政府、人事院勧告実施見送りへ 7.8%削減法案を優先『朝日新聞』2011年10月21日付

『朝日新聞』2011年10月21日付

政府、人事院勧告実施見送りへ 7.8%削減法案を優先

野田政権は21日、今年度の国家公務員給与について、平均0.23%引き下げを盛り込んだ人事院勧告の実施を事実上見送り、平均7.8%下げる特例法案の成立を図る方針を固めた。法案は東日本大震災の復興財源を確保する目的で6月に国会提出しており、今国会中の成立を目指す。

 人事院勧告は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置で、実施をすべて見送るのは、財政難で給与引き上げ勧告の実施を見送った1982年以来となる。人事院は「勧告を尊重しないと憲法違反の可能性がある」(幹部)と、なお抵抗する構えだ。

 藤村修官房長官、川端達夫総務相らが21日午前、首相官邸で梶田信一郎内閣法制局長官と会談し、特例法案の正当性を確認した。法制局長官は「国の厳しい財政状況や大震災に対処する必要性から臨時の特例措置として行うもので、人事院勧告の不実施が直ちに憲法の趣旨に反するとは言えない」との見解を示した。政権はまた、大幅引き下げの特例法案が人勧引き下げ分の内容を含むとの見解もまとめた。これらの方針を28日にも閣議決定する。

 平均7.8%の引き下げが実現すれば年間約2900億円の財源が捻出できる。この財源は復興債の償還財源に組み込まれていることに加え、今年度の給与を確定するには11月末までの給与法改正が必要なため、特例法案成立を急ぐ。

 特例法案は、菅政権が「人事院や人事院勧告を廃止し、公務員に協約締結権を回復させる」などの国家公務員制度改革関連法案との同時成立をめざすことで、民主党最大の支持団体である連合と約束して提出した経緯がある。このため、連合の古賀伸明会長は野田佳彦首相らに両法案の同時成立と人事院勧告の見送りを再三求めている。

 給与引き下げには自民、公明両党とも賛同する方向だが、労働基本権の回復とセットとすることには自民党が難色を示している。このため政権・与党内では特例法案を今国会で成立させ、公務員改革関連法案を来年の通常国会に先送りする案も浮上している。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com