東北大総長選考/よりよい方式追求し検証を『河北新報』社説2011年11月10日付

『河北新報』社説2011年11月10日付

東北大総長選考/よりよい方式追求し検証を

 震災でキャンパスが損害を被った東北大の新たな船出である。現総長の任期満了に伴う次期総長候補に、副学長の里見進・東北大病院長が選出された。

 学内と学外委員12人でつくる「総長選考会議」が里見氏の学識経験、経営手腕を評価して決めた。任期は来年4月から6年間。東北の震災復興に真正面から向き合うことになる。

 実学に根差した先端科学、産業界との共同研究、保健医療の提供だけでなく、社会科学や学際領域においても「知の拠点」が果たす役割は大きい。地域再生を推し進める社会貢献に力を入れたかじ取りを期待したい。

 ここでは総長選任の在り方を考えてみる。国立大学法人化以降、選考会議が選ぶ方式が一般的になっている。かつては教員の投票で決めていた。

 教員数の多い工学部、医学部出身者が有利で学内の総意を反映していないとの批判があった。一方で、過半数を得るまで何度も投票を行うことから切磋琢磨(せっさたくま)され、後に「名物総長」と呼ばれる実力者が残った側面もあった。

 現在の方式にしたのは、経営能力など幅広い観点からの人材登用を重視したことによる。

 選考会議は3月、経営面を審議する経営協議会と学術担当の教育研究評議会に対し、5人以内の候補者推薦を依頼した。7月、30人以上の連名による推薦を加えて計6人が名を連ねた。

 1次選考(所信表明書など審査)で3人に絞り、最終的に里見氏に決めたというのが今回の流れである。

 現行方式を導入した6年前、一部の教授らが選考過程の透明性確保を求めて署名活動を展開し、論議が巻き起こった。

 外から見えにくく、偏った選考が行われかねないとの批判だった。この時の懸念は払拭(ふっしょく)されたのだろうか。

 選考会議の顔ぶれをみると、学外委員は経営協議会から電力会社会長や東大教授ら6人、学内委員は教育評議会から6人が選ばれている。

 経営協メンバーの任命権は総長にあり、執行部の意向が反映されやすいとされる。大学の担当部局は「学外の人を入れていることで透明性は確保されている」と否定するが、全く第三者的かというと疑問符が付く。

 学内の意向を探るため教育評議会は7月、約2200人による投票を行った。投票と今回の選考結果は同一だったが、どの程度考慮したかについて選考会議の岸輝雄議長(独立行政法人物質・材料研究機構顧問)は「議論の中で得票の話はしなかった。終わってみたら結果が一致していた」と白紙で臨んだと説明した。

 そうすると投票の持つ意味は何なのか。制度を複雑にしている一因で、総長選考が学内で人ごとのように冷ややかに見られていたことと無縁ではない。

 以前の国立大は象牙の塔とやゆされていたが、現総長は強い権限を与えられ、トップダウン型だ。国際競争を勝ち抜くという大きな使命があるだけに、よりよい形で選ばれるための制度検証と発展的議論を望みたい。

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