試験方法の詳細を発表し、変更点を記したマニュアルを、試験会場を管理・運営する大学側に配布していた。 

 だが、結果的に説明と注意喚起が不十分だった。次回以降、周知を徹底すべきだ。 

 大学入試センターは、政府が進める独立行政法人改革の中で、他の大学関連機関との統合なども検討されている。こんな不手際が続くようなら、その存在意義が問われても当然だ。 

 被災地の宮城県の会場では、大学側のミスで英語のリスニング用機器が届かず、試験開始が2時間遅れた。これも緊張感の欠如の表れだ。猛省してもらいたい。

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