『日本経済新聞』2011年12月2日付
革新的創薬へ「様々な分野融合を」「大学の知財に磨き」
「日本を元気にする産業技術会議」 つくば市でパネル
【つくば】産業技術総合研究所が主催する「日本を元気にする産業技術会議」(後援・日本経済新聞社)は10月14日、ライフサイエンス分野におけるオープンイノベーションへの挑戦をテーマにパネルディスカッションを産総研(茨城県つくば市)で開催。オープンイノベーションを日本で促す方策などを議論した。
■「大学の知財に磨きをかける必要」
湯元昇・産総研理事は様々な分野を融合する取り組みが重要とし、「分野融合には幅広い知識の結集が必要」と強調。産総研はライフサイエンスだけでなく幅広く、「オープンイノベーションの拠点として活用してもらえると思う」と訴えた。
大学の創薬シーズがなかなか産業に結びつかない問題などを語った永田恭介・筑波大学学長補佐室長は「オープンイノベーションを強く念頭に置きながら改革を進めている」とし、教員所属組織の変更を披露した。
一方、塚本紳一・アステラス製薬上席執行役員は外部パートナーと提携を進める同社の取り組みを紹介した。「一番大事なのはいかにニーズとマッチした提携相手を探せるか」とし、「非競争領域では広くアカデミアの力を借りていきたい」と積極姿勢を示した。
「大学の成果はまだシーズになっていない」と指摘する秋元浩・知的財産戦略ネットワーク社長はシーズを育てるインキュベーションの重要性を訴えた。さらに「大学の知財をもっと磨き上げる必要がある」とした。
■大学は早期に事業主導に転換すべき
ベンチャー企業を通した大学シーズの商業化に触れた松田一敬・合同会社SARR代表執行社員は起業の重要性を強調するとともに、「設立3年以内に研究者主導から事業主導に転換しないとほぼ失敗する」と指摘した。
「ハコモノではなく、人のつながりを強化する必要がある」(湯元氏)など人の面も話題となり、「基礎研究者をたくさん雇うのではなくクラウド化させる」(永田氏)、「コーディネーターに企業の人間をもっと活用してもらうことも大事」(塚本氏)といった意見が出た。
また「米国ではベンチャーキャピタルの役割が大きい」(松田氏)、「日本が得意なところにリソースを本当にしぼっていかないといけない」(秋元氏)という指摘もあった。モデレーター(司会)は滝順一・日本経済新聞社論説委員が務めた。