大学の学費補填、奨学金も予習が肝心『日本経済新聞』2011年12月28日付

『日本経済新聞』2011年12月28日付

大学の学費補填、奨学金も予習が肝心

有利子なら条件緩く

 年が明ければ大学受験シーズンが本番を迎える。推薦入試などで、すでに入学を決めている高校生も多いだろう。合格後に気になるのがお金の工面。大学選びでは授業料や奨学金も大きな要素になる。合格後に慌てないためにも、必要な費用を賄う手段を予習しておきたい。

 「最近の保護者からの質問はほとんどがお金の話」。旺文社(東京・新宿)の受験生向け雑誌「蛍雪時代」の宮沢静也・総編集長はこう話す。受験生や保護者を対象にした進学相談会で講演すると、決まって学費の安い大学や奨学金が充実した大学について聞かれるという。2008年のリーマン・ショック以降、特にその傾向は強まっている。

■減少続く生活費

 日本学生支援機構が隔年で実施する調査によると、08年度の大学生(昼間部)の学費を含めた生活費の総額は年間186万円で、06年度に比べ2%減った(グラフA)。00年度をピークに減少が続き、金額は8年間で1割減った。一方で奨学金を受給する割合は上昇。00年度の29%から08年度は43%に伸びた。

 大学生を経済的に支援する制度は奨学金や教育ローン、学費の減免制度など様々ある(表B)。実施する主体も大学や自治体、民間の団体など幅広い。おおむね返済の負担が軽いものほど家庭の収入や成績などの条件が厳しく、競争率が高い。数多くの制度から自分に合うものを探し、条件のよい順に検討したい。

 経済的な支援で最も魅力的といえるのが返済の必要がない給付型の奨学金だ。大学が独自に制度を設けているほか、様々な民間の団体も手がける。最近は「成績優秀者を対象にした奨学金を新設する私大が増えている」(旺文社の宮沢氏)という。

 例えば早稲田大学は首都圏以外の受験生を対象に、成績優秀で家庭の収入が多くない場合、年40万円を約500人に給付する奨学金制度を09年度入試から始めた。秋に申し込み、合格すれば奨学金がもらえるかどうかが出願前に分かる。慶応大学なども同様の奨学金制度を始めた。給付型は一般に、人数が限られる。

 多くの人が利用しやすく身近に感じられるのが貸与型の奨学金だろう。特に日本学生支援機構の奨学金は受け取っている大学生(短大生含む)が10年度で97万人に上り、全大学生の36%を占める。

 学生支援機構の奨学金は借りた分だけ返済する「無利子型」と、利子を付けて返済する「有利子型」がある。それぞれ家庭の収入や成績などの条件があり、選考を経て対象者を決める。

 無利子の方が条件が厳しく競争率は高い。ただ有利子に関しては「この数年は条件を満たした学生全員が貸与を受けている」(広報担当者)。返済時に上乗せされる金利は国債などに連動する仕組みで、上限は年3%。直近は固定金利型で年1%台だ。

 家族の収入が急減した場合などは、大学から授業料の減免を受けられる場合がある。東日本大震災の被災者向けの支援制度を持つ大学も多い。金融機関などの教育ローンは奨学金に比べ金利が高めだが、まとまった金額を一度に借りられる。国の教育ローンは母子家庭などに手厚い。

■借りすぎに注意

 奨学金や教育ローンを使う際は将来の返済にも気を配りたい。ファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子氏は「少し足りないくらいを借りて子どもがアルバイトで補うのがよいだろう」と話す。お金は余分にあれば使ってしまうためだ。月5万円借りると4年間の借入総額は240万円。学生支援機構の有利子型で、金利が上限の年3%なら15年間で返済する場合の総額は300万円を超える。

 以前に比べて収入が増えにくい分、奨学金などの返済の負担感は強まっている。「安易に奨学金を使い親子の関係が悪化することもある」と畠中氏は話す。大切なのは納得して目指す進路に進むこと。親子で家計の状況を共有し、無理のない計画を立てたい。

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