大学の9月入学 伸び悩み!?『毎日新聞』2011年11月11日付

『毎日新聞』2011年11月11日付

大学の9月入学 伸び悩み!?

 「二〇年までに留学生比率12%以上」「アジアとの人的交流拡大」…。東大が昨年、大学の将来構想としてまとめた「行動シナリオ」にはそんな目標が並んだ。目指すはグローバル化の実現。懇談会はその一環で、九月入学を含め年内に案をまとめる予定だ。 

 これまで、大学の九月入学はたびたび議論されてきた。最近では安倍晋三内閣で設置された教育再生会議が、二〇〇七年に全国立大学での九月入学枠の設定を提言した。〇八年度からは、「大学の学年の始期及び終期は、学長が定める」と学校教育法施行規則が改正された。これにより、学年の始まりを四月一日としていた原則がなくなった。 

 しかし、文部科学省によると、入学時期を四月以外に設けているのは、〇九年度で国立大八十六校のうち十八校、私立大は五百八十九校のうち九十三校にとどまる。 

 広がらない理由を、リクルートの大学経営者向け雑誌「カレッジマネジメント」編集長小林浩さんは「年二回の入学式と卒業式、カリキュラム、就職支援…。大学にとって負荷が大きいから」と分析する。 

 一方で、〇四年度に新設された早稲田大国際教養学部のように、九月入学の定員百五十人のうち九割が留学生や帰国子女というところもある。志望者の多い中国や韓国には面接官が主要都市に出向く。「大学側の費用負担は大きいが、そうまでしても早稲田から世界に羽ばたく人材がほしい」と森田典正学部長は話す。 

 学生を採用する企業の国際化の流れは顕著だ。日本に来た留学生や海外留学の日本人を対象とするグローバル採用が増えている。さらに「最近は、楽天やパナソニックのように海外の大学の外国人を採用するところも出てきた」と、リクルートの求人情報サイト「リクナビ」編集長岡崎仁美さんは解説する。 

 優秀な学生獲得のため、日本の大学も変わらざるを得ないようだ。「東大が動けば、他の大学や企業が変わるきっかけになる」と小林さんは話す。ただし、「介護や看護の分野で活躍する人材を育てる大学などがあってもいい。すべてが国際化に向かうのではなく、個性化・差別化が進むだろう」と見る。 

◆課題は入学前と卒業後 

 九月入学が実施された場合、課題となるのが高校卒業後から大学入学の九月までと、大学卒業から翌春の入社までの空白(ギャップ)期間。 

 秋田市にある公立大学法人国際教養大学は、開学五年目の〇八年度に「ギャップイヤー入試」を取り入れた。一学年百七十五人のうち十人前後を、センター試験とギャップイヤー活動計画書に基づく面接で選抜する。 

 十月上旬、同入試を経た十三人が英語で活動報告をした。札幌市出身の加藤早貴さん(19)は、十勝地方の農場に住み込みで働いた。「この入試に挑んだおかげで貴重な体験ができた。四月入学の同級生より遅れるのは気にならない」と話す。 

 こうした試みを後押しする動きも出てきた。青年海外協力隊事務局の青晴海次長らが発起人を務める「日本版ギャップイヤー構想勉強会」は、ギャップイヤー活動の内容を保証する認証機関の設置を提言する。 

 「学生は、面接で自ら企業に説明するしかない。認証システムは、企業の望む人材をマッチングする上でも役立つ」と青次長。政府や大学には活動期間中の学費免除を求めていくという。

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